JOGIO5部(?) (スク)ティツ+(ペシ)プロ
※人物設定は原作に準拠ですが一種のパラレルです
※おそらく三次創作の部類に入ると思われます





目が覚めて一番最初の視界が、ティッツァーノの意識を急速に覚醒させる。見慣れぬ景色と聞きなれぬ音が、この場所が「スタンドタッグバトル」の会場であることを思い出させた。
ランダムに選ばれた面子が試合形式で戦いを行う「スタンドタッグバトル」は信頼できる救護班が控えているため命の危険はほぼ無いが、元来スタンドというのは闘争心の無い者には発現しないものだから、集められたほぼ全員がこのお祭り要素の高いバトルという名の遊びを楽しんでいた。もちろんティッツァーノもその一人だ。

「おう、起きたか」
テーブルの向こうからプロシュート――このバトルにおけるティッツァーノの相方兼主戦力――の声がした。ティッツァーノのスタンドは戦闘には向かない。だがタッグ片方のスタンドがほぼ戦力外というのは相手チームも同様で、拮抗した戦力の結果日付を跨いで今に至っている。
「朝飯できてるぜ。って言っても昨夜と同じ携帯食しか無えがな」
「知ってますよ。ふふ、なんか変な気分ですね」
「あ?」
「いつもはわたしが朝食を作ってからスクアーロを起こすので。彼、びっくりするくらい朝に弱いんですよ」
「なんだお前ら、高給取りの癖にルームシェアしてんのか」
そういえば暗殺チームは経費削減のために同居をしているとどこかで聞いた。共同生活ならではの苦労や諍いを思ってかプロシュートはその柳眉を顰める。ティッツァーノはひとつカミングアウトという名の賭けをしてみることにした。
「同棲と言い換えた方が正確ですが」
ぱた、と話が途絶え沈黙が落ちる。ティッツァーノが見遣れば、プロシュートがその長い睫毛をぱちくりとさせて固まっていた。
「……軽蔑しますか?」
「まさか!ウチんとこにも似たようなのはいるしな――『デキてんじゃあないか』な奴らはパッショーネに何組も要らねえとは思うが」
「だろうと思ってました」
「そうかよ…だったらよォ」
プロシュートの口角がニヤリとつりあがる。その様は普段舎弟に見せているようなクールで覚悟の決まったデキる男ではなく、有り体に言えばデバガメしたいおっさんの顔であった。
「ソッチのほうはどーなってんだよ」
「そっちにも似たようなのは居るんでしょう?」
「仲間に性生活訊くなんざ気まずいじゃねえかよ。聞かせたくない奴も居るしな」
「……聞きたいですか?」
「おう」
「無いんですよ。なーんにも」
「は?お前らデキてんだろ?」
「そうですよ。でも彼が全く手を出してこないものですから、ずるずると」
「マジかよ……。ヘタレだとは聞いてたがアレでもイタリア男か」
「…否定はしませんがあんまり彼のこと悪く言わないでくださいね。と、そこでモノは相談なのですが」
ティッツァーノはそこで緩めていた目元を鋭くする。それだけで言わんとすることを察したプロシュートはまたニィと企むような笑みを浮かべた。
「お前が有能な相方でいてくれたら、考えてやらんでもないぜ」
ティッツァーノの賭けは最上の形で良い方向に向かったようだ。
「なら、本気で今すぐにでも動き出さなきゃいけませんね。彼らももう何か策を講じてるかもしれませんし」
「それもそうだな。今日も頼むぜ、相棒」
手早く身だしなみを整えて、二人のギャングは白塵舞う戦場へ歩み出した。


++++++++++


「――それでは以上を持ちまして第2試合実況中継を終了いたします。ご観覧ありがとうございました」
実況を担当している少年の声がこのスタンドタッグバトルの終了を告げる。続けて観客席の騒動を静めるようなアナウンスもしてはいるが、疲労困憊したプロシュートとティッツァーノの耳には入ってなかった。スタンドパワーも体力も使い果たして、立ち上がりフィールドを辞する気力が沸かない。
危険勧告のアナウンスを押し切ってフィールドに一番最初に飛び込んできたのはスクアーロだった。そこで二人は今朝の約束を思い出す。
「私は『有能な相方』でしたか、プロシュート」
「そりゃあな。相方を蹴飛ばさないで仕事を終えられたのは初めてだ」
その言葉にティッツァーノは一瞬ぽかんとしてから、くすくすと笑う。それは比較対称が悪すぎると言いたくもあったが、プロシュートがその『相方』を溺愛しているのを知っていれば余計な差し出口を挟む理由は無い。むしろ言えば約束を反故にされそうだ。
猛ダッシュするスクアーロが、仲良くお喋りする(少なくとも彼にはそう見えている)二人に割り込むように駆け寄った。
「ティッツァ!大丈夫か!」
「見ての通りですよ、スクアーロ」
「あいつにヘンなことされてないか!」
「心配するのそこですか」
呆れるティッツァーノの目には隠そうともしない情が浮かんでいて、プロシュートは本当にこいつらデキてるんだなぁと感心した。同時に約束を果たすなら今だと確信する。いくら疲れていようと今できることを先延ばしにする性格ではなかった。
「ティッツァ」
あえて愛称で元相棒を呼んで手招きする。言われるままに寄ったティッツァーノの、その褐色の頬にプロシュートは口付けた。頬と言っても唇にごく近いギリギリの場所に。二人揃って硬直する様がおかしくて笑い出しそうなのをこらえ、次はスクアーロの耳元に口を寄せて言い聞かせるように囁く。
「有能で『個人的な』相棒は随時募集中なんだ。要らねえならアイツ浚っちまうぜ」
目に見えて青ざめたスクアーロを確認して、今度こそけらけらと大笑いした。気がつけば傍にペッシも来ていたからその肩を借りて場を辞する。立ち去り様に振り返ると、ティッツァーノと目が合って彼が笑顔で目配せした。その様子にスクアーロはさらにおろおろし、プロシュートは満足げに笑む。



「あの…兄貴ィ…」
「情けねえ声出すんじゃねえ、オメーが怪我してんじゃねえんだからよ」
「そういうことじゃなくて、いやそれも心配なんですけど、兄貴…その、オレ、まだまだ役立たずのマンモーニですけど、頑張って兄貴みたいなデキるギャングになりますから、えっと……」
「言いたいことあんならスパッと言え、スパッと!!蹴るぞ!」
言いながら早速蹴ろうとしたプロシュートは、バトルでの出血量がたたって一人で体重を支えきれずふらついた。ペッシはそれをとっさに支え、結果的にプロシュートを正面から抱きしめるような形になって、大声で訴える。
「兄貴の傍に居させてください!オレの他に相棒作るなんて言わないでください!」
体勢のせいで顔は見えないが、ペッシの肩は震えている。そこでようやくプロシュートは、スクアーロに言った言葉がペッシにも聞こえていたことを理解した。あれを間に受けるヘタレがここにももう一人いたようだ。第三者から見れば本気で言ってなどいないとすぐに分かりそうなものなのに、それを悟れないペッシに呆れるやら情けないやらでため息が出(それに反応してペッシの肩がまたおびえるようにびくっと揺れた)、そしてこっちのが甲斐性があるじゃねえかとにやつく気持ちも抑えられないでいた。なるほど、求められるというのも決して悪くない。
「馬ァ鹿、あんなん嘘に決まってんだろうが。オレお前みたいなマンモーニを放っとけるとでも思ってんのか!分かったらさっさと医務室連れて行け。痛え」
「すいません兄貴!」



そのすぐ後に、スクアーロが衆人環視の中でティッツァーノに熱烈なキスをして壮大な痴話喧嘩を繰り広げる姿が数多の人の度肝を抜いたのは、また別の話である。






某スレに萌えた結果がこれだよ!!
兄貴の包容力はいろんな人をめろめろにしてたらいい。