078:symbol
堀宮 ミャムラ×石川





夢の中のことだと認識してはいても、やはり身近にいる友達と同じ顔のなにかが頻繁に登場していれば愛着が沸いても仕方ないと石川は思う。
その『なにか』が、日によって大きさの変わる人型の猫だとしても。


「発情期無いのは助かったな……去勢とか避妊考えなくてもいいし。タマとっちまうのは、なんていうか、アレだ」
同じ男として、人のかたちをした彼らのそういったものの処理は本格的に嫌だ。所詮夢の中の事なのだけれども。
「っつーか、今まで病気になってなかったから考えたことなかったけどもしそうなったらどうすればいいんだ?」
石川はほとんど第二の現実としているこの獣耳が居る世界で家から出たことはないことに気づきながら懊悩していると、猫宮村(小)が現れた。
「おう、宮村。他の奴らはどうした」
「忙しくて入れないみたい」
「ほんとバイトみたいに言うなぁ。俺、お前らに出てきて欲しいって頼んだ覚え無えんだけど。疲れるし」
しかし相手をするのが1匹だけだと知ってほっとしていると、猫宮村が石川に向かって飛びついてきて、石川は座ったままそれを受け止めた。
「石川君石川君、これ、どうしよう」
これってなんだ、と訊こうとして、しかし黙った。猫宮村が跨いだ石川の腿をつつく何かがある。しかし猫宮村の腕は石川の首にしっかりと巻きつけられている。おそるおそる視線を下にずらすと、「足の親指と親指の間」が見事にテントを張っていて、石川はぞわりと背筋が凍るのを感じた。
「石川君の匂い嗅いだらこうなっちゃった。ねえ、どうしよう」
「お前ら発情期ないって言ったじゃん!言ったじゃん!!なんで!」
「さぁ?それ仙石くんだけの話だったんじゃない?」
言いながら猫宮村は腿にいきり立ったものを擦り付けている。少しうっとりした声音なのが、石川の意識を更にパニックに陥とす。
「ねえ石川君、……していい?」
融けたようなその声が、なりは小さくても現実の宮村と同じに少し高めな声であることに気づく。
(喰われる……!!!)
逃げられない状況に石川は再び硬直して――



――目が覚めた。
冷や汗をびっしょりかいてがばっと起きると、目の前に猫宮村(小)と猫仙石(中)がいた。猫仙石が嫌そうにしながらも猫宮村の相手をしているのはいつもどおりで、石川の服に乱れたところもない。ということは。
(二段夢オチかよっ……!!でも良かった!ほんとに夢でよかった!)



それでも、夢の中の夢でのことだと分かっていても、石川が翌朝宮村を少し避けるようになったのは言うまでも無いことである。






「symbol:象徴」 主にシモい意味で(…)
あれだけノマカプの多い堀宮で、敢えての石川受け。まさに誰得。
※5周年5ジャンル企画その5:堀宮編