ジョジョ5部 ペシプロ
これ(舎弟編)の続き
※かなりぼんやりとだけど兄貴過去捏造があります






朧気な意識の中でプロシュートはキスをしていた。挨拶や子供のようなものではなく、舌を絡ませ歯列をなぞり官能を呼ぶキスを。
視覚で相手は認識できなかったがこの慣れ親しんだ腕の太さは間違えようも無く、プロシュートの弟分。
何故そんな状況にいるなんて疑問は一切沸かなくて、このマンモーニがいつの間にこんなキスを覚えやがったんだという疑問ともっと続きをしたいという欲求がプロシュートを飲み込んで離さない。煽るようにさらに深く口付ければ、それに応じるように背中に回された腕が腰まで下りるのを感じ――



――そこで目が覚めた。
真っ先に視界に入ったのがさっきまで包まれていた腕と同じでひどくうろたえるが、すぐさま眠る寸前の行動を思い出して一息つく。自室のエアコンが壊れてからこっち、毎日ペッシの部屋で眠っていたのだ。そのことにやましい気持ちや狙った行動など一切無い。暑い部屋で安眠など望めるはずもなかったし、ペッシなら断らないだろうと思った、それだけだった。
それなのに、先ほどまでの夢はあまりにも衝撃的で、実際にはなかったはずの感触が唇に残って離れない。再び眠るなんてできそうにもなくてベッドから出れば、動悸で火照った体を冷風が撫でた。



その日の任務はいつもどおり怪我もミスもなく滞りなく終わった。ただ随分と遅い時間だったために電車もなく、現場の近くで泊まることになった。
「別々に寝るの久しぶりっすね」とペッシに言われながら消灯し、プロシュートは全く眠気が来ないことに愕然とする。短期間とはいえ毎日あった習慣がなくなっただけで生活に支障をきたす体になっていた。
(一体オレはどうしちまったんだ…)
1mほど離れたベッドからかすかにでも寝息が聞こえる静寂の中、思考回路は自ずと彼へ向かっていく。
ペッシは大事な弟分だと思っていた。短気なプロシュートには5分と耐えられそうにない釣りという趣味をもっているところや、図体だけでかくなった気弱な子供のようなところや、それでいて言うほど愚鈍でもなくさりげない気配りが出来るところはつくづくプロシュートと真逆な弟分だった。自身を過小評価しがちだが、臆病であることは逆に言えば慎重さであるし、スタンド能力だって上手く使えば即死性の高い暗殺向きだ。まだまだ教育しなければならないところはあるが成長性のある男だとは思っていた。
そかしそこで今朝の夢が思い返され、恥ずかしさや照れ以外の感情も混ざって再び体がかっと熱くなる。あれの続きを欲していた自分を否定できない。
振り返ってみれば年端もいかない頃からギャングの世界に身を投じ、強くあらねばならないと恋愛感情など真っ先に切り捨てて生きてきた。そもそもそういった感情を向ける相手も居なかった。今のこの心がざわつくような不安定な感情を恋と呼ぶのなら。
(この歳で初恋なんざ、笑い話にもならねえ…)
プロシュートは大きくため息をつく。結局その夜は一睡もできないまま朝を迎えた。



列車のコンパーメントのひとつを占領し並んで腰を下ろしてから、ペッシが心配そうに声をかける。
「兄貴、大丈夫ですかい?」
「たいしたことねえ。ちょっと疲れが残ってるだけだ」
一晩眠れない間に考え抜いてもまだ心がざわつくような高揚するような感情の整理はつかない。女々しい感情をペッシに見せるわけにはいかないという矜持と、隣に居るだけで訪れる安心感を求める心は揺れ動いていた。
「今眠っておきます?着いたら起こすんで」
プロシュートは元来問題を先延ばしにせず、即解決しようと動くタイプだ。しかし今この場で急速に訪れる眠気に抗う気力はない。だから――
「ああ、頼んだ」
勝手にペッシの肩を借りて目を閉じる。とりあえず全てを目覚めた後の自分に丸投げすることにした。






自覚した兄貴。自身と全てが真逆だからこそ、今までにいなかったタイプだからこそ惹かれるものがあればいい。
最期がほぼ同じ場所だったからか、ペシプロには「一緒に寝る(性的な意味ではなく)」というイメージが重要なファクターとして根底にあります。