ヘタリア 玖加玖





「お前って好きなタイプとかあんの?」
瞬間、カナダは勢いよくアイスを吹き出した。予想を斜め上に飛んだ反応とべたべたになったカナダの顔を見て、もう少し言うタイミングを考えればよかったかとキューバは考えながら手元にあったタオルハンカチでカナダの口をぬぐった。
「いいいいきなりなななんの話ですかぁ」
子供のように世話を焼かれながらそうやってうろたえるから、よほど恋愛談義というものに耐性がないのだろう。よく考えれば影が薄すぎるせいで友達はほぼ熊一匹というかわいそうな生い立ちであることを思い出し、キューバは話を振ったことを少々後悔した。
「あー…ただの世間話の一つだよ。深く考えんな」
「そ、そうですか…好きなタイプ、好きなタイプ、うーん…」
深く考えるな、と言った端から悩みだすような性格のカナダをキューバは友情以上の意味で好いていた。中身は正反対といえるくらいに違うのに、外見は大嫌いなアメリカとそっくりだというのが目下の悩みどころであるのだけど。
「あんまりぱっと思いつかないですね。好きになった人がタイプ、みたいな。たぶんそんなんだと思います」
「ふぅん、そっか。――ああ、アイス駄目にしちまった侘びにひとつ奢ってやるよ」
もう少し進んだ関係になりたいがための試みは結局、奢りのアイスをにこにこ顔でほおばるカナダを見られたというだけの成果を残して終わった。それだけでも一つの収穫と言えたのだけれど。



(世間話で、よかった)
心を見透かされたかと思った。好きなタイプ、好きなひとというフレーズでキューバの顔しか思い浮かばないくらいにはカナダはキューバのことが大好きだった。でもそれを隠さず残さず言ってしまったらきっと嫌われるんじゃないかという恐れがあった。マイナスの位置から始まったにも関わらず良いところまでもっていった友情を壊す危険を冒したくはなかった。かといって嘘をつくのも得意ではないし、だから当たらずといえども遠からぬことを言った。それだけで話が終わって心底ほっとした。
「美味いか?」
「はい! あ、一口交換してみませんか?」
「おう。俺もそれ食ってみたかったんだ」
それに、一緒に食事しながらいっぱい喋って時折足と足がふれあうだけの今の関係で満足していた。だから、心が叫ぶ声を無視して、もう少しここままで。






きゅーかなきゅーの理想形。親分子分ほどじゃないけどこの子たちも進展が遅いカプだと思います。