ジョジョ5部 (ペシ)プロ+リゾット





懐から何かを取り出そうとして、無いことに気づき舌打ちをする。
そんな動作を2,3回も見せられれば、いかに「鈍い」と揶揄されるリゾットでも、プロシュートの機嫌が悪い事は察せる。基本的に両者とも、仕事の打ち合わせの際には私語をはさまないクチではあったが流石に指摘せざるをえないと思っていた。
「煙草が切れたなら買うか、誰かに貰いに行けばいいだろう」
言えば、プロシュートは眉間の皺を一層深くする。
「メローネのは妙なフレーバーがついてて吸えたモンじゃねえし、ホルマジオは禁煙中だとよ」
「あいつ、何度目だ」
「知るか。でも今回は本気だって言ってたぜ」
「そうか」
チーム内に喫煙者は、プロシュートを除けばその2人しか居ない。納得しかけて、リゾットはある可能性に気がついた。いつもプロシュートが煙草を切らしたときに、新しいものを差し出す者がいなかっただろうか。
「ペッシは?」
「女買いにいかせた。財布ごと渡したから補充もできねえ」
「そうか。――…はぁ?」
お使いにでも行かせたかのような言い方に一瞬流しかけたリゾットはその異常性に気づいた。
「今、何て言った?」
「ああ?女っつったろ。ペッシの野郎、童貞だって言いやがったから『金なら好きなだけくれてやるから飾り窓行ってこい』って言って追い出した」
「だからといって普通財布ごと渡しはしないだろう」
「俺はペッシを信用してるからな」
その豪快さも彼らしいと言えばそうかも知れないが、また別のことも気になっていた。普段他人を詮索するようなことのないリゾットとて、チームメンバーのことは気にかかるのだ。
「俺は、お前たちがデキているのだと思っていたんだが。その、することまでしていると」
「ほぉ、お前でもそんくらいは知ってんだな」
「チームリーダーだからな」
「デキてんのは否定しねえよ。だけどな、初めてが男とか、可哀そうすぎるだろ」
プロシュートの瞳に迷いのような影がさす。弟分を溺愛しているが故に、自分じゃどうにもならないことに葛藤しているのかもしれなかった。
リゾットはそれを見て、以前あったことを思い出した。この二人が思いを通じ合わせる以前のことを。

プロシュートをペッシの教育係に任命したのはリゾット自身だった。プロシュートが実は世話好きなことは知っていたし、実際それは上手くいっていた。『教育』にやや過剰な殴る蹴るといった行為があっても、だ。
しかし休日にまで弟分を引っ張りまわしす権利が教育係にあるとは思えずペッシに言ったことがある。
「プロシュートが兄貴分だからって、休日に荷物持ちまでしなくていいぞ。お前は使用人でも付き人でもないんだからな。聞く耳持たないなら俺から言ってやる」
その進言をペッシは笑顔で断った。
「いいんです。俺は兄貴が好きで、一緒に居るのが楽しくてやってるんですから。そりゃあキツいこともありますけど。でも大丈夫っす。気遣いありがとうございます」
プロシュートが呼ぶ声が聞こえ、ペッシはすぐそちらに駆けていった。問題がないならそれでいいんだとリゾットは思った。
二人が付き合っているらしいと知ったのはそのしばらく後のことだった。

リゾットが知る限り、ペッシは真面目だった。暗殺者としては肝心な『度胸』というものが足りなくはあったが、少なくとも性根は誠実で気のいい青年だった。それはつまり、感情の部分が器用ではないのだと思った。
「プロシュート、お前はペッシのことをもっと信じてやれ」
「はぁ?俺はこれ以上ないほど信頼してるぜ」
「もっと、心の面でな。――なんなら、賭けてもいい。ペッシは結局娼館には行かずに帰ってくる、に今晩の夕食全員分。更にお前が切らした煙草を買ってくるにデザートつき、でどうだ」
「ハッ!あいつが俺の言いつけ守らなかったことなんてねえんだよ!のってやろうじゃねえか」



その晩はチーム全員で豪勢なディナーを楽しんだという。当然、プロシュートの金で、だ。






タイトル拝借元:創作者さんに50未満のお題
「綺麗に結った金髪が素敵な美人先輩が、ときに厳しくときに甘ぁく、つきっきりでイケナイことを伝授しちゃうぞ☆」(注:兄貴のことです)という戯言から派生……原型はどこだ。