ヘタリア 独+伊





「ねぇドイツ」
訓練の休憩中、イタリアがドイツの手をもにもにいじりながら言う。
「なんだ」
されるがままに放置しているドイツはそちらを見ることもなく緩慢に応える。そうされるのにもいい加減慣れた。
「なんでお前の挨拶はいっつもあんなに冷たいの」
「冷たい?普通じゃないか」
思いもかけないその形容に驚いてそちらを見れば、まっすぐな栗色の瞳に見つめ返された。そしてその瞳は不機嫌そうにすがめられる。
「普通じゃない!距離のあるキスなんてキスじゃないよ!」
「でもこちらでは兄さんたちも俺と変わらない感じの挨拶をしているんだが……」
「それはそれ!これはこれ! ねえ、俺はお前と友達だと思ってるけど、お前はそうじゃないの?」
「……?! お前は、俺の友人だ。初めての……」
照れながらそう口にすれば、イタリアの顔はころりと上機嫌にほころんだ。
「なら、ちゃんと挨拶しよ!ぎゅってくっついて、ほっぺくっつけて、ちゅっちゅって!ちゃんと俺に心開いてるよって態度で示して?」


生粋のゲルマンの直系であるドイツにおって、ラテン式の挨拶は気恥ずかしいの一言に尽きる。
しかしイタリアとはduの仲なのだから、なにより初めての貴重な友達なのだから、彼がそう望むならそうしてやりたいという気持ちはあった。
「そ、そうできるよう、努力する……」
その宣言はイタリアにとって不満だったらしい。
「もう!努力するようなことじゃないでしょ?俺の真似するだけだから、ほら、練習しよ。こうやって!」
言うなりイタリアはドイツにぎゅっとハグをし、頬をつけて、唇が触れるか触れないかの距離の耳元でリップ音をならした。右、左と。
「簡単でしょ?ほら!」
イタリアが得意気に手招きされて、親鳥に従う雛のようにおずおずと真似をする。密着して頬を寄せて、右、左。イタリアのようにきれいなリップ音は鳴らなかったが、それでも彼は満足そうだった。
「なんだ、できるんじゃないか!じゃあこれから俺達の挨拶はこれだからね、約束だよ!」
規則や約束という言葉に縛られがちな性格を知ってか知らずかそう言ったイタリアは、結果的にドイツに全面降服させる形でその約束をとりつけたのだった。






いつだったかキタユメにあった、ハグとキスのためにイタちゃんに合わせてかがんでくれるどいちゅさんがとってもすきです。