戦国BASARA 政小





そもそも政宗に剣術を教えたのは小十郎で、政宗の六爪流はこの傳役に端を発するといってもいいのだから、小十郎が多刀使いだということは政宗とて重々知っていることではある。だからこそ黒龍は二振りで一対でどちらも『黒龍』なのだ。
「梵天成天翔独眼竜、なぁ」
にやにやと笑いながら政宗は、小十郎の目の前であの豊臣秀吉を討った刀を撫でる。その手つきは意図的か否かどこかねっとりと艶っぽい。
対する小十郎は政宗からやや視線を逸らすように下を向いて耐えている風だった。
「もう充分でしょう。そろそろ返してくだされ」
睨むように言ってはみるものの、耳まで赤くなっていては迫力など無きに等しい。少なくとも政宗には通用していなかった。
「っつーかよ、『六爪独眼竜右目生涯』は平気な癖してこっちは見られなくないってよく分かんねえな、お前」
「そちらは小十郎の信念ですので」
「I see…とは言えねえが、まあ拘りがあるってことは分かったぜ」
「ならば」
「返せってんだろ、いいぜ」
渡された己が刀を漸く手元に戻すことができて小十郎はほっと一息つく。
「貴方がこの銘をご覧になったら気分を害されるのではないかと思っていたのですが…」
「Why?」
「『俺はもうよわっちい梵天丸サマじゃねえ』と」
「まあ、思わない訳じゃなかったが、それよりも俺は、黒龍に俺のことが刻まれてることの方が嬉しかったぜ」
「それは…?」
「お前はいつも俺の『横』に居ちゃあいるが『隣』に居るとは思ってねえだろ。俺よりも1段、いやもっと下ってな」
「……」
「でも、この刀は『俺』のことが刻んであるのと『お前』のことが刻んである二振りがあって揃って黒龍だ。なんか、双龍って感じがするだろ」
「そこまでは、考えておりませんでしたが…」
「いーんだ、俺がそう思いたいんだから。だからその銘変えたりすんじゃねえぞ」
「政宗様がそう望まれるのでしたら」



「俺も銘刻んでみるか。一文字ずつ……例えば『我愛右目生涯』、Good!丁度六文字じゃねえか」
「政宗様、冗談に聞こえませんのでおやめください…」
「半分は本気だぜ」
「……」






1年ほど拍手お礼になってました。
黒龍は2振りで1つの扱いなところに浪漫を感じます。