049:natural 封神・雲中子+太乙 終南山に遊びに行った太乙は、机に見慣れないものがあるのを見つけた。 「雲中子、いい歳して絵本なんか読むんだね」 見慣れない絵本〈それ〉をぱらぱらと捲ると、見慣れない街の風景と見慣れた白衣が目に入った。 「時折深いことが描かれているものだよ。君も読んでみるといい」 促されるままに太乙は目を通す。 それは、とある街の博士の話。 シャボン玉がわれるのを悲しんだ少女のために博士はわれないシャボン玉を作った。するとあたりはシャボン玉でいっぱいになり、街は機能しなくなった。こんなはずではと悩む博士に少女はこう諭す。「シャボン玉はわれるから良いんだよ」と。 太乙が本を閉じた頃、雲中子が声をかけた。 「私は少女の意見に全面的に賛成するよ。変わらないモノなんてつまらないだろう」 でも、と言葉を切り、意地悪く笑いながら問う。 「『われないシャボン玉』を創った君なら、その博士の気持ちが判るんじゃないかい?」 シャボン玉は時として子供の命に喩えられる。 破れないシャボン玉。不自然なもの。変わらない命。――ナタク。 「何がいいたい?」 不快感を隠さず訊けば、自ずと口調は厳しく険しくなる。 「なんだろうねぇ」 予想通りと言いたげな声音で答えにならない答えを返す。 「……」 「……」 膠着した沈黙を、不意に子供の笑い声が破った。 外を見れば、天祥を背に乗せたナタクが崑崙を飛び回っていた。 それを見て太乙は、片頬を釣り上げてにっと笑う。 「その『われないシャボン玉』で楽しげに遊ぶ子供もいるのを忘れない方がいいと思うよ」 「natural:自然の、生まれつきの」 何で「自然」のお題で「不自然」の話してるんだか。 なんか雲中子がナタク嫌いみたいになってる気がしますが、別にそんなつもりはありません。 |