ジョジョ ホルイル
これの続きのようなそうでもないような





目を覚まして真っ先に視界に入った歪んだ世界にオレは硬直し、次の瞬間にこれは見覚えのある景色だと気づいてため息をついた。これは瓶の中の世界だ。またオレはホルマジオの前で眠ってしまったらしい。
そうだ、いいウィスキーが手に入ったって言われてあいつの部屋で飲んでたんだ。ガラスの向こうにグラスに入った琥珀色の液体が揺らめいている。
角度を変えればオレをこんなことにした犯人の顔が見え、様子がおかしいことに気づく。いつもは悪戯っぽいような笑顔でこっちを見ているのに、今はなんか切ないのを押し隠しているような、笑顔を作ろうとして失敗しているような顔をしていた。
「おい、出せよ」
言ってみたけど聞こえてないみたいで、ホルマジオも何か言ったようだけど聞こえなかった。だけど「ごめんな」と言っているように見えた。
「ごめんな おまえが すきだ」
動いた唇の形にオレは目を疑う。見間違いや勘違いかと思ったけど、熱っぽく潤んだ瞳は他の事を言っているようには思えなかった。じっと注がれる焦げ付きそうな視線に体の内側から熱くなる。
「あいしてる ずっとまえから」
「オレも!ずっと好きだった!」
応じるように叫んでみたけど瓶の中にだけ響いて外に伝わらない。聞こえない。オレが小さすぎて何を言っているのか分からないみたいだ。オレにはホルマジオの言葉が分かるのに。
ホルマジオが自嘲するような笑みで口元を歪める。手が伸びて瓶ごと引き寄せられた。そしてまた唇が聞こえない言葉を紡ぐ。
「ごめんな」
やめろよ、お前のそんな顔見たくない。オレの言葉だけ伝わらない。
オレは立ち上がって、瓶を掴んだホルマジオの指に口付けた。ガラス越しだから固くて冷たい感触しかしなかったけど、これでオレの気持ちが伝わればと思った。見てくれていただろうか。
わざわざ閉じ込めなくてもオレがお前から逃げたりするはずないのに。その口から直接もう一度同じ言葉を聞きたいのに。ほんの数ミリ先にある手の平の温度を感じたいのに。オレだって愛してると伝えて抱きしめたいのに。全てを遮断するこのワイン瓶がもどかしい。
なあ、出してくれよ。そんな顔しないでくれよ。
想いが伝われば、とオレはもう一度ガラス越しに手の平へ懇願のキスを落とした。






「閉じ込める」「ガラス越し」を本気で考えてみたらこうなった。双方(特にマジオ)誰だテメエ状態でほんとうにすいません。