ヘタリア 米+普





プロイセンがアメリカの家に遊びに行くのはそう珍しいことじゃない。
なんといっても現役を退いて読書と家事ぐらいしかすることがないものだから暇を持て余していて、「遊びにこないか」と言われればフットワーク軽く足を運ぶからだ。
そんなわけでちょうどオフの日に時間が余ったアメリカが電話1本で自宅に呼びつけたのだった。



「Hoooo!なあどうだった、俺んちの映画!最高にCoolだっただろ!」
歓声を上げたアメリカはソファでほとんど飛び跳ねるような勢いで伸びあがり、別のソファに座るプロイセンに感想を求めた。
「ああ、すごかったぜ。めっちゃ金かかってるって感じして」
「むー、なんだいなんだい。そんなコメント求めてないんだぞ」
「そうだな、あとヒロインがいい体のねーちゃんなのは良かったな」
「プロイセン、君、どこかの変態のおっさんたちみたいな思考回路になってきてないかい」
「げ、マジか。ストライキつってるときにに遊びに行き過ぎたかもしんねー」
再生機器から映画のディスクを取り出しに立ち上がったアメリカは、ふと視線を窓の外を見、OMG!と小さく叫んだ。
「なんだって!いつのまに雨なんか降ってたんだい」
「映画の中盤ぐらいから降ってたぜ」
「嘘だろ……この後ストリートボールしようと思ってたのに!」
「えーまたあれに突き合わせる気だったのかよ……。お前のボール誤爆で当たるとめっちゃ痛えーんだよ俺様アレ嫌い」
露骨にうんざりという顔を作られて、アメリカは口を尖らせた。
「どちみち今日はできないからいいだろ。――代わりにゲームでもするかい」
「お、いいぜ。FPSやろうぜFPS!」
「やめてくれよ!君手加減する気ないだろ」
「ケセセセセ!あたりまえだろ?」
「1位記録保持者に不慣れなゲーム挑むほど無謀じゃないんだぞ!」
映画のディスクを戻して、アメリカは部屋の棚から大きなボックスを丸ごと持ってきてソファの前に置いた。テレビゲームからカードゲームまで一緒くたに入ってる収納箱だ。
そのボックスを二人して漁る。
「んー、一人用ばっかだな」
「RPGやアクションなんてだいたいそんなもんじゃないかい」
「あ、ス〇ブラあんじゃん、これどーよ」
「残念だけどこないだコントローラー壊しちゃって……」
「ハァ?アメリカお前、また力いっぱいブン回して窓ガラスブチ割ったのか」
「失礼だな、こないだのは壁だったよ!」
「一緒だっつーの」
「あ、CoCのルルブ見つけたんだぞ。これやらないかい?ダイスどっかいっちゃってるけどアプリでどうにかなるし」
「クトゥルフのリアルアイディア熟知してる相手にやる気しねえよ……」
「俺がGMしてもいいんだぞ」
「俺様ダイス運壊滅してっからヤダ」
「あー……君ダイス運もカードの引きも最悪だよね……。マリア様は君に味方してくれないのかい?」
「うっせー!!」

にぎやかにしゃべりながら二人して漁れば、大きなボックスにあふれるほどあったゲームも外に出され底が見えるほどになった。なくしたと言っていたダイスも見つかった。
「言ってくれりゃあ、ボードゲーム俺んちからいくらでも持ってこれたんだけどなァ」
「外で遊ぶつもりだったから、そんなこと前もって言えるはずないんだぞ」
「だったら今日の天気くらいチェックしとけよ」
もっともなことを指摘されてむくれるアメリカは引き続きボックスをさらっていたが、プロイセンはそこから離れて部屋の棚に向かった。
「どうしたんだい」
「お前のことだからそのボックスからあふれてそのままになってるゲームどっかに落としてんだろ。それ探そうと思ってよ」
「あー……――!?ちょっと、ちょっと待ってくれよ!勝手に漁らないでってば!」
大掃除でもするかのように棚を丸ごと移動させてまで探そうとするプロイセンを止めようとするもむなしく、棚の裏に隠した小さめの箱はあっさりと見つかった。
「あ?なんだこりゃ」



テレビからはゾンビやらクリーチャーやらの奇声がひっきりなしに上がり、発砲音とともに臓物を散らして倒れていく。
ゲーム機からつながるコントローラーはプロイセンだけが持っていて、アメリカはプロイセンの片腕をがっちりと握りながら涙目になっていた。
「あああああ、もう、ほんと、気持ち悪いんだぞ!」
「そういうゲームなんだからしょーがねえだろ。そこまで嫌ならなんでホラゲなんか貯めこんでんだよ」
「日本が新作出るたびに差し入れしてくるからだよ!ほかのゲームももらってるしプレイしてるけど、この手はほんと……でもストーリーは気になるから途中まではやってるんだぞ……」
「そういうとこ意外と律儀だよな」
「でもCG技術が上がって年々気持ち悪くなっ――ギャアアアアアアアア」
「うるせええええ!」
床下から飛び出てきたひときわ大きいクリーチャーはプレイヤーが捕まると即死するタイプの敵で、ギミックを駆使して撤退させるしかない。アメリカはこの逃げるというイベントが特に嫌いらしく、つかまれた左腕がみしみしと音をたてる。
「痛え!」
「早く、早くこいつ追っ払ってくれよ」
「だったら腕離せ!」
「無理!」
「てめえ……!」

そうやって大騒ぎするアメリカにせかされながらプロイセンは結局それをエンディングまで終わらせた。
そしてなんやかんやと一緒に寝るとこまで約束させられ、「こんな横暴な弟もった覚えねえんだけどな」とぼやきながらソファベッドで眠った。
初めてホラーゲームのストーリーを最後まで見ることができたアメリカは怖がりながらも満足げだったが、プロイセンはもう二度とやるものかとげっそりしながら固く心に誓ったのだった。






コンビワンドロ【荒鷹と黒鷲】【ゲーム】のお題で書いたもの。
ぷーちゃんはもちろんどいつさんのお兄ちゃんだけど、めりかに対してもお兄ちゃんさせたくなる。