ジョジョ5部 ペシプロ





うつらうつらしていたペッシはドアが開く音で目を覚ました。ぼんやりしていた意識を音源のほうに向ければそこにはペッシが兄貴と慕う男が不機嫌そうに立っていた。
「ベッド空けろ。端に寄れ」
「ど、どうしたんですかい」
少々うろたえながらもプロシュートの時折横暴な指示に慣れていたペッシは言われたとおりに行動する。空いたベッド半分弱のスペースに体をねじ込みつつプロシュートが言うには一言。
「クーラーが壊れた」
ペッシはそれで全てを納得しかけ、
「Buona notte」
「Buona notte,兄貴」
あまりにも当たり前かのごとく出来上がった状況の異常さに気づいた。
「あ、兄貴…?」
一度寝入ったら時間まで起きないことを知りながらそっと呼ぶが、薄蒼い瞳が再び姿を表すことは当分なさそうだった。

ペッシは消し飛んでしまった眠気を呼び戻そうとしながら、瞼は閉じずに闇に目を慣らす。色彩までかなり分かるようになってからプロシュートの方を向くと、真っ先に冬の太陽のような淡い金の髪と、それと同じ色の長い睫毛が見える。いつも結っている長めの髪は今は解かれ一筋頬に落ちていた。
改めて、綺麗なひとだなぁと思う。
普段起きているときは、もちろん有能だけどがさつでおおざっぱだしすぐ怒鳴るし足癖が悪いしおよそ女々しさのかけらもないひとだけど、時折見せる眉間に皺の無い今のような表情は同性だと分かっていても見惚れてしまう魅力があった。
立っているだけでキマる人なんて雑誌の世界にしかいないと思っていたから、初めてプロシュートに出会ったときは、このひとがギャングで暗殺者で教育係だなんてとびっくりしたものだった。自分の容姿が決して見目良いものではないと知っていたペッシはあるとき訊いた事がある。
「オレなんかを連れてて、邪魔に思ったりしないんですか?」
オレ兄貴みたいにかっこよくないし、と小声で付け加えると、プロシュートは呆れたように諭した。
「ペッシよぉ、オレの能力は知ってるな?人間も動物も植物さえ『老化』させる能力だ。赤ん坊だろうと美女だろうと、誰でも無差別にみんな、だ。分かるか?オレにかかればどんなに見た目が良かろうと悪かろうと皺くちゃのジジババだ。だから顔が良し悪しなんて関係ねえ!『中身』がデキた、覚悟の決まった強い男になれペッシ!お前にはそれだけの器がある」
このときも額同士がくっついた超至近距離で語られ説得されかけたのだが、それは結局プロシュート自身の持論であることに気づき、ペッシは未だに「自分がプロシュートの傍にいることで彼の外聞や評価を下げているのではないか」と思っている。
しかしそのときに感じた、元気がでるような高揚するような、それでいて心が落ち着くようなどきどきした気持ちはずっとあって、それが元でプロシュートから離れられないでいるのを自覚していた。
「やっぱダメだな、オレ…」
早く成長して一人前にならなきゃいけないのに、こんなにきらきらしてかっこいいひとが傍に居ることを許してくれるなら、可能な限り居たいと思ってしまう。そんなところがマンモーニなのだろう。

もう一度プロシュートを視界に映してから瞼を下ろす。どきどきした気持ちは依然変わらないが、眠気も大方戻っていた。
起きたときに真っ先に見えるのがこの太陽のような金髪と大空のような瞳ならば、きっと今までで一番いい朝になるような気がした。






タイトル拝借元:創作者さんに50未満のお題
無自覚恋心弟分。マンモーニであることよりも外見についてのコンプレックスがあるといい。そしてペッシの口調が本気で分かりません。
後編(兄貴編)に続く to be continued…