ヘタリア ギルッツ・パラレル
※ぬるいですがR-18です注意
※シリーズの印象を損ないたくない方にはおすすめしません




ルートヴィッヒの休みの日というのはシフトが先に提示されているため分かりやすいのだが、ギルベルトの休みは死神であるがゆえに不定期だ。だから彼らの休みが重なることは案外少ない。
その日は「あ、今度のルッツのオフの日俺も休みかも」と数日前に言っていて、しかし昨日運ばれてきた急患が、お互い不幸なことにギルベルトの「担当」になってしまった。
「こればかりはどうしようもない。俺にもあなたにもどうにもできないことだ」
言葉では理解を示しているルートヴィッヒは、表情に寂しさを隠しきれないまま病院に向かうギルベルトをアパートから見送った。

せっかく周りの目を気にせず一日中一緒にいられるはずだったのに、本当にタイミングが悪い。それでも仕事はきっちりとこなすのはさだめだしギルベルトの性分でもある。
ただ、いつもなら死者の魂の手を引いて無理のない早さで飛んでいく道のりを、魂を抱えて5倍は早いスピードで天の扉まで全速力で飛ばしてしまったのは、ギルベルトの心情を考えれば当然のことだった。(到着した魂がひどい車酔いになったようにふらふらしていたのは少し申し訳なく思ったが)
そして魂を送ったときよりもさらに早く地上に戻り、アパートの扉の前に降り立つ。
「随分早かったな、おかえり」と笑顔で迎えてくれるのを期待して扉の前にたったが、ふと何か妙な予感がぴりっと走った。常人よりも鋭敏な耳が、不自然な物音と呼吸の音を拾う。ルートヴィッヒ一人しかいないはずのこの部屋で何かが起こっている。そんな気配が扉越しに痛いほどに感じられた。

出来るだけ気配を殺し、物音をたてないように玄関を通り抜け部屋に忍び込む。(元より霊体なので意識しなければ音はたたないのだが)
ルートヴィッヒの苦しそうな荒い呼吸がよりクリアに聞こえ、その音がする方――寝室までそっと近寄り、薄く開いた扉の先を覗き込んだ。

ルートヴィッヒは確かにそこにいた。服を大胆にはだけ、ほとんど裸のような姿で。
青い瞳は熱で潤み、顔を紅潮させてベッドに座っている。
「は、あっ……く、ぅ………」
漏れでる声を押さえるように左手は口元を押さえ、もう片方の手は下へ。そこに視線を移せば、下肢の中心は大きく屹立していた。

瞬間、反射的にギルベルトは扉の陰に姿を隠した。見てはいけないものを、見てしまった。そんな直感が確かにあった。
死者であり死神であるギルベルトに三大欲求はない。それらはすべて生きた肉体をもつが故の欲求だからだ。
そして生者であるルートヴィッヒにはもちろんそれがあるのは知っている。食事をとっているところも眠っているところもたくさん見てきた。なのにもうひとつの欲を見せたことが今まで一度もなかったことに、そしてそのことに全く気付かなかった自分にひどく驚いた。
気付かなくて申し訳ないという気持ちと、恋人なんだから隠さなくてもという理不尽な気持ちが同時に湧き上がる。
隠したがる気持ちは理解できる。だが、ギルベルトはルートヴィッヒのどんな姿も見逃したくなかったのだ。
だから、再び扉の隙間から部屋の奥を覗いた。隠したがるルートヴィッヒの意思を尊重して、こっそりと。
先ほど一瞬だけ見たその下肢に視線を落とし、ギルベルトは驚いた。下に伸ばされた右手の行き先はとろとろと滴をこぼす屹立ではなく、その奥。先走ったものやそうでないものでぬかるんだ入り口に、『何か』を迎え入れていた。
ずちゅ、ずちゅ、と卑猥な水音と共にちいさく喘ぐ声があがる。
その鈍い律動が一際大きくなり、
「ふ、ぁ……ギルっ……!」
己の名を呼ぶ声が聞こえ、目の前で熱い衝撃がスパークする感覚に襲われた。
気遣い、ひそやかさ、そういったものが一瞬で弾けとんだ。

文字通りベッドまで飛んでいったギルベルトは、その勢いのままルートヴィッヒの肩を掴んで押し倒す。
あまりに唐突に姿勢が一変し目を白黒させたルートヴィッヒは、状況を理解した途端顔を真っ赤にして直後真っ青になった。あまりのことに口をぱくぱくとさせて何も言えないでいる彼に、ギルベルトは顔をぐいと近づけて、低くゆっくりとした声音で問う。
「なあ、今までも、俺様がいないときにこんなことしてたのか?」
ルートヴィッヒは青ざめた顔のまま小さく首を振るが、
「じゃあ、今日がはじめてか?」
その問いには黙ったまま目をそらした。たった一言、そうだ、と嘘をついてしまえばいいのに。
「そんなはずねえよな、こんなもんをこんなに深く――入れてるくらいだから」
そう言ってルートヴィッヒに深々と突き刺さっているそれをぐっと掴む。無機物とはいえこんなよくわからない者がルートヴィッヒを犯していると思うとあまりにも耐えがたかった。ぐち、と音がしたことに興奮がぞわっと駆け抜け、衝動のまま引き抜く。
引き抜かれた拍子に甘い声があがったのに気をよくして、そのぽかりとあいた下の口を尻尾の先でつつっと撫でてやると、ルートヴィッヒはひゃっと声をあげ、自分でもその声に驚いたのか再び口を手でふさいだ。その手を無理に外して、またギルベルトは問う。
「今までも俺のこと呼びながら、してたのか?俺に抱かれる想像して?」
それにルートヴィッヒは否定も肯定も返さず、ただ一言しぼりだすように、ごめんなさい、とだけ言った。ぎゅっと瞑られたその瞳から、しずくがこめかみに向かってつうっと流れ落ちる。
「ごめんなさい、ごめんなさい……あなたをこんな、汚い欲でよごすようなことをして……」
その涙にギルベルトははっと冷静になった。責めたいわけでは決してなかった。でも恋人の不実をなじるようなことばかりしていたことに今気がついたのだ。
「違う。違う、俺はそんなこと怒ってるわけじゃねえ。そもそも怒ってねえよ。お前がそういう欲を持つのは当たり前のことだ。生きてる証拠だ。――でもよ、だったら俺に言えよ。遠慮すんな。だって、俺たち恋人だろ」
涙をこぼす瞼をいたわるようにそっとキスを落とせば、様子を窺うようにそろりそろりとうつくしい空色の瞳が顔をのぞかせた。
「いい、のか……」
「だめだなんてひとことも言ってねえ」
「よ、よかっ……ひぅっ!」
ルートヴィッヒが安堵の表情を見せた瞬間、動きを止めていたギルベルトの尻尾の先端が、ずるん、と入り口に入り込む。実体を持たないが故にひやりとした外気と同じ温度を持ち濃密な空気のような圧迫感のあるそれは、使っていたディルドよりも大きく太く遠慮なく入り込み、未知の感覚にルートヴィッヒは一気に混乱に陥った。
それをぐっぐっと中に押し入れるギルベルトは、そんなルートヴィッヒを見てにやりと笑う。
「俺は、真面目で優しくて潔癖なお前も好きだけどさ。よがるお前も絶対好きになれる。だから、隠すな。見せろ。全部」
見下ろす赤色の瞳に宿る光は、性欲を持たないなんて思えないほどにぎらぎらときらめいていた。



広くもない寝室に、一人分の低く甘く響く声と荒く短い息が満ちる。
ルートヴィッヒは喘ぎを聞かれたくないとまた手で口を押さえつけようとしたが、「隠すな」とその手を外されて、抵抗はやめることにした。ここまでされたらもうどうにでもなれ、と半ば自棄になった気分でもあった。
一方ギルベルトは、そんな恋人の姿を一瞬たりとも見逃すまいとほとんど無言で食い入るように見つめていた。ルートヴィッヒに触れることで熱が移り、全身が今までにないほど熱くなり、頭がぼうっとする。
もっと見たい。もっと聞きたい。きもちよくさせてやりたい。でももっと長くこうしていたい。
熱に浮かされた思考はそんなことばかりと考えて、その衝動のままにルートヴィッヒを翻弄する。彼の奥の良いところはとっくに見つけていた。ソコを尻尾の先端でくすぐったり押しつぶすようにしてやれば、快楽に素直になったルートヴィッヒは身体を震わせて甘く啼いた。
「あ、あッ……っはあ、ああ、あああッ!」
そのまま一気に追い詰めて早く楽にしてやりたい心もあったが、ルートヴィッヒから伝播する熱に浸るのが心地良くて、あえて良い場所を少しくすぐるだけにして、あえて外して焦らしてみたりもした。
「あ、はぁ、んん、は、ああッ、くぅ、ン……」
さっきからぎゅっと瞑ったままの瞳をまた見たい。快楽に身をゆだねてとろとろになっているはずのあの青い光が見たい。だからもっと俺を見ろ、俺を求めろ、ちゃんと目を見て俺に乞え。
そんな思いが伝わったのか、ゆっくりと瞼が開く。熱に潤んだ青い瞳は想像していた通り、いやそれ以上に美しく艶めいていて、それだけで感嘆のため息がでそうなほどだった。
「っは、あ、ぎ、ギルベルト……」
「ん、なんだ、ルッツ」
ほら、ねだれ、早く。そう思いながら動きを止めて次の言葉を待つが、恥ずかし気に唇をむずむずと小さく動かした後に発された言葉は、予想を大きく裏切った。
「幻滅、してないか」
「は?幻滅?!なんで」
「こんな、ン、みっともない姿、さらして、ンっ、い、嫌、じゃ、ないか……?は、ああっ、」
こいつはなんでこんなに自己評価が低いんだろう、と思いながらギルベルトはじゅぷりと音をたてて挿入している尻尾に力を込める。喋るために我慢の緩くなったルートヴィッヒは、さらに大きく甘く啼いた。
「あ゛ッ、……ふ、あああっ……!」
「言ったろ、見せろって。どんなお前の姿だって俺のモンにしたい。他の誰も見てない、見せてないお前の姿が見たい」
ルートヴィッヒの弱いところを的確にえぐりながら続ける。
「俺の腕の中で、よがり狂ってるお前を、愛さない訳、ねえだろ。最高だ。最高に、キモチイイ」
そう口にして、ギルベルトはこの熱が伝播して浮かされた感覚が気持ちいいというものなのだとやっと認識した。
気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。ずっとこうしていたい。もっとよくなりたい。もっと先へ。こいつと一緒に。
さらに高まる熱に促されるまま、ギルベルトはルートヴィッヒのナカを荒らしまわる。
ずぶ、ぐち、ぐちゃ、とひっきりなしに卑猥な水音がたって、すっかり悦にとっぷりひたった穴のひどさは直視したくないほどだった。
「あ゛ッ、あ゛あ、ん、……ッや、あ、あ、やめ」
急所をさらす様に喉を反らして一際高く喘ぐルートヴィッヒの様子を、くいいるように見る。すると、ある一瞬を過ぎた次の瞬間、ルートヴィッヒ快楽に溶けながらもひどく混乱して戸惑った表情で宙を見つめた。
「なッ、なに、これ、あ、あぁ、こんなの、知らな、んあっ、こわい、ああッ」
もう少しで望んだ先に行けると確信する。ひとりではいけなかった、知らない場所に。
攻める抽送は緩めず、ギルベルトはルートヴィッヒの髪をそっと撫でて宥めるように穏やかに言う。
「大丈夫だ。怖くない。俺が見ててやる。安心しろ」
「あ、あ、ギル、ぅん、んん、やァ、あ゛あッ、あああああッ―――!」
びちゃびちゃ、とルートヴィッヒの白濁が爆ぜ腹の上に散る。
その瞬間、射精のないギルベルトは感じたことのない熱を一身に受けた。
それは例えるなら熱風。昼間の砂漠のような致死的な熱量が、嵐のような暴力的な力でギルベルトに津波のように押し寄せて、全身を包み込み駆け抜けて通り過ぎて行った。その瞬間確実に意識は飛び、言葉にできない充足感と達成感が時間差で押し寄せた。
数秒後、それは快楽なのだとギルベルトは気づいた。そして快楽という名の熱風の発生源がルートヴィッヒであることも。
そして天までの扉を全速力で駆け抜けた以上の疲労感が霊体の身体にどっと覆いかぶさり、それに抗えずギルベルトはルートヴィッヒに重なるように倒れ込んだ。



生産性とは別次元のエロティシズムをとある哲学者が『小さな死』と表現したという。
ならば今ギルベルトとルートヴィッヒの間に交わされた情交は間違いなく『小さな死』であろう。男同士であるどころか、死者と生者という大きく隔てられた魂の交わりなのだから。
無益と謗る者もいるかもしれないが、そんなことは塵以下の存在でしかない。愛するひとの疑似的な死すら得たいと望み、それを得ることが自分の快楽になるなら、死をつかさどる存在であることすら神が定めた福音だ。
不思議に泣きたくなるような気分になって目の奥が熱くなったギルベルトは、この歓喜を分け与えるかのように気をやったルートヴィッヒの唇に口づけた。






R-18初挑戦してみました。
やることやってるのになぜエロくならないのか……不思議……エロい文章書ける人本当尊敬する……。