064:reason
魔法律・過去五領&エビス





あいつを拾った理由なんて、無いに等しいもんだ。
可哀相だから庇ってやりたいなんて偽善者染みた感情なん持ち合わせてないし、才気を見込んで…なんてことはある訳もない。
だいたいアタシが見つけたときはあいつはボロクズ同然だったんだ。
ただ、ちょっと仕事を抜け出して散歩していたら変なものを見つけたから、拾って飼ってみたくなった。
たったそれだけの、一時の酔狂。
飽きたら適当に捨て置くつもりだったし、捨てるのも面倒だったら過労死するまで使いっ走りにするつもりだった。

「でも、ひょっとしたらひょっとするかもしれないねぇ…」
アタシが独り言を言うと、エビスが振り返った。笑顔で。
「何の話ですか?五領様」
「なんでもないよダルマ!手止めてないでさっさと本棚の整理を済ませておしまい!」
「すいません!!」
あいつはなんでもないときにでも、側にいるだけで嬉しい、みたいなオーラを出しやがるから本当に参る。
なんせ、いくら五領グループが最大クラスの魔法律家グループでも、一人ひとりを見れば、当主のアタシを前にして何か言いたそうな顔だけして何も言えないくせに上にのし上がりたいという自己顕示欲だけは一丁前な奴等ばっかだから、エビスみたいなのは見たことがない。
逆に言えば新鮮ってことなんだろうねぃ。
そう思ってもう一回目をやると、今度はこちらをちらちらみながらコソコソと変な動きをしている。
「何やってんだい」
「ヒッ…!」
驚いたエビスの服の下から、本棚の奥の方にあった埃だらけの本が出てきた。
「これは…アタシが昔MLSで使ってた教科書じゃないか」
「決して盗むつもりじゃ…少しの間だけ貸していただきたくて…」
エビスは俯いたまま本を拾い上げて大事そうに抱えた。
「一刻も早く一人前になって、命の恩人の五領様のお役に立てるようになりたいんです…」
ふん、勧めるまでもなかったようだねぇ…。
「そんな古本くれてやるさ。でも、アタシの一番の側近になる魔法律家が書記官止まりじゃ五領グループの名折れだ。死ぬ気で勉強するんだよ!」
「は、はい!」

拾った理由なんかないさ。
あるなら「運命がそうさせた」とかそんなとこだろうねぃ。






「reason:理由」
久々に魔法律読んだら、ムヒョロジよりもごりょーさま&エビスばんざーい!な気分になったので、突発SS。
でも原作での「五領」が漢字だったりカタカナだったりして困った…。どっちが本当なんですか、WESTせんせー!