033:justice
ヘタリア ロマ西
※ちょっと暗いかも?





今かも昔かもわからないあるところに、ロマーノとスペインという二人の青年がいました。
二人はお互いが大好きで長い間一緒にいたのですが、スペインはとっても鈍感でしたしロマーノはなかなか素直になれない性格だったので、長い長い間心を通じ合わせることができませんでした。それでもふとした拍子に恋人同士になることができたのでした。
いつだって探し物は探すのをやめたときに見つかるものなのです。

恋人同士になってしばらくしたとき、ロマーノはスペインとひとつになりたいと言いました。好きな人同士はそうするものだとロマーノは知っていたのです。しかしスペインはいつだって太陽のように明るい笑顔を曇らせました。それでもスペインは小さな声で「ええよ」と言いました。
ロマーノはそれを少し不思議に思いながらも腕を伸ばしてスペインのシャツのボタンに手をかけました。みっつほどボタンを外したとき、突然にとっても強い力でロマーノは突き飛ばされました。ロマーノはスペインにそんな乱暴なことをされたことが無いのでびっくりしてしまったのですが、それよりもスペインが真っ青な顔でびっしょりと汗をかいていたことにもっとびっくりしていました。
そしてスペインはかろうじて取り繕ったような笑顔で「ごめんなロマーノ、親分今はちょっと無理みたいや。ほんまにごめんな」とだけ言って逃げるように部屋から出て行ってしまったのです。

これはただ事ではないと思ったロマーノはスペインのことをいっぱい調べました。そして気づいたのです。スペインはロマーノの前ではつらいことがあってもそれを見せずにいたことに。ずっと「親分」でいようとしていたことに。そしてそれは恋人同士になった今でも変わっていないことに。
ロマーノは「親分」ではないスペインのことを知ろうといろんな人のところに聞き込みに行きました。
「スペイン…ですか。私も彼とは結婚を解消して長いですからね。私と一緒だったころは本当に能天気でお馬鹿な人だったので、トラウマがあるのなら『太陽の沈まない国』から陥落した後のことでしょう」
「スペインのことォ?俺もあんまり知らねえんだよな。地理的にも結構離れてるしよ。――トラウマ?ああ、だったらイギリスが原因じゃねえか?海軍には専門外だけど当時はマジでえげつなかったって聞くぜ」
「あの頃のスペインねぇ…あいつが話したがらなかったことをお兄さんが教えるのも気が引けるんだけどさ……ああ言うよ言いますよ!ここで泣かれるとあの子分馬鹿がすっとんでくるでしょーが! あのな、当時のイギリスはヤンキー真っ盛りなわけ。そいつがスペインに対してやったことが『海賊にスペインを襲わせる』。あいつの力が潰れるまで何度も何度も。なんでもアリな時代の荒くれ者に『襲え』って命じたら、強奪以外のもっとひどいこともするに決まってるだろ?そういうことだよ」

そのとき、とっても弱くてとっても意気地なしのロマーノの、たったひとり愛する人のために起こす無謀すぎる挑戦が始まったのでした。






「justice:正義・道理」
つ づ か な い 。
『イギリス大好き』んときの親分のエロさは何事だ。ロマが親分のために出すイタリア男の本気というのは美味しいと思います。