ジョジョ5部 ブチャアバ





後ろにカクンと引っ張られるような感覚にアバッキオは目を覚ます。
「なん…だ…?」
すぐには状況を把握し損ねて、寝ぼけた頭で思考すること数秒、ソファで転寝していたことを思い出した。眠いなら横になればいいのに座ったままだったものだから肩が痛む。
ふと、後ろから声がした。彼が一番慕う男の声だ。
「あ、起きたのか…先に謝っておく。すまん」
かなり憔悴したような表情でブチャラティはアバッキオのとなりにボスンと座った。なんとなく嫌な予感がして頭の後ろに手を回せばぼわぼわとした感触がし、髪が一部分だけ複雑に絡んでいるのが一発で分かった。
「一体何やったんだよ、あんた…」
「すまんと言っただろ」
「責めてんじゃねえよ。理由だ、理由」
「理由か……なんとなく、だな。せっかく長くさらさらした髪があるんだから、そのまま遊ばせておくのはもったいないと思ったんだ」
「それでこれ、か」
苦笑するアバッキオは本当に怒っていないようでブチャラティは拍子抜けした。
「自分の髪の編み込みは出来るのに他人のはできないなんて、変な奴だ」
「オレのは、こいつがいるからな」
言いながらブチャラティはスティッキーフィンガーズを発現させる。
「なるほどな……ってことは、自分のスタンドより不器用ってことじゃねえか」
「べ、別にいいだろう!」
「スティッキーフィンガーズ<そいつ>でコレを解くことは?」
「恐らく無理だな。そんな気がする」
「そうか。流石に俺もブチャラティほど不器用じゃないにしても後ろ手でこれを解くのは難しそうだな」
「む、それは皮肉か」
「だから、怒っちゃあいねえって言ってんだろ」
言いながら、アバッキオはデスク周辺を探し回る。ブチャラティはそんなところに櫛もブラシもないのにと思っていると、アバッキオは目的の物を探し当てたようで「それ」を実行しようとし、ブチャラティは慌てて止めた後に、傍目にも分かるくらいに思いっきり不貞腐れた。



「そりゃあアバッキオが悪いぜ」
チーム内でド低脳と名高いナランチャにそう言われてアバッキオは表情に出さないながらも聊かむっとする。
「だってさ、すぐには解けないからってその髪を切ろうとしたんだろ?」
「ああ。ついでに短くするか、ともな。いい加減伸びすぎだ」
アバッキオがつまんだ横髪は重力に逆らう気も無いようにさらりと垂れ落ちる。それを見てナランチャは、長く溜息をついた。
「ブチャラティはアバッキオの髪が大好きなんだぜ。知らなかったのかァ?」
「はぁ?そんなの初耳だぞ」
「マジかよ!――オレもそうだけどさ、黒髪の奴はブロンドに憧れるし、その逆もあるんだって」
「そんなもんか」
「そーそー!だから謝ってこいって」
言いながらナランチャはアバッキオを急き立てる。ブチャラティをヒーローだと崇め立てるこの少年には自己弁護も歯が立たないだろう。
「分ぁったよ、オレが謝ればいいんだろ」
面倒くさそうに頭を掻けば問題の部分が手の平に当たってアバッキオは複雑な気分になる。まさか自分の髪がチームメンバーを無意識に巻き込むような大事になるなんて思ってもいなかったのだ。



問題の部分を切る許可を貰うどころか、ブチャラティがそれを隠す大きい髪飾りを探していたことをアバッキオが知って更に一悶着が起こるのはそう遠くない未来である。






「ブチャアバ(うまくいかない)」というリクエストでした。こちらは甘めver. 甘めというか……あほ?
ブチャの手はパルプン手、ってな感じの何気に欠点も多いブチャを支援し隊。