ジョジョ アヴ(+)ポル





タロットカードが鮮やかに混ざりきれいにまとまる。一見不器用そうにも見える褐色の厚い手が繊細にカードを操るのが意外で、そのくせイカサマのしやすそうなポーカーなんかは苦手だと言っていたのが面白かった。ポルナレフがそれを口にしたのはそんなことを思い出したからで、特に深い意味は無かった。
「俺、いろんな手ぇ見てきたけど、アヴドゥルの手が一番好きだ」
唐突な言葉に、アヴドゥルは手を止める。幸いなことに占いはちょうど終わったところだったから、集中力を切らせて占いをやりなおすようなことにはならなかった。
「何の話だ?」
「昨日さ、承太郎と花京院と同じ部屋にいたときに話したんだよ。承太郎の手はジョースターさんとそっくりだ。誰かを引っ張っていくパワーと魅力のある手だ。花京院は女みてーなのとは違うんだけど、細いな。んで少しぺんだこがある。まじめな学生の手だ。承太郎も学生のはずなのにそういう真面目さが全然ねえの。笑っちまったぜ」
ま、全部俺の勘なんだけどよ、と付け足したポルナレフの言葉に暗さは見えないが、そんな勘が何故伸びたかを考えればアヴドゥルの眉間に僅かに皺が寄る。
『両右手の男』、それがポルナレフの憎むべき仇敵だった。故に、ポルナレフには人の顔を見るよりも先に手の方に視線がいく癖があるのも、仇を討った今もその癖が抜けないのもアヴドゥルは知っている。
「アヴドゥルのは護りたいものを護れるって、そんな感じのする手だ。いいと思うし、憧れる」
それはお前が護れなかったからか、と口の先まで出そうになってぐっとこらえる。ポルナレフは自身の不幸を不幸と思わず努力を努力と思っていない節がある。それでこの好ましい性格が形作られているのだから、あえて見えていない部分を目の前に突きつける必要などどこにもないのだ。ただ、無意識に口頭に上るバックグラウンドの暗さを思い知るたびにアヴドゥルはいたたまれなくなる。
「見せてみろ」
アヴドゥルはほぼ強引にポルナレフの手首を掴み引き寄せた。
「な、なんだよ」
「やっぱりな。独学で頑固に鍛えていただろう、変なところにたこができている。治りきっていないうちから傷を何度も作った跡もある。こういう意志の強い手を持っているお前は、絶対何かを護れるようにできているんだ」
言うだけ言ってアヴドゥルはぱっと手を離す。ふぅん、と納得したのかどうか分からない相槌を打ったポルナレフは己の手を返す返す見つめ、握ったり開いたりを繰り返した。その様子は先ほどより上機嫌なのが顔に表れている。
「で、占い師からの見地とかは無いわけ?」
「生憎、手相は専門外でな」
アヴドゥルはさらりと嘘をつく。手相を見るつもりもないのに見えてしまった手相は薄幸と短命を示していたなどとは、占い師としても仲間としても言うべきでないのは自明だった。
アヴドゥル自身の手相も決して良いものではない。ただそんな手でもポルナレフが言うように護る力があるというなら、「これからお前を襲うかもしれない災厄から護ってやりたい」と思わずにはいられなかった。






カプで書こうとして挫折した結果なので、これは×なのか+なのか→なのか自分でも判断がつきません。
安西先生、ラブいのが書きたいです…