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ペルソナ3・真荒





Side S.A.

年端もいかない頃からの幼馴染だから、あいつの格好悪いところも情けないところも馬鹿なところも嫌という程知ってるが、あいつはずっと変わらずまっすぐでひたむきで、髪の色そのままに純粋で真っ白だった。ひと一人の命を消した罪に潰されちまった俺には目が眩むくらいに。

ペルソナの能力を弱める薬を常用するようになってから、俺は俺のペルソナの正体を知った。『人間』で在ったために戦争で若くして命を落とした英雄、カストール。俺は英雄なんてガラじゃないが、こうやって命を削り寿命を縮める薬を飲んでいるんだから世の中はよくできたもんだ。
カストールの弟・ポリデュークスはその死を嘆き、『神』であるが故の不死の命を捨てて兄と共に星座のひとつになったという。俺にはそいつの行動が、そのペルソナの持ち主に思えて仕方なかった。あいつならそれくらいやりかねないから。

闇色に染まった俺は罪の報いを受けて世界の隅で消えるくらいが丁度いいんだ。
あのきれいな真っ白を俺の汚れた色で染めたくなんかないんだ。
だから俺はあの白から距離を置いたのに、なんで。

なあアキ、お前はなんで俺の傍に踏み込もうとするんだ。



Side A.S.

お前はあの事件から殻に篭ってしまった。一人の子供のたった一人の母親の命を、不慮の事故とはいえ奪ってしまった。肉親というものを望んでも得られなかった、孤児だった俺達にとっては本当に辛いことだった。
だからその重すぎる辛さを一番分かち合いたかったそのときに、お前は俺の前から姿を消してしまった。

俺のペルソナとお前のペルソナが神話の時代から双子として掲げられていたと知ったときは、これは運命だと思ったんだ。本当は双子ではなかったけどほとんどそのように育ったという謂れさえ、同じように過ごした俺たちと同じだと思った。
俺たちは魂の双子なんだ。ペルソナの能力が開花する前からそう確信していたのに、再会したときにはもう俺とお前の間には見えない壁があった。お前の作った分厚い壁が。

お前の傍に居るためなら、どんな高いハードルだって越えるし、どんなに障害に満ちた道でも潜り抜けるつもりだ。でもお前が作った壁が距離を縮めさせてくれない。お前の傍に居られない。

なあシンジ、なんで俺をそんな眩しそうな眼で見るんだ。
なあシンジ、なんで消えそうな言葉で己を語るんだ。
なあシンジ、なんで、なんで、なんで、俺を傍に置いてくれないんだ。






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対照的なのにそっくりなこいつらはニコイチすぎると思う。
想いの強さは荒垣>>>>>真田だけど、依存の強さは荒垣<<<<<真田なイメージ。