ヘタリア 普独
※ パラレル(人間パロ等)ではありませんが特殊設定があります
※ 普がちょっときもちわるいモノローグしてますが実際してることは創作によくある範囲内です




ヴェストの足元がふらついている。目元にクマができて目もどんよりとしている。血の気も悪い。
疲労や心労だけでそうなってるわけじゃないのを、俺は知っている。と同時に、そこまで我慢するくらいならさっさと言ってくれればいいのに、と思う。
ずいぶんとぼんやりした顔で夕食を口に運ぶヴェストに、俺は言う。
「なあヴェスト」
「……なんだ、兄さん」
ほら、反応が鈍い。
「喉乾いてんだろ。あとで俺の部屋、来い」
そう言うと、ヴェストははっと目を見開いて、違うだのなんだのと言いかけながら口をはくはくさせてから、少し俯く。
「バレてたのか」
「おう。お前分かりやすいからな。っていうか、そんなにひどくなる前に言えっていつも言ってんだろ!」
するとヴェストはゆっくり首を振る。
「兄さんに負担をかけることだから」
お前にあらゆるものを与えるのが俺の歓びなんだから、負担だなんて思ったことはないのに。何度だってそう言ってるのに。それでもヘンに遠慮しいな俺様の愛する可愛くて可哀そうな弟は、ぎりぎりまで俺に頼ろうとしない。
「気にすんなって」
言いなれた言葉を口にすれば、ヴェストはまたこくりと頷いたけど、分かってないんだろうなあ。

夕食後、シャワーを浴びてから部屋で待っているとノックの音がした。
「入れよ、準備できてるぜ」
するとすまなさそうな顔でヴェストが入ってくる。ほら、やっぱりわかってない。でも「気にしない」ことなんてこの義理堅くてクソ真面目な弟には無理な話なんだろう。
「ちょ、兄さん!なんで服着てないんだ!」
「着てるだろうが、下は。今日は首いくんだろ、食いやすいようにしてやったんじゃねえか。ほら、こいって」
そう言ってベッドに腰かけた膝をぽんぽんとたたいて見せる。ヴェストは俺の言葉に否定も肯定もせずに、しかめ面をしてみせた。けど、最終的には俺の誘導に従って俺の膝を跨いで座った。下品な言い方をすれば、対面座位みたいな形で。
俺の首筋をヴェストの指がなぞる。しばらくして位置を定めたらしく、ある場所で指がぴたっと止まった。
「ここ、いいか」
「おう」
するとその指があった場所をべろりと舐められ、直後、犬歯がぶつりを首筋の皮膚を貫いた。


ヴェストがこんな吸血鬼じみたことをするようになったのは何故だろうかと、こういうときいつも考える。
少なくとも昔はこんなことはなかった。俺と同じものを食べて満ち足りた顔をしていた。
やはり契機はあの分断だったのだと思う。統一時俺もあいつもボロボロに体調を崩しまくってた頃、ヴェストはしきりに喉の渇きを訴えていて、でも水もジュースもビールもその飢えを満たすことはできなかった。
そんな頃、どうにかこうにか俺は飯のひとつでも作ろうと包丁を持って、すこしふらついて指を切った。絆創膏どこにあったかなと家をうろついていたとき、俺の怪我を見たヴェストがぼうっとした顔のまま俺の指を口に運び血を啜っていたのが始まりだった。
ヴェストの渇きを癒せるのはどうやら俺の血だけのようだ、ということを知ったとき、全身に駆け抜けたのは紛れもなく歓喜だった。東ドイツという役割を終えた俺は愛する弟に食われて統合されひとつになる。それがあるべき姿だと思った。
けど、どういうわけか俺はまだ生きているしヴェストは俺の血を定期的に求めている。それもまたありだと思う。献身なんて俺のガラじゃあないが、ヴェストに関しては別だ。ヴェストを生かすために俺が生きてるって、やばいぐらい幸せだと思う。
ヴェストのためなら血液タンクにでも自然再生する食肉にでもなってやると思ってる。それを言ったらヴェストは絶対悲しそうな顔で「そんなこと言わないでくれ」って言うに決まってるけど。


そんなことをつらつらと考えながらされるがままになっていると、じわじわと心地よさが首筋から背中をおりていく。血を啜ってる合間合間にハァとつかれる満足げな熱い息が首にあたったり、吸い口をべろっと舐められたり、飲み下すときにンッンッと漏れる声なんかがまた快感を煽る。きっとめちゃくちゃにエロくて可愛い顔してんだろうなあ、この角度からじゃ見えねえけど。
気持ちよすぎて勃ってきたのに、身体は血を吸われた影響でぐらりとふらつく。それをどうにか後ろ手で支えるとヴェストの唇がずるっと俺の首筋から離れた。
「す、すまない……!つい夢中になってしまって……」
言うヴェストの顔は、夕飯のときとは打って変わって、頬は鮮やかな桃色に彩られてつやつやとしているし、青い瞳は潤んでとろんとしている。あー、かわいい。エロい。抱きたい。けど、ちょっと今はムリ。今動いたらぶっ倒れる。
「大丈夫……とは言えねえけど、気にすんな」
ヴェストの肩を抱いて、そのまま横倒しになれば、ベッドのスプリングがぎしっと悲鳴を上げた。広くもないベッドに体格のいい成人男性が密着して寝そべるなんて、他の誰かとだったら吐き気がするけどヴェストとなら心地いい。
さりげなく膝をヴェストの股間に押し当てれば、そっちも勃ってることが分かってにんまりとする。
「なあ、今はちょっと無理だけど、ひと眠りしたらシようぜ」
言えば、腕の中に抱えたヴェストの体温がぽぽっと熱くなって、少し後に胸の中でこくんと頷いた感触がした。


ヴェストのためなら血だろうが肉だろうが臓器や目玉だってくれてやってもいいって俺は心から思ってる。
けど、こうやって煽られるだけ煽られたのに体力的な意味でお預けになるのはちょっと辛いなって思ってるのは俺だけの秘密だ。






「国でありながら特殊設定のある普独」というお題でかかせてもらいました。特殊設定と聞いて真っ先に吸血鬼属性つけるといういにしえの腐女子らしいベッタベタな発想をしました。しかしベタ=王道=萌える。