058:perfume
おお振り・田花





それは定期テストを翌日に控えたある日のこと。
特にグラマーとリーダーの成績がひどい田島が、花井宅に勉強しに来ていた…はずだった。
「田島、お前何しに来たんだよ」
「んー、勉強?」
「で、今何してる」
「休憩!」
「10分前にも休憩したばっかだろ……明日提出の課題まだできてねーし!」
場所や面子は違えどテスト前の時期に何度となく繰り返された応答。
しかし場所が個人の部屋となると少し変わってくる。
そして田島がとる行動といったらだいたい決まっているのだ。
「だって飽きたんだもん。ねー花井なんか面白いもんない?エロ本とか!」
「お前が期待するようなもんはねえよ」
「やっぱ定番といえばベッドの下だよなーっ」
「こら勝手に漁んなって!」
にぃっ、と愉快そうに笑って田島は花井のベッドにとびつき、枕元にあるひとつのものに目を留めた。
「なー花井、これ何?」
そういって手に取ったのは薄黄色の小さな瓶。
「ああ、それ香水」
「え、花井香水つけるの?」
「誕生日んときに妹達がくれたんだよ。いっつも汗臭いからちょっとは気にしろってさ。使ってはいないけど時々いじってる」
「どーりで、これ花井の匂いがすると思った!」
「そうか?」
「朝練の前は、甘酸っぱくておいしそうな匂いだぜ」
練習始めるとすぐにグラウンドの匂いになるけどなー、と笑う田島を見てこいつは犬かと花井は嘆息した。
「あっ、そうだ!」
「どうした」
「明日俺の誕生日だからさ、プレゼントにこの香水少しちょーだい」
「別に構わないけど、そんなんでいいのか?」
「だってこの香水もってたら授業中でも俺んちに居てもずっとずーっと花井と一緒にいる気分になるんだぞ!それってすごくね?」
それは、それだけ長い時間一緒に居たいという意思表示で。
その言葉を聞いて花井の顔が赤く染まる。
「んで、これと妄想があれば花井でいくらでも抜けr――」
そして次の言葉で別の意味で赤くなり、田島が皆まで言う前に見事な拳骨を食らわせた。
「いってえええ!これ以上馬鹿になったらどーすんだよ!」
「馬鹿だって自覚があるなら馬鹿なこと言ってないでとっとと課題進めろ!言っとくけど俺のは見せてやらねーぞ」
「うう…」
田島が不承不承という感じで机に向き直るのを確認してから、花井も学習机に向き直った。
引き出しの奥に仕舞いこんだ香水用のちいさなスプレーを探すために。






「perfume:香水」
田島様の誕生日の季節(10月中旬)普通は文化祭とか体育祭の季節かもしれないけど、自分の母校だと2学期中間試験のテスト期間なので。
時間感覚がおかしくないまともな人間書いたの久々だなぁ…。