099:yourself
絶望先生・准望





数時間前。
今日は私が顧問として受け持っている図書委員会がある日なので、教室から図書室まで移動していた。
「先生」
その途中で背後から声をかけられた。
2のへの生徒であり図書委員の久藤くんだった。
「ちょっと話があるので、委員会後に体育館裏に来てもらえますか?」
「え゛」
「このあと何か用事でもあるんですか?」
「いや、ないですけど」
「じゃお願いします」

生徒、特に男子学生が誰かを人気のないところに呼び出すなんて、8割方は暴行・恐喝に決まっている。
でもこういうのは無視すると後々が怖い。
私が迷っているうちに委員会はあっという間に終わって、冷や汗を抑えられないままその場所へ向かうと、彼は既に待っていた。
感情の読めない笑顔を浮かべて。
「えーと…久藤くん?お金なら出しますから、できればあまり手荒なことはしないでいただきたいのですが…」
「先生…何の話ですか?」
「私から金品を脅し取るつもりなんでしょう?オヤジ狩り・ホームレス狩りの次は教師狩りですか」
「はは、僕はそんなこと考えて呼び出したんじゃないですよ」
「じゃあ何を――」
「好きです」
「…え?」
問い返したときには久藤くんは触れそうなほど近くに来ていた。
そして彼はすっと手を伸ばし私の髪に触れ、
「この滑らかな黒髪…」
眼鏡を外し、
「口癖とは裏腹に輝く瞳…」
頬に触れ。
「女生徒にも勝る白滋の肌、惹かれない方がおかしい」
「…そ、そんなもの、一時の気の迷いです。それに私程度の外見の人ならどこにでもいるじゃないですか」
私は反論した。
あまりに近い視線に耐えられなくなって視線を逸らす。
動揺が声の端々ににじみ出るのが自分でも分かって情けなくなる。
そんな私の気持ちが分かっているのかいないのか、久藤くんは感情の読めない笑みを一層広げる。
「でも、貴方自身を好きでなきゃこんなことしませんよ」
彼の顔が近付き、唇と唇が触れた。
淡く、長く。


ああ、私は何故こんなにも追い詰められているんだろう。
こんな、思いもかけない、
悪夢のような好意でもって。






「yourself:あなた自身」
アニメ化記念はじめての准望。
久米田作品は自分的二次創作の鬼門らしい…。原作らしさがでないっ!