007:bond
ヘタリア 独伊





いつもの訓練にいつものように遅れてきたイタリアに、怒声の前にドイツから声がかかった。
「イタリア、ちょっと来い」
「なにー?」
「これ、何だ」
 そういってドイツが見せたものは、黒十字に銀で縁どられたペンダント。
「ドイツがいつもつけてるアイアンクロスだねー」
 ずい、とドイツが一歩進む。
「正解、と言いたいが厳密には違う。なぜなら今も俺はこれと同じ物をつけているからだ」
「へ?」
 またさらにドイツがずい、と一歩進む。
「さあ、これはなんだ」
「…ごごごごめんなさいわからないであります隊長」
「これは、お・ま・え・にやったペンダントだ!」
 ほとんど怒鳴り声に近い声でドイツが言い、イタリアは服の中を覗いた。
「あっ、ない」
「『あっ』じゃない!これ何処で見つかったと思う?日本の家だ!
 日本が気を利かせて届けてくれたから戻ってきたものの!」
「ヴェー」
「そもそもこれはお前が変な心配するからその約束の証に渡したものであって、このペンダントも沢山あるわけじゃなく…」
 暫しの沈黙の後、
「お前にとってあの約束はその程度のものだったんだな」
相手に伝えるためでなかったその呟きはとても小さく、憔悴しているように聞こえた。
「俺にとってあれはどうでもいいものなんかじゃないよ」
「すまん少し感情的になっただけだ。今のは忘れてくれ」
 しかしイタリアはやめない。いつになくしっかりした表情でまっすぐドイツをみつめていた。
「そのペンダントは日本の家でシエスタしたときになくしちゃったんだ。それでドイツを傷つけたのならほんとうにごめんなさい。」
「ん…」
「俺のことだからまたどこかでなくしちゃうかもしれないけど、それでもこの先ずっとドイツは俺の一番大切なひとだから」
「そうか」
口調は変わらないが、ドイツは分かる者のみに分かる微笑みを浮かべていた。

「で、ドイツはー?」
「何だ?」
「ドイツは俺のことどう思ってるの?」
「何故そこで俺に話を振る」
「だって聞きたいじゃん。ね、俺のことどう思ってるのー?」
「あ…う…お、俺も…」
「『俺も』なに?」
「俺もお前が一番大切だ」
「へへへ、ありがとー!」
「じゃなきゃ国の象徴とも言えるものを渡したりなんかしない。
 もうこれはつけてなくていいから家に仕舞って来い!身に着けてるとまた失くすだろ」
「うんわかったそうするー。じゃあねー」
 そういってイタリアは受け取ったペンダントをしっかり握り締めて駆けていった。


「しまった、今日の訓練やってない…。俺としたことが……」






「bond:きずな・束縛、契約」
イタリアがあのペンダントつけてるところ殆ど見かけないよね、ということで。
普もつけてるってか普の前身の紋章だってのは一旦無視の方向でよろしくです。