053:only
ヘタリア 日





私があまり考えないようにしていたこと。
ひとつめ、ぽちくんが犬にしてはあまりに長生きであること。思い返してみれば軽く100年以上は一緒に暮らしている。
ふたつめ、ぽちくんが賢すぎるほどに賢いこと。躾けらしい躾けをしたことはないのに初対面の人に対しても滅多に吠えず、心を読んだように私が探しているものを簡単に見つけてきてくれたことがたびたびある。

そしてみっつめ、ぽちくんが見える人と見えない人がいるらしいということ。



「やぁ日本!遊びに来たよ」
「アメリカさん、いらっしゃい。今ぽちくんのご飯を用意しているのでちょっと待っていてくださいね」
「ぽちくん…誰だいそれは?」
「飼い犬です。小さいし吠えませんが、ずっと前からいますよ。気付きませんでしたか」
「何度も遊びに来ているのに!おかしいなぁ」
「あ、いたいた。ほら、この子です。可愛いでしょう」
「日本……イギリスの真似はやめてくれよ!それが最近のジャパニーズ・ジョークかい?すっごく趣味が悪いぞ!」
「……!?」
「幻覚なんか相手してないで、ゲームしようじゃないか!また新しいソフトが出たんだろ」


無理やり会話を終わらせたアメリカさんはさっさとゲーム部屋にいってしまいました。
私は腕の中にいるごくごく普通に見える小さな白い犬と視線を合わせて訊きました。
「ぽちくん、貴方は一体何なんですか?」
永く生きた猫はやがて猫又となるそうですが、犬にもそんなものがあったでしょうか。
「本当に普通の犬なのですか?それとも――」
――私が見ることができるたった一人の妖怪…?
ぽちくんは否定も肯定もすることもなく、表情の読めない顔でわんと一声鳴いただけでした。






「only:唯一の」
どこかでちらりと見て以来気になって仕方なかった「ぽちくん=妖怪」説。
ご本家見るといつの時代にも居るようですがまだ検証してません。