ヘタリア 普独
※ 現パロ
※ うさぷパロ





正式名『デミラビット』と呼ばれる、ウサギとヒトの子供を足したような生き物は最近ペットとして人気が上がっている。
この不思議な動物は、生態としてはヒトに近く、しかしウサギらしく機敏な動きをし聴覚が鋭く草を好む。大きさは3歳くらいの子供、もしくは中型犬くらいで、知能は賢く個体差にもよるがヒトの3〜5歳ほどで、ヒトの言葉は喋ることはないが理解する。性格は一般的におとなしく、人懐っこい。

――らしい。
と言わざるをえないのは、ルートヴィッヒが一匹のデミラビットを引き取るにあたって、ブリーダーである親戚から聞いたことにすぎないからだ。ほんのつい先日のことである。
「あなた、今暇でしょう」
「暇というか、会社勤務から自宅勤務に切り替えたから少しは時間の融通が利くようにはなったが……なんだ?」
「一匹引き取るか、せめてしつけ直ししてほしい子がいるんです。犬のしつけをしたことがあるあなたなら、と思いまして」
「デミラビットのことは全くわらかないがいいのか」
「基本的なことは私が教えます。あの子とはどうも相性が悪いみたいで、藁にも縋る思いなんですよ……」
ハァ、とため息をつくブリーダーのローデリヒは、ほんとうにほとほと困り果てているようだったから、ならばと思ってルートヴィッヒは了承したのだった。



人嫌いで暴れん坊でずるがしこく、言葉は理解しているのに言うことを聞かないと聞いていたデミラビット・ギルベルトを引き取ったときにはどうなることかと思ったが、ひとことで言えば「拍子抜けした」と言わざるをえない。
そもそも初対面からして気に入られたのか、その気に入られようといったら、ローデリヒの手を素早く振りほどきルートヴィッヒのもとに弾丸のように駆け寄ってきて、きらきら紅い瞳をまっすぐに向けてだっこをせがんだほどだった。
「まあ……これなら任せられそうですね」
そういったかの親戚の苦い顔はしばらく忘れられそうにない。

家に引き取ったあとも、ここに入ってはいけないというところには興味を示しながらも入らなかったし、してはいけないと言ったことは過失以外しない、とても聞き分けの良い子だった。どこにしつけ直しをする要素があるのかと思うほど。
懐っこさも尋常ではなく、抱っこをせがみおんぶをせがみ肩車をせがみ、ついには仕事中以外家にいるときはだいたい常にギルベルトがルートヴィッヒの背中にはりついてるほどにまでなった。時折肩越しにその銀の髪やそこから生えた耳を撫でてやると、機嫌よさげにぷすぷす笑うのが可愛らしくて、重いからどいてくれというのもはばかられたのだ。実際、重くないわけではなかったが、彼の頑丈な体では苦というほどのものでもなかったのでそのままにした。
しばらく知って知ったことだが、どうやら絵本程度だったら(文字を理解してるかどうかはわからないが)読むようだったので買い与えたら、かじりつくようにして読みだした。ルートヴィッヒがごはんだと呼んでも集中しすぎて聞こえなかったほどに。優先度が「本>飼い主」なのかと少々へこんでため息をつくと、そっちは耳聡く聞きつけて駆け寄ってきたのだけど。



そんな穏やかな日々が続いたある日、気分転換にギルベルトを連れて近くの公園に行った。デミラビットの好む野草のよく生える場所で、いつか連れて来たいと思っていながらも、仕事が少々立て込んでいて長く外出する時間がなかったのだが、やっと連れてこられた。
思った通り、ギルベルトはシロツメクサの群生を見た瞬間飛び出して行ってそこで遊びだした。
その背中を見ながら木陰で休んでいると、しばらくしてギルベルトがルートヴィッヒの元に駆け寄ってきた。
「どうした、もういいのか?」
頭をなでながらそう言うと、ギルベルトは、ぷぇ!と鳴きながら手にしたものを差し出してきた。それは、ちいさなもみじのような手で作られたとはとても思えないほどに立派な、シロツメクサで編まれた花冠だった。
「……!?これ、お前が作ったのか!」
ぷぇ、と鳴きながらギルベルトは頷く。そして受け取れと言わんばかりに背伸びして高く掲げながら押し付けるものだから、それを手に取って受け取ろうとすると、ぶー!と鳴いて首を振る。
「ああ、俺にかぶせたいのか」
身体をかがめてギルベルトの背でも届くくらいに頭を低くすると、たいそう満足げな笑顔で鳴いて、花冠をルートヴィッヒの頭にかぶせた。

ということがあってから、毎日ギルベルトはルートヴィッヒにプレゼントをするようになった。先日の花冠もそうだったが、ルートヴィッヒが友人に譲り受けた資料用の草花遊びの本や折り紙の本が、ギルベルトに渡した絵本の中に混ざっていたようで、そこから学んだらしいものが多かった。
あるときは草花で作った指輪を。あるときは折り紙で作った花や紙飛行機を。
嬉しかったためそれらをベッドサイドに飾っておくと、ギルベルトはたいそう喜んだ。が、毎日続くと置き場所もなくなってくる。別の場所に片付けようとすると、今度はギルベルトが悲しそうにする。
さて、どうしたものか、とたいして深刻にも考えず思っていると、ちょうどよくローデリヒから電話がかかってきた。預けた子の様子はどうですか、と。
行動も健康状態も問題はないが、最近これこれこういうことがあって、と説明する。途端、大きく息をのむような音が受話器から聞こえ、ルートヴィッヒは驚く。
「おかしなことなのだろうか」
「おかしいといいますか、デミラビットがそれを行うのは稀なので言いませんでしたが……。乱暴な行動から察しておくべきでした、あの子は先祖返りが強い子だったのでしょうね」
「何の話だ」



「――毎日相手に対して何かを贈る行為は、デミラビットの求愛行動なのですよ」





ふぉろわさまから頂いたリク「うさぷの話」でした。
どっかに収録した気がしてたけどみつからなかった……