確恋01「百年の恋をも冷めさせてほしい」
ヘタリア 伊+ロマ→西





「歩き煙草してる人は嫌だよねぇ。傍にいると火傷しそうだもん」
「俺んとこじゃ結構見るけどな。でも子どもの目の高さに火種があるのだけは許せねえ」
「うわぁ怖いいい!」
「でもそういう奴って匂いや言動でわかんねえか?『冷める』前によ」
「言われてみればそうかも」
出演者がひっきりなしに喋っているテレビ番組の特集は『百年の恋も冷めるとき』。何気なくつけたときにそのような話題があったので、イタリアもロマーノもナンパを趣味にしている分いつの間にか見入って今に至っている。
「そういえば『百年の恋』って、例えなんだろうけど俺たちにはちょっと現実味があってどきっとしない?」
「ちょっと、どころじゃなくて現実に進行中だチクショー」
笑顔で訊けばロマーノは思いっきり不機嫌にむくれ、イタリアは小声でごめん、と呟いた。
「ってことはまた今日も進展しなかったんだ?」
「してたら今ここにいねえよ!ほんとなんであんなに鈍感なんだよスペインの馬鹿野郎…」
この場にいない相手に一通り罵声を捲し立て、ひとつ大きなため息をついてからロマーノは座っていたソファに倒れ込んだ。

随分と前からロマーノがスペインに片想いしているのをイタリアは昔から知っていた。それとなくアプローチしても気づいてもらえるはずもなく、何十年に一度のデレを捻出しても意識される気配もなくにこにこされ、ありったけの勇気を振り絞って告白しても「俺もロマーノ大好きやでー」と返されるだけ、らしい。
これで相談相手がフランスだったら下品な手つきをしてみせて「さっさとヤっちまえ☆」とでも言うのだろうが、イタリアはそんなことを言うつもりはなかったし兄にそんな甲斐性がないことは知りすぎているくらいに知っていた。そんなところばっかり似ている兄弟なのだ。

「もう何年経ってるの?」
「……わかんねえ。3世紀超えてるのは確か」
「そっかぁ……」
「あと何年経てばいいんだよぉぉ…」
クッションに顔をうずめじたばたし始めたロマーノに、イタリアは沈黙を返すしかなかった。イタリア自身の初恋はとうの昔に潰えている。その分の望みも託して、きっと冷めることのない百年の恋を兄には叶えてほしいと思っていた。そんなことまで口には出さないけれど。
「俺もナンパ失敗するから頼りないかもしれないけどさ、一生懸命サポートとか応援するから」
「……ありがとよ、ヴェネチアーノ」
デレをこんなところで使わなくてもいいのに、と少し笑いながら、イタリアはキッチンへ消えた。ロマーノの大好きなトマト料理を作る為に。
辛いことも悲しいことも、美味しい料理を食べれば少し忘れられる。そんなところも似ている兄弟だった。






周りの嗜好がトマト色になってきたので感化されてみるテスト。ジャガイモもトマトも同じナス科ナス属!
歩き煙草云々は某質問箱を参考にさせていただきました。