ジョジョ5部 ホル(+)イル
※ 何を思ったかn巡後パラレルで二人とも割と普通の職についてます





ぴーんぽーん、と間延びした音でイルーゾォはぼんやりと覚醒する。気がつけばその場所はベッドではなく床で、しかし掛け布団はかかっていて、状況の理解に暫しの時間を要した。否、時間をかけても理解はできず、とりあえずそれは意識の外に追いやって、玄関の外にいる客を迎えることにした。
常ならば寝る前に解いているはずの髪は結ったままに眠っていたらしく、結ったまま絡まっているのを手櫛で確認し眉を一層顰めながら玄関に向かえば、扉を触れる前にやや乱暴に開かれその外には非常に見慣れた顔がそこにあった。
「よお、なんだ起きてたのか?」
「ホルマジオ」
「その様子だと起きたばっかってとこか」
悪鬼のごとく髪を振り乱し不機嫌極まりない表情のイルーゾォを見て快活に笑うことができるこの男は、『基本的に寝起きのイルーゾォは眠気が覚めるまで不機嫌な顔をしている』ということを充分に知っている程度には古い付き合いの仲であった。地元の学校で知り合ったのに、双方一人暮らしをしている現在も近くに住んでるという縁でこうやってアポ無しで互いの家に訪れたりする関係である。とはいってもイルーゾォは基本的に引きこもり体質なため、今回のようにホルマジオの方が来ることが圧倒的に多いのだが。
「……それ、なんだ?」
イルーゾォはホルマジオの持っている大きめのダンボール箱を視線で指し示して問う。
「これか?俺の服とか洗面具とかそんなん」
「なんで」
「なんでって、お前……覚えてねえの?しょーぉがねぇなあ」
ホルマジオの苦笑に血の気が引く思いをし、イルーゾォは一気に覚醒した。
「俺、また何かやらかした…?」
「YesかNoかで言えばYesだけど、その前にこれ中に入れていいか?重くは無いけど邪魔だわ」
「あ、ああ…」
あー疲れた!と言いながら勝手知ったる他人の家とばかりにずかずかあがりこむホルマジオの背を、イルーゾォは強張った顔で見送った。



「で、なんなわけ」
イルーゾォはホルマジオの持ってきた私物の山を見つめながら訊く。問われた当人は勝手に台所で2人分のコーヒーを用意していて、本当にどちらが家主だか分かったものではない行動をしていた。
「どういうわけって…うーん、一緒に住もうって言い出したのはお前だぞ」
「知らねえよそんなの!」
「ちなみに昨夜な。記憶無えだろ」
言われれば、イルーゾォは肯定するしかない。事実だった。
「さらに言えば、言質はちゃんととってある」
片方の手にコーヒーと菓子を載せた盆をもったホルマジオは、もう片方の手で携帯を軽く掲げた。要するに録音してある、ということだろう。
「マジか」
「マジだ」
「本気の本気で?」
「なんなら、聞くか?」
「結構です!」
ホルマジオはよく冗談を言うが、ここまで生活を揺るがすような嘘をつく男ではない。第一、そんな嘘をつく理由がない。ならば真実なのだろう。真実だと分かってることを確かめるために、また1ページ追加された黒歴史を確認する勇気は、イルーゾォには無かった。
「締め切り前にお前の手伝いするようになって長いけどよ、毎回ああいう風になるの心配してたわけだ。俺もさァ」
『ああいう』というのは昨夜のような、睡眠不足続き+迫る締め切りで前後不覚状態になることである。そういうときに身の回りのことに手を貸してもらっている身としては、それを出されればぐうの音も出ない。
「スイマセン…」
「いや、謝ってほしいわけじゃねえよ?まあもうちょっと計画的になとは思うけど。――で、そこに同居の話がでれば『そりゃあ名案だ』って乗っかるしかないだろ」
「正気かよ」
「俺は正気だし、睡眠不足でも錯乱状態でもないぜ」
「ここ1人暮らし用の部屋なんだけど」
「必要な私物少ないから大丈夫だろ。なんとかなるぜ」
「布団とか…」
「後で寝袋持ってくるわ。明日か明後日にでも布団買おうか」
「あとは…えーっと…」
「それにこっちの方が職場に近い」
「……あっそ」
早々にイルーゾォは説得をあきらめた。ホルマジオが自身の決定を覆すことがそうそう無いのは昔から知っていた。ならばなるようにしかならないだろう。やっぱり無理だと気づけば出て行くだろうし、と高をくくっていた部分もあった。



こうやって、大の男二人(後に猫まで加わる)の長い同居生活が始まったのであった。






続くような締めくくりにしたけど別に続く予定はありません。
元ネタがあるにはあるけど……一応隠しておきます。