072:simple
ヘタリア 日土日
※反日・親日系ネタ注意





新聞を読むのは、『国』である人々の多くにとって日課である。景気の変動による体調の把握にも繋がるし、自国で起こっていることを他国に先に知らされるような恥ずかしいことが無いようにでもある。
しかし新聞というのはもちろん都合の良いことばかり書いてある訳ではない。むしろその逆であることの方が多いのである。


日頃感情を巧みに隠す日本とて、近隣諸国や『しんぶんくん』に嫌いだ嫌いだと言われていれば気が滅入ることもある。
「どうせ私なんて、家の人たちに…いや世界中から避けられる厄介者ですよ」
うっかりとそうこぼしてしまったのは会議室の休憩所であった。
静かに過ごすことを好しとする彼は普段こういう場では人通りの少ない部屋の端に居ることが多いのだが、「少ない」というのは「0」ではない。後ろ向きな呟きを聞きとがめた者がいた。
「何の話ですかい、日本さん」
江戸っ子口調(に日本には聞こえる)で喋るその人はトルコであった。
「ああトルコさん、ほんの独り言ですよ」
「誰が嫌われてるってんです?」
「今朝読んだ記事の話ですよ。心配させてしまったのなら申し訳ありません」
そう聞いてトルコは日本の脇にあった新聞に目をやった。
「これは…あなたが嫌いな奴らが書いてる…」
「そして私の家で全国規模で売られているものですよ」
「……」
「地味だとか世界で通用しない無口さだとか…消えない罪だとか。トルコさんには関係ない話です」
「関係なくはないですぜ!愛する人の美点を棚に上げて悪く言われるのは誰にとっても嫌なもんです。それが愛する人本人の言葉であっても」
少し遠まわしに「あなたが好きだ」と伝えた彼は照れた風でもなく、表情が読みづらい仮面の下からでも相手を慮る気持ちを伝えていた。その様子が飼い主の不調を察した犬のように見えて、『国』の中では年嵩な彼とのちぐはぐさに日本はくすりと笑った。
「勿体無い言葉、ありがとうございます。私も、塩じゃけとたくあんとしめ鯖がないと生きていけないくらいには私と私の文化が好きですよ」
「ははは、いくら俺達が普通より丈夫に作られてるっていっても、そんな食生活じゃいつか本当に体壊しますぜ」
「そうなったらそのとき考えますよ」
「相変わらずそういうとこは譲らないんですねぇ。そこれが日本さんのいいとこですがね。あ、もうすぐ休憩時間終わりじゃねえか。じゃ、次は会議室で」


無償の愛とも言えるくらいの好意を受けている。単純だけどとても気付きにくい事実を思い出させてくれた彼の言葉を心の中で反芻して、会議が再開されるまでの少しの間日本はその暖かな気持ちに浸っていた。






「simple:単純・わかりやすい」
和む外国人コピペ読んでたら受信したブツ。