044:mask
封神・飛虎聞





いつからだったろうか。 聞仲は常に仮面をつけるようになった。
昔からつけてはいなかったから、城の者も別に彼の顔に傷がある訳ではないということは知っていた。
しかし彼の地位や近付き難さから、敢えて理由を訊く者はいなかった。
だが、何事にも例外と言うものはある訳で。

「なんで変な仮面つけてるんだ?」
元来遠慮というものを知らない男・飛虎がそのまま訊いた。
訊かれた方は、周りの多少のやきもきとは逆に意外と平然としたもので、まだ馴染んでいない仮面に手を触れ、
「似合わないか?」
「いや、別にそういうんじゃねえけど、なんか冷たい感じするっていうか…」
似合わない訳ではなかった。ただ、元から月のような印象を受ける彼が、その仮面をつけることによってより冴えざえとして、とがった三日月のように見えた。
不安だったのかもしれない。友が顔の半面と一緒に心まで隠している気がして。別人になろうとしてるような気がして。

「これは、お前への信頼の証だ」
「どういうことだ?」
「この仮面は厚いだろう。だからつければかなり視界が遮られる」
言われてみれば、仮面の奥にあるはずの瞳は、その鋭い眼光を残すのみとなっている。
「見えなくなった半身をお前にあずける、その印だ」
この想い受け取ってくれるな?と、少し笑んだ彼は紛れも無く前と変わらぬ彼だった。

「ああ、もちろん」






「mask:仮面、覆い隠すもの、保護・偽りの象徴」
最後の意味だと飛虎聞的においしくないのでMy解釈。
なんか聞仲がのろけてるように見えなくも無い…。