レイトンシリーズ ルーク×レイトン
※教授40歳・ルーク16歳の未来設定です





「レイトン先生は、ずるいです」
ルークがそう言ったのは、レイトンの40歳の誕生日パーティの翌日だった。『英国紳士』であることを心がけているレイトンにしてみれば謂れのない言葉だったが、続く言葉にすぐさま納得した。
「僕はやっとビールが飲めるようになったばっかりなのに、先生はもう40歳なんて、ずるいです」
「そりゃあ、ルークは私の旧友の息子なんだから、親子ほど離れていても当然だろう?」
「わかってますよ!わかってますけど…」
久しぶりに再会し16になったルークは手足も背も顔立ちもすらりと伸びた青年になりつつあるが、不機嫌にむくれる様子は出逢ったばかりの頃とほとんど変わってはいなかった。そんなところにまだ残る幼さを見つけて、レイトンは笑む。歳をとるにつれ変化を厭いつつある己に少しだけ気付きながら。
「ほら、これだから先生にとっていつまでも僕は子供なんですよ!24年の壁は、厚いです」
「そうだ、ルーク。年齢と言えばこんなナゾが…」
段々と下降しつつ雰囲気に気付き話題転換を図るが、ルークのジト目で遮られた。こんな子供染みた――しかし長年通用していた誤魔化しが通用しなくなるくらいには大人になったんだね、と声には出さず思う。
「……ねえ先生、いつになったら僕は先生を迎えにいけますか?」
「そうだねぇ、私が隠居するころ、とでも答えておくかな」
かつて魔人に怯えて引きこもっていたあの子供を外へ連れ出したとき、こんなことになるなんて考えてもいなかっただろう。意図していなかったとはいえ、ルークがここまで自分に執着するようになった原因は紛れもなくレイトン自身で、その罪悪に心が痛んだ。
「そうなる前に、絶対に――」
一言一言確かめるようにルークは言い、途中で切った。最後まで言わなくてもレイトンは彼が言わんとすることが分かっていた。ルークがレイトンに恋慕の情を抱いていることを、知っていた。

君のその気持ちは麻疹のようなものなんだ。
外を見てごらん、君が気に入るべき素敵な女の子は星の数ほど居るよ。
限りある君の青春を僕なんかに費やすべきではないんだ。

そんな言葉が脳裏に浮かんでは消える。そうやって諭さなければならないのは理解していた。
しかし、ルークのほとんど挑むような眼光に圧され、ついに言葉にできずにいた。
それだけではない、ルークのことを決して嫌いではないレイトンの心がそれらを口にするのを躊躇わせていた。

(こんな不毛な攻防が、あとどれくらい続くのだろう)
バースデイケーキの残り香の記憶が、苦々しくまたひとつ積み重なる。






4月ごろに書きかけてたものを仕上げてアップ。
可愛いショタには攻めの可能性を無限に感じます。