098:yesterday
ヘタリア 封神  聞仲+にーに
※クロスオーバー注意!





聞仲が王宮の中庭に子供がいるのを見つけたのは、冬の昼下がりだった。
子供を連れた諸侯が来るという連絡は受けていないし、王子が余所に友を作ったという話も聞いていない。あるとするならばどこかで任務を怠けた兵士が迷い込んだ平民を入れてしまったのだろうと聞仲は思った。それにしてはその長い黒髪をひとつに結った子供は城下の民にしてはこざっぱりとした服装をしていて、年端もいかないように見える割には行動が落ち着いているのが異質といえば異質だった。
「そこの子供、何をしている」
「あいやー、見つかっちまったある」
「見つかって不味いことでもしていたのか」
「こっちににげた我のパンダ探してただけある。我のペットなのにだれかにつかまったら食われちまうあるよ」
「この城にそんな野蛮な者は居らん」
「城?ここ城あるか!どおりでやたらでっかい家だと思ったある」
聞仲は呆れた。広い国土で一番固い警備が敷かれているはずの城を、この奇妙な子どもは「でっかい家」だと言ってのけたのだ。警備に穴があるなら聞き出さねばならない。
「貴様、どこから入った」
「壁なんか土遁で越えられるある」
「土遁…ということは仙人界の者か」
「仙人界ってたまに空にぷかぷかしてるやつあるか。我地面から離れたことないあるよ。何せ我はこの大地から生まれたあるからな」
聞仲はいよいよ分からなくなっていた。長く生き過ぎた動物や無機物が太陽の光や大地の力を受けて人の形になるらしいというのは知っているが(聞仲自身は元人間であるし妖怪仙人への進化は見たことが無かった)、大地そのものが人の形をとるということは聞いたことがなかった。
混乱している聞仲をよそに、子どもは思い出したように話を続けていた。
「そういえば城にいるってことは偉い役人あるか?」
「あ、ああ。政<まつりごと>や戦の指揮をとったりしている」
「やっぱりあんたあるか!あちこちで戦やられると体が痛くてかなわんある!」
「…何か関係あるのかそれは」
「もちろんある!国は大切にしないとだめある!」
「それでお前が無事でいられるのなら私も努力しよう。殷と殷の民を護ることが私の役目だからな」
「じゃあそうするよろし。1000年生きても痛いのには慣れないある」
さらっと子どもが言った言葉に聞仲は声も無く驚いたが、子どもは探していたパンダを見つけて駆け出していた。そして一度だけ振り向いて、
「さっきの、約束あるよ!」
そう言い残し、パンダを抱えたまま音もなく消えた。



「長く生きて知識を詰め込んでも、分からないことはあるものだな」
呆れたように天を仰げば、どこまでも高い空と小さく仙人界の島が見えた。人智を超えた様々を開発しているあの場所に住まう者にも、地上に降りてみなければ知らずにいる事象はあるのだ。

例えばそれは、国の具現が人の形をとるらしい、ということだった。



数多繰り返されたひとつの中の、他愛もない在りし日の話。






「yesterday:昨日」拡大解釈して「過去」
ファン層が被るのか甚だ怪しすぎる誰得SS。
爺が子供のときには既に大人(?)だった仙人も、夏王朝殷王朝の頃には子供だったはず…!