ジョジョ5部 ペシ(+)プロ





暗殺を生業にする者達は基本的に新聞を欠かさず読む。自分たちの仕事が確実に『発覚しない』で行われたかどうか確認するためだ。
完全犯罪たる殺人は、それ自体が発覚しないことが絶対条件である。スタンドを使った特異な死体なら尚更。衆目に晒されて警察の手が入ろうものならそれが組織の存亡を危うくし、ひいては自らの身の置き所に関わるからだ。

しかしプロシュートの場合、新聞を読むことにそれ以外の用途が存在する。

「おいペッシ、何か欲しいモンあるか」
朝のコーヒーを淹れていたペッシが、それを携えたままプロシュートの隣に座り、広げた新聞を覗き込む。
「あー……オレは特には。今日は何すか?」
「馬。大穴が当たると勘が言ってるぜ」
「オレ、いつも思うんすけど。兄貴ってもうひとつスタンド持ってるんじゃないかって」
「ハァ?スタンドは1人ひとつだって、オメーも知ってんだろーが」
「そりゃそっすけど……賭け事なんて大元が得するようにできてるはずなのに負け知らずって…」
公的でないカジノなど、彼らの属するバッショーネが管轄してることだって珍しくない。それらの施設は組織の収入源になっているのだから、そこで客が常勝ということはありえないはずなのである。
「運命を操作するとか、奇跡を呼ぶとか、そういう能力があるってか?――オメーにそういう力もあったらよかったけどなぁ」
後半は、いつの間にか発現させたグレイトフルデッドに向かって言っていた。当の本人(?)は首をかしげながら困ったように目を眇めている。言葉を口にできるのならば「ご期待に沿えなくてごめんなさい」といったところだろうか。
「そんな顔すんなよ、オレは今のままで充分なんだからな」
言いながらプロシュートは異形の腕をぽんぽんとたたく。それに応じるようにスタンドはぺこりと一礼してからフッと消えた。
「――オレは…スーツ新調するか」
「また?!もう置き場所無いっすよ!」
「…それもそうだな」
「あ、だったら飯食いにいきましょうよ。アジトの近くに雰囲気よさそうなリストランテ出来たの知ってます?」
「いや、知らねえな。そこにするか」
「じゃあ出かける準備しときますね」



いい加減お前もスーツ買え、とか、ドレスコードあるところじゃないんでいいじゃないっすか、などの声は言い合いではあるものの決して剣呑ではない。そうこうしてる間に休日の太陽はゆっくりと角度を増していく。






日記で上げた日常一こま小ネタに加筆修正。収入としての金回りはさほどよろしくないけど勘でどうにかする兄貴を支援し隊。タイトルは某山の巫女の能力から…