ジョジョ3部 マジシャンズレッド×シルバーチャリオッツ






「なあ、マジシャンズレッド触らせてくんねえ?」
「別に構わないが、どうした?」
不思議に思いながら発現させてみれば、ポルナレフはなにやら楽しげにぺちぺちと触った。
「すげー!なんか人間みてー」
「お前だって生まれつきのスタンド使いなんだ。スタンドなんてそんな物珍しいもんじゃあないだろう」
「チャリオッツってなんかこう、見た目無機物っぽいからさー、スタンドってそういうもんだと思ってたんだよ。こんな生き物っぽいスタンドはこっち入ってから初めて見たぜ」
言いながら、ポルナレフは触るだけじゃ飽き足らずハグまでしだした。少々熱いくらいの体温が気に入ったようだ。しかしアヴドゥルにしてみれば、あまりされ慣れていないスタンド越しの接触になんだかむずがゆい気分になる。
「こら、あんまりべたべたするな。くすぐったい」
「ん…?ああ、フィードバックかぁ。俺あんまりそういうの無えんだ」
「言われてみれば、武器や防具を持ったスタンドは私も初めて見たな」
「やっぱそういうもんかぁ。DIOんとこに居たときはあんまり記憶無えし、こっちに入ってむきむきのスタンドが2体も居て驚いた」

「あ、チャリオッツ触ってみるか?結構固いし冷たいぜ」
言いながら騎士の姿をを呼び出したが、当の本人(?)はマジシャンズレッドを視認するなり射程ギリギリまで飛び退った。あまりの勢いに射程距離の綱引きをするように本体が引っ張られる。
「何が起こった?」
「俺にもわかんね」
突如見せた謎の行動にポルナレフは首を傾げ、チャリオッツは慌てた様子で首を振るばかりだ。そんな光景にアヴドゥルが笑う。
「もしかしたら、マジシャンズレッドを怖がっているのかもな。香港でいじめすぎたか?」
するとポルナレフはかちんときたように声を荒げた。
「そんなわけねえだろ、俺が平気なのに!こらチャリオッツ、逃げんじゃねえ!」
甲冑の腰を引き寄せようとすると、チャリオッツは逆にポルナレフの襟首あたりを掴み、逆方向に引き寄せた。ポルナレフの体がまたずりっと動く。その勢いのまま、チャリオッツは本体を引っ張ったままアヴドゥルとマジシャンズレッドから距離を離していった。その構図は、駄々っ子を強制連行する母親のようで。
「どっちが本体かわかりゃしないな」
ぽつりと呟いて己のスタンドの方を見てみれば、やや上方にある猛禽の眼と目が合った。
アヴドゥルにとってスタンドとは「制御するもの」、更に言えば「制御しなければ取り殺されるもの」であった。だから、それが人に近い形であったにも関わらずコミュニケーションをとろうなどとは思ったことが無かった。自分自身に話しかけてるみたいで気恥ずかしかったというのも、多少ある。
でもポルナレフたちがあんな関係なら、こちらも類似した関係を築いてもいいのかもしれないと思ったのだ。
「彼らをどう思う?」
マジシャンズレッドは少し驚いたように瞬いてから、困惑したような眼差しで『彼ら』の行った先を見つめた。
「追うか?」
すると今度はぶんぶんと首を振り、また行った先を見つめ、肩を落とした様子を見せてから姿を消した。
いつもは力強く釣りあがっている眼差しが、消える瞬間の一瞬だけ哀しげに顰められていて、なぜだかそれがアヴドゥルにはそれが叶わぬ恋をしてる人のように見えてやるせない気分になる。
そして口を開いた。



「おい!もういいだろ!痛えって!」
ポルナレフがそう叫んでからもチャリオッツはしばらく本体をずるずると引っ張ってから、漸く止まった。
「どうしたんだよ?あいつが怖いのか?」
チャリオッツは首を振る。そして不意に蹲った。
「ほんと、どうしたんだよ…」
今まで無かった事態に動揺しながら、宥めるようにチャリオッツの頭に手を載せるとほんのりと温かかった。いつも固くて冷たかった白金色の甲冑が。
「顔があつい…?もしかして、照れてんのか?」
そう問えば、手元の熱が更に増した。それがなんだか、好きな相手に邪険にしてしまう子供のように見えて。
そして口を開いた。



「「お前ら、なにやってんだ」」

離れた場所に居る二人が、全く同じ言葉を同時に呟いたことは、彼らすら知らない。






スタンドのビジュアルとそれに基づく手触りを追求してみたかった。
甲冑や異形頭なんて、中二心をくすぐられざるをえない!