よく晴れた空の下、大人が一人で小さな公園で本を読んでいるなんて、ちぐはぐだということはギルベルトもよく分かっている。かつて子供のころ、その光景を見る側だったから。
それでも7年前に目の前で消えた愛した人をなぞるような行動をいつまでもやめることができないでいるのは、いつか彼が忘れ物を取りに戻ってくるのではないかという蜘蛛の糸より細い一縷の望みに縋っていたからだ。

太陽光を反射する紙面に目を焼かれて、眼鏡をずり上げながら目頭をもむ。その拍子にいつのまにかベンチの傍にいた子供の姿が視界に入った。
まっすぐ見上げてくる晴れた空のような澄んだ青い瞳に、冬の太陽のような淡い金の髪。その色彩に強い既視感を覚えて驚く。黙ったままのその子供のふくふくとしたまるくやわらかそうな輪郭は待ち人とは全く似ていないのに、彼が帰ってきたように見えてさらに驚いた。
「……え?」
思わず漏れたその声は、彼と初めて会ったときの第一声とまるきり同じだったことには、ギルベルトはしばらく気づかずにいた。