ジョジョ5部 ペシプロ





「退屈だ」
「だから止したほうがいいって言ったじゃないっすか…」
プロシュートはそうぼやいてペッシは苦笑している。
オフの日、ペッシが毎度のように釣りに行くのに興味を示して、ついていくと言い出したのはプロシュートの方だった。仕事だろうとそうでなかろうとほとんど四六時中一緒にいる二人がこれまでそのときばかりは別行動だったのは、プロシュートが短気なのを二人とも重々承知していたからだ。
「帰ります?」
「いや、いい」
釣りには釣りの楽しみがある。魚に対して策略をたてて能動的に釣るのもいいし、ただ天気のいい日に海辺でぼーっとするのもいい。それこそ、鉤も餌もない縫い針を水にぶら下げて考えに耽るということすらペッシは楽しめるクチだった。ただそれには向き不向きがあるのだ。
一緒に釣りをしようとして3分で飽きたプロシュートはペッシの背中にもたれかかってげんなりしている。言葉の端々が間延びしているからそうなんだろう、とペッシは推測した。
「こういう日ってよォ……どっか出かけたくなんねーか。旅行とか」
飛び出したそんな台詞にペッシは少しぎょっとする。思いついたら即行動のプロシュートがifの話をするのは珍しい。
「昔仕事でスペインに行ったが、アンダルシアのヒマワリ畑は壮観だったぜ」
「そうなんすか。オレ、国外出たことないんで……」
「そのうち嫌でも行くことになるだろーよ。ペッシぃ、お前行きたいとことかあるか」
「行きたいとこ……」
ペッシは暫し思案する。プロシュートについていって仕事としてイタリア国内はあちこち行ってきたが旅行などは考えたことなどほとんどなかった。その中には観光地だってたくさんあったはずなのにそういう発想がなかったのは偏に、暗い仕事であろうとも今いる場所が心地よくて抜け出す気にならないからだと思った。
「そっすねぇ……オレは、兄貴がいるところならどこだろうとそこが一番っす――おっ、かかった!」
糸をひく感触がしたと同時にペッシはそちらに集中し、プロシュートが黙り込んだことに気づかない。
「……ったく、言うようになりやがって」
「よしっ!――何か言いましたか、兄貴?」
「頼まれたって離れてやんねえぞ、ってこった」
「へへ、ありがとうございます」
「妙な奴だな、おめーは」
「そうですか?あ、食べれるモン釣れたんで今晩はマリネにしようと思うんすけど」
「おう、任せた」
「はいっ」

寄り添う彼らを撫でる風はあたたかで優しく、傾きかけた太陽も波の音も穏やかだ。明日になればまた誰かの命を奪いに行くふたりにも、そのとき確かに平穏が訪れていた。






タイトル拝借元:創作者さんに50未満のお題
一度ならず二度三度それ以上やっても楽しい「恥ずかしいセリフ禁止!」なネタでひとつ。お互いに相方離れできない暗殺者でもいいじゃない。