ヘタリア 普独





「ただいま」
玄関から聞こえた声が想像よりもずっと疲れた様子だったから、プロイセンは少しばかり驚いた。長い出張帰りだからと考えれば当然なのだが、行き先は地上の楽園(とプロイセンは確信している)であるイタリアだったのだ。仕事のついでに多少はバカンス気分を楽しんできたと思っていた。
リビングに入ったドイツはプロイセンの顔を見るなり、やっと緊張の糸を解いたかのような笑顔になってプロイセンの隣に腰掛けた。
「イタリアちゃんとこに行ってた割には随分とお疲れみたいだな」
半分はからかいで半分は羨ましい心持ちで言えば、ドイツは疲れたような笑いで応える。
「やはりイタリアという国は休暇で行く場所であって、仕事や永住の場所ではないと痛感した、からな」
「そうなのか?」
「ああ、少なくとも俺にとっては」
と言ったあとに、カルチャーショックに近いゲルマン気質とラティーノのギャップによる苦難や愚痴をこぼし始めた。
「それと、これが俺にとって一番堪えたんだが……俺のイタリア語は怖いとイタリアに言われて、な」
曰く、ドイツ訛りのイタリア語は威圧感をまといがちで、それをイタリアに「なんで店の人に威嚇してるの?もっと笑顔で接しようよ」と悪気もなしに言われたのがショックだったらしい。確かに笑顔固いから怖いかもなと納得する部分もあり、自身ドイツ語を使うからピンとこない部分もあってプロイセンは苦笑した。
「まあ、なんだ。おかえり」
オールバックの金髪をくしゃっと撫でまわすと、いつもなら嫌がるドイツが目を細め、あろうことかプロイセンの肩にもたれかかってきた。
「ただいま、兄さん。世界に素晴らしい場所は沢山あっても、俺にとって一番心が落ち着く場所は貴方の隣なんだ…と思…う…」
語尾が消えるにつれて青い瞳が瞼に隠れた。
「俺もお前の隣が一番だぜ。無事に帰ってきてくれてありがとな、ってもう聞いてねえか。普段もこれくらい素直だといいのによ」
旅の疲れで眠りこんでしまったしまったドイツの額にひとつキスを落として、起こさないようにゆっくりとベッドへ運んだ。

翌日プロイセンは腰を痛めたがドイツはその理由にさっぱり心当たりがなかったという。






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