Fate/zero キャス(+)龍





「旦那もさぁ、血って赤色なの?」
唐突な問いに『旦那』ことキャスターは一瞬だけ瞠目する。しかし、「この人でなしめ」というニュアンスではないのは、龍之介の口調からに察する事は出来たので端的に答えた。
「そりゃあ、もちろん。サーヴァントといえども体の構造自体は人間と変わりませんので」
「ふぅん、悪魔も血は赤いんだ」
「もっと別な色だったら面白かったかもしれませんがねぇ」
龍之介は未だキャスターを悪魔だと勘違いしたままでいる。そしてそれをキャスターは正す気にはならなかった。サーヴァントとして聖杯戦争のことを知ってはいるし龍之介にもごく簡単に説明はしたが、彼が「悪魔を呼び出す儀式をしてたら旦那が来たんだ」と言っていたから、きっと自身はキャスターというサーヴァントであり悪魔なのだろうと思っていた。
マスターである龍之介が聖杯に興味はないのだったら、キャスターもそれに拘る理由もない。滅多に出会えない同好の士である彼にアドバイスを与え期待に応えるのがキャスターのもっぱらの関心事だった。
そういえば、マスターは血の色に限りなく似た『原初の赤』を探している、と言ってはいなかったか。
「ああ、なんなら本当に赤いか見せてみましょうか」
ちょうど御誂え向きな刃物はアトリエのそこここに転がっている。それのひとつを手に取り、もう片方の手に振り下ろそうとした。
それを、龍之介はそれを慌てたように引き止めた。
「べ、別にいいよ!」
「…?」
刺し傷程度なら治癒魔術で簡単に治るのは龍之介も知っているはずで、止められた事に疑問を持つ。それは龍之介も同じなようで何故そう思ったのか、龍之介自身にも分かっていないようで、不思議そうな表情を浮かべている。
「どうしました、リュウノスケ」
「今気付いたんだけどさ。俺、気に入った人が出来るとその血とかハラワタを見たくてしょうがなくなって、我慢できずに切り刻んだり肉塊にしたりしてきたんだ。だけど俺、旦那のそういうの見たくないみたい。こんなに旦那のこと大好きでソンケーしてるのにね。なんでだろ?」
「そうですか、リュウノスケがそう言うのでしたらやめましょう」
言って、キャスターは刃物をテーブルに置く。その手を龍之介が取り、うんうんと納得するように頷いた。
「この手は、俺に目標と生きがいをくれた手なんだよ。だからさ、もっといっぱい殺したり、もっといっぱい作品作ったり、クリエイティブな方向に使おう!」
気に入ったのか龍之介はぺちぺちとキャスターの掌を叩く。改めて見てみれば、その手は土気色で筋張った指先からは鋭利な爪が長く伸びている。なるほどこれは悪魔の手だ、とキャスター自身も思う。そして、龍之介を傷つけないように触れて抱きしめる事のできる手であったらと思う心もどこかにあって、そんな人間じみた感情を持てたことにキャスターは心の中で首を傾げた。






1年ほど拍手お礼になってました。
4次5次総合してもぶっちぎりで似たもの同士なかよしさんな猟奇殺人鬼コンビ青髭組が大好きです。