刀剣乱舞 小狐丸+髭切
※ 他ジャンルグッズの話題注意





「いつもご苦労様です、はい、印鑑ですね。ありがとうございます。はい、では」
近侍である小狐丸が宅配業者から受け取った荷物はさほど大きくもないが重い箱と、大人の身長以上の大きさがありつつも随分と軽い箱だった。
「またこれは…随分と両極端な」
「おや、宅配が来たのかな。僕でよければ運ぶのを手伝うよ」
声をかけてきたのは通りがかった髭切だ。
「なんとありがたい。ではお言葉に甘えて、片方お願いいたします」
「うん、任されたよ」
小狐丸は重い箱の方を、髭切は大きい箱の方を審神者の居室に運ぶ。
「大きさの割に軽いねえ。何が入っているのかな」
「おそらく『抱き枕』というものかと。ぬしさまが好んで買って集めておられるのです」
「だきまくら……?なんだい、それは」
「さて、私もよくは知りませぬ。ぬしさまの部屋にたくさん並べてあることぐらいしか……」
「そういえば主の部屋に入ったことがなかったな。ついでに見てみるとするよ」

ほどなくして二人は審神者の居室に着いた。
「鍵は?」
「かかっていませんよ。よっ…と」
小狐丸は両手で持っていた荷物を片手に持ち直し、空いた手で障子を開ける。すると、それを初めて見る髭切がぎょっとするような光景が広がっていた。
何せ、沢山の女性が服を乱してこちらを向いて立っていたのである。一瞬後にそれは布に書かれた絵だと理解したが、等身大の人の絵がずらっと並んでいるのはなかなか圧巻であった。
「これはまた……」
「なかなかにすごいでしょう」
「これもこの蒐集物のひとつとして並ぶのかな。と思うと、どんな図柄の物なのだか気になっちゃうね」
「言われてみれば。このような大きな箱が部屋にあっても邪魔でしょうし、代わりに開封して箱は処分してさしあげましょう」
「うん、そうしようか」
平安生まれの彼らの辞書にプライバシーの文字はなかった。
「たしかこのあたりにカッターがあったはず」
「どうせ処分するなら破いてしまおうよ」
言うなり髭切は乱雑に箱を開封した。
「中身が傷ついたらどうするのです!――うん?これはまた随分と」
「かなり趣が違うね?」
そこに描かれていたのは、目つきが悪く男とも女ともしれぬ全身真っ黒な人間だった。なぜか血まみれの細身の包丁もある。どういう状況なのだろうか。
なんとなく裏返せば、同じ人(?)が猫耳をつけてうずくまっている絵が描かれていた。
「こういったのもぬしさまの好み、なのでしょうか…?」
「どうなんだろうね…?」
ネタ枠という言葉も辞書にない二人はしばらく首をかしげていたが、ふと小狐丸ははっと顔を起こした。
「しかしこれが許されるなら私にもチャンスが……」
「どういうことだい?」
「いままでぬしさまは美少女抱き枕ばかり集めていらしたのですが、このようなよくわからないものも好みに入るのでしたら、私の抱き枕を作れば蒐集物に加えていただけるのではないかと」
「抱き枕は作ることもできるの?」
「以前無地の服に写真を写しているのを見たことがあります。その応用でできるのではないかと」
「なるほど。ああ、それなら僕もやってみたいな」
「髭切殿も?」
「僕が遠征に行っているときなんかに弟が寂しがっていると人づてにきいたからね。僕の抱き枕があれば少しは寂しくなくなるんじゃないかと思って」
「弟想いですね。名案だと思います。それでは早速」
雑多に物があふれている部屋から器用に小狐丸はデジカメを見つけ出した。
髭切も部屋を見渡すと、猫耳のついたカチューシャを見つけ出した。
「君はこれをつけて、この裏側の図柄をやってみたらどうだろう」
「良いですね。それでは髭切殿はこの表面で、ああ、他の抱き枕のように少し襟元を緩めてみてはどうでしょう」
「うん。背景は白い布で、格好はこんな感じでいいかな」
「もう少し腕を上に……はい、そのくらいで、撮りますよ」
マイペースな二人の撮影会および初めての制作活動は、突っ込み不在のまま最後まで執り行われた。


後日、髭切の抱き枕を受け取った膝丸が泡を吹いて倒れた一件は、奇しくも件の抱き枕の漫画のように『本丸抱き枕殺人事件』と呼ばれることになる。






お題は「小狐のかわいいはなし」「兄者も足して」「コナンの犯人の抱き枕」でした。
最後のがおかしい。おかしいけどそん時その話してたものだから……。ちなみに実際あります。画像検索してみてください。