ジョジョ5部 ブチャアバ





「おつかれさん、ブチャラティ」
静かになったアジトに低い声が響いた。
「別に疲れてなんか――」
言うブチャラティの口から大きな欠伸が出る。
「やっぱり疲れてんじゃねえか。人望がありすぎて大変な奴なんて初めて見たぜ」
「ここ2,3年はこうだな。今年ほど賑やかなのは初めてなんだが……本当に、当人が忘れてる誕生日をどうして周りは覚えているのか不思議になる日だ」

27日になった瞬間にクラッカーと祝いの言葉を同時にチームメンバーに浴びせられ、いつもどおりに巡回をすれば旬の花や手作り菓子などを担当区域の人々から贈られる。それはアジトに戻る頃には一人じゃ持ちきれない量になっていて、半分持たされたのはアバッキオだった。帰れば夜に誕生日パーティーと称した飲み会が深夜まで行われて今に至っている。
テンションを上げすぎて飲み潰れたナランチャはフーゴが叱り飛ばしながら家まで連れていき、ミスタはつまみが切れたときに「もっと食べたい」と騒ぐピストルズを宥めながら帰った。

「それだけあんたが生まれたことを喜び祝いたい人が居るってことだ。オレも含めて、な」
「ん、ありがたいことだ。――それで、お前からのプレゼントはないのか?」
「ああ?あるだろうが、ここに」
アバッキオが軽く掲げて見せたのは封の空いた白ワインの瓶。それを2人のグラスに注いでちょうどその瓶は空になった。
「今晩のために持ち寄ったのかと思った」
「結果的にそうなったな。オレが好きなのを3本くらい持ってきたのに全部あいつらに飲まれちまった」
こんなことになるなんて思ってなかったからな、とアバッキオは呆れたように笑うが、ブチャラティはむくれている。
「納得いかないぞ」
「ワインだったらまた買ってやるよ。また一緒に飲めばいいじゃねえか」
「確かに…じゃなくて、『誕生日』にほしいんだよ、オレは」
「忘れてたくせに」
「それは言うな」
「しょうがねえな、本日の主役は何がお望みなんだ?ポケット漁っても切れかけたライターくらいしか出てこないぞ」
他になにか、と探そうとするアバッキオの顔を捉えブチャラティは唇を奪う。ちゅ、という音が静かな部屋にやたら響いて聞こえた。
「ここに特上のプレゼントがあるのを忘れちゃあいないか?」
「アタシがプレゼントよ、ってか。発想がオッサン臭いぞ」
アバッキオは苦い顔だがその頬は赤い。
「いいじゃないか、今日またひとつオッサンに近づいたんだからな」
「そういう問題じゃ……まあいい、じゃあテーブル片付けたら帰るか」
「今じゃだめなのか」
「馬鹿言うな」
空き瓶を抱えてキッチンへ去ろうとするアバッキオが不意に足を止める。
「どうした?」
「いや、――改めて、Buon Compleanno,Bucciarati」
今度はアバッキオの方から顔が近づく。唇が触れた瞬間時計が0時の鐘を鳴らした。






ブチャおたおめ突発SSとして9/27に日記に先に上げたものでした。
はいはいありがちありがち。