ヘタリア セー+仏+独
※ 他ジャンル(けもフレ)ネタ




「あーー!ほんときれいな海!素晴らしいね!」
空港からタクシーでほぼ直通した砂浜に駆けながら、フランスは感嘆する。
そしてそのままぐるっと見渡せば、見慣れた水色のひらひらした裾が視界に入って、にんまりと笑った。
「セーシェル!こんにち現実逃避ー!」
「あれ?フランスさんじゃないですかー。こんにち外貨ーまたバカンスに来てくれたんですか?」
「そうだよぉー、もーむさくるしい奴らと顔突き合わせて面倒なこと話し合うの嫌んなっちゃってさー。ここはほんといつ来ても美しくていいね。嫌なことぜーんぶ海がさらってくれそう」
「へへへへ、じゃあゆっくり楽しんでいってくださいね!」
すっかり観光客もてなしモードにはいったセーシェルを見、フランスは今日の目的を思い出した。
「おっと、バカンスも目的のひとつだけど、今日はこれ渡しに来たんだよ。はいこれ。セーシェル、Bon anniversaire!」
そう言ってフランスは持っていた紙袋を渡す。ぽかんとしたセーシェルは、それを渡されるまま受け取って、ああ!と小さく叫んだ。
「わあ、覚えててくれたんですか。ありがとうございます!――これはー、服?」
紙袋の中をちらと見ながら問えば、明るくouiと返された。
「俺たちの中で今トレンドになってる服だよ。君なら絶対似合うと思って」
「へえ、これが流行ってるんですか?私都会の流行疎くて……早速着てみますね!」
紙袋を抱えて自宅に駆け込むセーシェルを、フランスはややだらしなく緩んだ顔で見送った。


「待たせたな、フランス」
ホテルのチェックインと荷物預かり処理を二人分済ませたドイツが待ち合わせの場所に向かうと、でれでれしたフランスと、見慣れない恰好をしたセーシェルがいた。
具体的に言えば、白いノースリーブのブラウスに、長めの黄褐色地にぶち模様のスカート、同じ柄の長手袋とブーツを履き、縞模様の尻尾とぴんととがった猫耳のようなカチューシャを付けたセーシェルを、フランスがスマートフォンのカメラで撮りまくっていた。
「あっ、ドイツさんも来てたんですね!こんにちはユーロおいてけー!」
「そんなとこで妖怪ユーロ置いてけしちゃだめだよ、ほら、がおー」
「がおー」
綺麗な海を背景にしたその不可解すぎる空間に、ドイツは深く深く眉間にしわをよせた。
「おい、これはどういうことだ」
「セーシェルの誕生日プレゼントを着てもらってたんだよ」
「は?誕生日!?聞いてないぞ!教えてくれてれば俺だって何か用意したのに。――Alles Gute、セーシェル。何も用意がなくてすまない」
「はい、ありがとうございます。プレゼントは外貨落としていっていただければ!」
「……まあ、その予定だが。おいフランス、女性に服を送ることの意味を考えてやってるのかこれは」
「んーん?単純にサーバルちゃんのかっこしたこの子を見たかっただけ」
「そうか……」
二人の会話をきょとんとした顔でセーシェルは見る。
「なんの話ですか?」
「それは最近流行ったアニメのキャラのコスプレなんだが……聞いてないのか」
「えっ!?……ああ、トレンドってそういうことですか!もー、フランスさん、まぎらわしい言い方しないでくださいよー」
「嘘は言ってないよ?それに似合ってるからいいじゃない」
「なら良いっす!」
「良いのか」
ドイツはひとつ深く息をついて、このマイペースな二人に対して突っ込むのをあきらめた。



かわいい服だし自分ちなんで!と言ってサーバルの恰好をしたままのセーシェルに案内されて、フランスとドイツは綺麗な海とおいしい食事と穏やかな時間を楽しんだ。
とはいえフランスの妙なテンションは続行したままで、ドイツにカメラマンを頼んでツーショット写真を撮りまくっていたため、前来たときよりは幾分騒々しかったのだが。

空港までの道、フランスはぐーっと伸びをしながら満足げに息をつく。
「あー、楽しかった!めっちゃリフレッシュしたー!やっぱり南国はいいね」
「それには同意する。帰った時の仕事を考えたくないくらいだ」
「遠足は家に帰るまでが遠足っていうでしょー?そういうのは帰ってから考えればいいの。まだまだバカンス気分でいようぜ」
「まあ、それは一理ある。が、そのバカンス気分すぎる恰好のまま空港に入る気なら俺はお前と他人のふりをするからな!」
そう強い口調で言いきってドイツはびしっとフランスを指さす。
「あ、忘れてた」
そう言ったフランスは、セーシェルとほとんど同じ格好、猫耳だけがやや丸いジャガーの恰好をしていた。






セーちゃん誕に寄せて、コンビ版ワンドロ【リボン組】【ねこみみ】で書いたもの。
ねこみみの話を書くためにけもフレ1話を観て、後日全話観たのはここだけの話。面白かった。