ヘタリア ユルモニ
※にょたりあ




女二人暮らしをしていると、時々服が混ざることがある。ユールヒェンの派手なTシャツがモニカの抽斗に入っていたり、モニカのタイトなジーンズがユールヒェンの抽斗に入っていたり。
ただ、こんなにサイズの違うものが混ざっているのは初めてだった。たぶん先日眠い頭で洗濯物を畳んで仕舞っていたいたからだろう。ユールヒェンはそれを目の前にかざしていた。つまり、ユールヒェンのものではありえない大きさの、モニカのブラジャーを。

「おお……」
感嘆しながらあらためてまじまじ見る。洗濯のときにさんざん見ていたはずなのに改めて見ると、大きさがすごい。
「ツークシュピッツェ……」
思わずドイツの最高峰の名がこぼれ出る。モニカの胸をツークシュピッツェとするなら、ユールヒェンのそれはちょっとした丘だ。山ですらない。別にその格差をどうこう思ったことは別にないけども。
そしてそのとき着替え中だっただったのもあって、ユールヒェンは思い立ってそれを自分の胸に当ててみた。アンダーは少しゆるいという程度なのに、トップはスカスカのかぽかぽで笑いすらこみ上げえてくる。喉の下に空のポーチを提げたような気分になったので、なんとなしにその隙間にリップを入れてみようとし、
「ねえさん、私の下着――」
ノックもなしに入ってきた妹の方を振り向き、たっぷり一秒見つめ合った。そして。
「わーーーーー!!!!」
「おわっ!?!?」
大音量の悲鳴に思わず驚く。
「ね、ねえさん、なに、を……?」
「いやさ、たまたまモニカの下着が間違ってここに入っててさ。なんか試してみたくなって」
「へんな思い付きなんかするな!」
そう言ってモニカは慌ててユールヒェンがつけてる下着を取ろうとする。気が動転しているのか正面からハグをする形でホックを外そうとし、慌てているせいか上手く外せていない。三つあるホックの一つだけ雑につけたせいで勝手が違って縺れているのだろう。
空いたカップがモニカの乳圧でかぽんと内側にへこんでいるのがおかしくてくつくつと笑うと、その揺れで更に背中で縺れる気配がした。
後ろにまわればきちんと見て外せるのに。そう思いながらユールヒェンは後ろ手にぱつんぱつんとホックをはずしてブラを上にずらす。するとユールヒェンの裸の胸とモニカのタンクトップを着ただけの胸が薄い布越しにぴったりと触れ合った。その感触に咄嗟に身を離そうとしたモニカの身体を、今度は逆にユールヒェンが抱きしめる。
「ヘンなことして悪かったよ、モニカ。おねえちゃんのこと嫌いになったか?」
「……そんなこと、ないの分かってるくせに」
「うん、わかってる。じゃあなんでモニカは恥ずかしがったんだ? 下着なんていつも見慣れてるだろ? 大きさが違うのも。なあ、なんでだ?」
最初はほんの思い付きだったけど、せっかくだからこの機会に少しでもほぐしてしまおうと考えた。彼女なりの適応戦術だ。
誘導に乗ってモニカはむにゃむにゃと唇を動かし更にもぞもぞさせてから、躊躇いがちに言った。
「私は、戦うために生まれた。姉さんと同じように。なのに、姉さんと違ってこんなに胸ばかり大きくなったのが少し嫌なんだ……単純に重いし走ると痛いし視界は悪いし服のコスパは悪いし、いいことなんか少しもない。だから、さっきみたいに、姉さんとの差や未熟さを見せつけられるのが嫌……なのかもしれない」
その言葉にユールヒェンは「そんなことだろうと思った」と笑った。
「確かにあたしは戦うために生まれた。元々は騎士団だったし、昔は自分を男だと思ってた。でもお前は違うだろ? 戦うためだけじゃない、あたしたちが譲った文化や豊かさの権化だ。だからモニカはこれでいいんだよ――いや、これ『が』いいんだよ」
そう言ってユールヒェンはモニカの胸元にぱふんと顔を埋める。しっかりと大きく盛り上がっているのに決して固くなくむっちりとやわらかくあたたかくユールヒェンの顔を受け止める。この包容力の化身のようなモニカの胸が、ユールヒェンは大好きだった。そのここちよさに思わずふふっと笑うと、頭のうえから「くすぐったい」と抗議の声があがる。
「今の技術なら胸を小さく切り落とすこともできるかもしんねえけどさ、モニカがそんなことしたらあたしもこの長ったらしくて鬱陶しい髪バッサリ切っちまうからな!」
「それはだめだ!」
思いの外大きな声が聞こえてユールヒェンははっと振り仰ぐ。するとモニカは顔を赤くして口を引き結びながらぐっと眉根を顰めていた。
「それは、だめだ……」
もういちど小さく言うモニカに、にいっと笑ってみせる。
「わーってるよ。モニカはあたしの髪梳くのだいすきだもんな! だからあたしはモニカのために髪伸ばしてんだし、ちょっといいトリートメント使ったりもしてるんだぜ」
言いながら自身の髪をするりとまとめてモニカの手元に誘導してやる。時々ぴょこぴょこ跳ねる髪があるのはもうそういうクセだけども、伸ばすとぐるぐる巻いて絡んでしまうモニカの髪よりはストレートでつやつやさらさらとしている。
「モニカがあたしの髪好きなように、あたしもモニカのおっぱい好きだんだよ。だからあんまり自分を否定するような言うな」
言えば、こくんと首肯する振動が伝わってユールヒェンはそっと笑う。
自分の胸が小さくてよかった。大きかったら愛する妹と正面から抱き着いたときに妨げになってしまうだろうから。そしたらこうやってあたたかな鼓動を感じるなんでできないに違いない。
世の中ってうまくできてるもんだなあと思いながら、ユールヒェンはモニカの胸元のやや内側にそっと唇を落とした。






ちっぱい姉さんときょぬーモニカというリクを受けて。
おっきいおっぱいはよいものである。