米→独・学パロ 俺は今、ベッドの上で無意味にセイザまでして、過去最高に緊張している。 別に誰かとベッドを共にしているなんてわけじゃない。たったひとりだ。だけど、枕の上には好きな人の写真がある。今日手に入れたばかりの、ルイスの写真が。 トイレの蛇口のそばに忘れられていたデジカメを発見したこと、そしてそのデータを躊躇なく見たということは、俺の人生のなかで三本の指に入る幸運だと確信している。 そのデジカメの中にこの写真データを発見したときは思わず叫びだしそうだった。むしろ叫びださなかった自分を褒めてやりたいくらいだ。だって、密かに恋するルイスの、見たことのないはにかんだような笑顔がいきなり画面いっぱいに映し出されたなんて驚かないほうがどうかしてる。 でも、飛び出しそうな心臓を抑えながら一心にそれを見つめる俺を、忘れ物をとりに来たキクに見られたときはさすがに叫んでしまった。うっかり取り落としてしまったデジカメを拾い上げて、キクはその画面を見、真っ赤になった俺の顔を見、もう一度画面を見、「おやおや」と言って笑った。その人の心を見透かすような不思議ないろの瞳は、実際に俺の心を見透かしたらしい。 「これ、新調した新聞部の備品でして、その練習用に撮ったんです。お気に召したならこのデータ、現像しましょうか」 その提案に否やなんて言えるはずもなくて、そして知られてしまったなら隠すのもばからしくて、俺は無言でこくこく頷くことしかできなかった。 何かと痒い所に手が届くサービスをすることで密かに有名なキクは、あのデータ以外にも、複数枚写真を現像してくれた。部活の活動風景や部室でうたた寝するルイスの隠し撮り写真なんかもあって、その一枚一枚に全部どきどきした。 でも一番どきどきしたのはやっぱり最初に見たあの写真だ。こちらをまっすぐ見て、少し硬いけれど照れてはにかんだ顔が最高にかわいい。この笑顔で、あの低い声で、やさしくアルフレッドと呼んでくれたらどんなに幸せだろう。 その声音を頭の中で思い浮かべながらそっと写真に口づける。つめたくつるつるした無機質な感触がしたけども、それだけれ十分だ。写真相手にすらこんなに緊張してるのに、本物の唇のやわらかい感触に直接触れてしまったら今度こそ喉から心臓が飛び出て死んでしまう。ちょっと想像しただけでたまらなくなって、思わず枕の上の写真を放り投げてしまった。 すると、それとぴったり重なっていて気づけなかったらしいもう一枚の写真が現れた。目の前に裏返って落ちたそれをめくり、俺は息を呑む。 それは、汗ばんだルイスが体操着を脱いで素肌を大きく露わにしている写真。 今日一番の叫び声に、隣の部屋から抗議の壁ドンが聞こえ、はっと我に返る。 ごめん、マシュー。でもこれキクのせいだから。俺のせいじゃないから。 フォロワのアルッツ893さんのつぶやきに着想を受けて。 写真でキスの練習しちゃう片思いめりかかわいくない? |
普独・甘め 俺がクーヘンを焼いていると、兄さんが匂いにつられてダイニングまでやってきて、いつのまにかすぐ食べる気満々で準備していることがままある。 今日も後ろでごそごそやっているからフォークの準備でもしているのかと思いながら、焼けたクーヘンを切り分けてふとテーブルのほうを見て、思わず笑ってしまった。 椅子には兄さんがすまし顔できちんと背筋を伸ばして座っている。それだけでもなんだかおかしいのに、テーブルの上にはランチョンマットが兄さんの前とその向かいの席に延べられていて、ご丁寧にその脇にはナフキン、もう片側にはナイフとフォークが置かれている。ちょっといいところのカフェかホテルのように。 その唐突な雰囲気づくりがなんだか微笑ましくて、俺もその期待に応えねばと思ってしまった。 料理用のエプロンをはずし、代わりに黒い前掛けエプロンをつける。自室からリボンタイを持ってきて、ちょうど来ていたポロシャツの襟元に。下ろしたままにしていた前髪はワックスをちょっとつけてハーフアップにしてみた。 手を洗って、クーヘンを切り分けて、来客用のこじゃれた皿に載せ、運ぶ。 ウェイター風にした俺を見、兄さんは赤い瞳をくるりと丸くしてからすっと細めてぷすすと笑った。それだけでなんだか照れくさくて、気取った風のセリフを言おうと思った声音が少し上ずった。 「お待たせいたしました。ご注文のケーゼクーヘンです」 「ケセセ、ありがとな」 そう言って兄さんはさっそくフォークを突き刺し、一口口に運ぶ。おすまし顔がふわっと緩んで柔らかな笑顔になるのが嬉しい。でもその喜びは気取ったウェイターの顔の裏に隠した。 「美味え!実に俺様好みだ。やっぱりこのカフェのクーヘンは最高だぜ!そうシェフに伝えておいてくれよ」 率直な言葉に気取った仮面は早々にはがれ、思わず頬が緩む。でもこのごっこ遊びはもうちょっとだけ続けたくて、ぺこりとおじぎをした。 「ありがとうございます。シェフに伝えておきます」 「追加注文いいか?カフェラテを二つ、俺のはコーヒー濃いめで、もうひとつはミルク多めで。連れはそういうのが好きだからな」 『連れ』は目の前にいるウェイターでありシェフでもあるのだから好みなんて熟知しているのだけど、あえてそれを口にして好みの理解を示していると表現しているのがきっと兄さんの愛情なのだろう。 「かしこまりました」 そう言ってもう一つおじぎをして、俺はキッチンに戻る。 空いたランチョンマットに1ピースのクーヘンが乗った皿、テーブルには味の違うカフェラテ、そして特に説明もなく2ピース分欠けたホールのクーヘンを置いた。 そして俺は部屋に戻ってタイと前掛けをはずし、髪はオールバックにしてテーブルに戻る。 「お前が席外してる間に注文したの来てたぜ」 唐突なこのごっこ遊びはまだ兄さんの中で続いてるらしい。 「そうか」 早く食えよとせかす兄さんの視線に追われ、俺も一口。予想した通りの味が広がってほっと安心した。材料や焼き加減のミスは特になかったようだ。 「な、美味えだろ!シェフには俺様永久栄誉賞を進呈するぜ」 「それはさぞかし光栄だろう」 「おかわりまで置いてってくれるしな!最高だぜ」 そう言いながら兄さんは早々に皿を空にしたのかテーブルの上のホールを切り分ける。 このカフェごっこはいつまで続くのだろうか。乗ったのは俺だけども引きどころが見えなくて少し困る。 でもこんな休日も悪くない、と思いながら俺はまたひとかけらクーヘンを口に運んだ。 フォロワさまがたのやり取りでなされてた「おうちでカフェごっこする普独」シチュがとてもかわいくてですね…… 兄さんの謎のノリを時々拾う弟さん素敵だと思う。 |
普独・日常 煙と馬鹿は高いところが好き、なんて言われようとも高い場所というのはいつだって心が躍る。空を自由に飛ぶ鳥に焦がれて、人間はずっと空を目指して技術を磨いていたのだから、別に悪いことではないはずだ。 だからプロイセンはジェットコースターが好きだ。高いところを風邪を切って勢いよく滑走するのがたまらない。今乗っている観覧車は勢いも風もなくて少々物足りなく思う。 けどもドイツはあまりジェットコースターは好きではないようだ。思い返してみれば、プロイセンが嬉々として載っていた戦闘機もドイツはあんまり好きではなかった。 「ヴェストって実は高所恐怖症だったりする?」 「え? いや、そんなことはないが。というか、そうだったら観覧車なんて乗らないだろ」 「そうだけどさ。絶叫マシン苦手っぽかったし」 言えば、気づいていたのか、と言ってドイツは苦笑した。 「速度やスリルばかりに気が向いてしまうから」 「それがいいんじゃねえか」 「兄さんはそうだろう。俺はこうやって、じっくりと景色を眺めるほうが好きだ。――人類が雲の向こう側にも行けるようになって久しいのに、高いところからの景色がどこか幻想的に見えるのはなぜだろうな」 そう言ってドイツは窓の向こうに視線をやる。その景色に陶然として細められた青い瞳が傾いた日に照らされて柔らかく光る。美しい金の髪が、長い睫毛が、夕陽のいろを乗せて鮮やかなグラデーションをつくった。 その光景こそが見晴らしのいい景色なんかよりもよほど美しくてプロイセンは目を奪われた。誰にも邪魔されない密室で、一番の特等席でそれを見ることができる。観覧車の楽しみ方を今初めて知った、と思った。 遊園地にいる普独というお題で短文かかせてもらったもの。 兄さんは一度はルー〇ル閣下の助手席(?)に乗ったことがあるといいなと勝手に思ってます |
普独・日常 春が来て気温が高くなり日が長くなるとドイツではバーベキューの季節になる。わざわざ遠出しなくても、庭で肉を焼いて食べるだけで食卓での食事よりも不思議なほどに美味しく感じる。 「あー、やっぱこういうのいいよなあ」 プロイセンは肉を焼きつつ早々にビール瓶を開けながら、アウトドア用の簡素な椅子にだらんと腰かける。アウトドアといっても自宅の庭なのだけども。 ゆでたシュパーゲル(白アスパラ)を持ってきたドイツは兄のそのさまを見、拗ねたように口を尖らせた。 「乾杯しようと言ったのに、先に飲んでるのか」 「悪い悪い、ビール見たら我慢できなくてさぁ」 「まったく……」 からっと晴れた春の夜。明かりは庭に面したリビングから漏れる光と満月のみ。四月はまだ肌寒いけども、氷点下がザラだった冬に比べれば十分暖かいし、アルコールを入れてしまえばなんてことはない。 「ほらほら、ヴェストも飲めよ」 そう言って栓を開けたビール瓶を渡して、自分が持っていた瓶を軽くぶつけて乾杯をする。一口ビールを飲んだドイツは、拗ねていた口元をすぐさま緩ませた。 「ああ、美味い」 「だな。肉焼いといたから食えよ」 焼いた肉が乗った取り皿をプロイセンが差し出し、シュパーゲルを取り分けた皿をドイツが差し出して交換する。受け取ったものを食べ、「美味いな」といったのは二人同時で、そのことにお互い目を見合わせてくすくすと笑った。 主人たちの楽しそうな声と美味しそうな匂いにつられて三匹の犬たちも庭に出てくる。取り皿の肉が十分冷めてるのを確認して分け与えれば、美味しそうに食べていてさらに笑んだ。 庭で肉を焼いて食べるだけなのに不思議なほど美味しく感じる。きっとそれは冬の雲が退いて乾燥したさわやかな風も一緒に食べているからだろう。 旬のものは食べ物にしろ空気にしろ美味しいものだ。愛する人と一緒ならなおさら。 フォロワさまの短文リク「バーベキューするお芋」でした。 あちらはほんと春になるとあちこちでバーベキューしてるそうで……私はほとんどしたことないんですがそんなに素敵なもんなんですかね? |
普独・R-18 ぐちゃぐちゃと聞くに堪えない水音が耳朶を打つ。それが自分の後ろの穴からしているなんて考えたくなくて、ドイツはぐっと顔を逸らした。 必要な準備だとは分かっているけども、この時間はどうにも苦手だ。ナカに入った指がいいところに掠るたびに快楽を拾うのに、そのどれもが決定的なものにならず体温をあげるばかりで、じわじわと快楽に炙られている気分になる。早く熱く太いモノで突き上げてほしい。何も考えられなくなるくらい快楽の波で押し流してほしい。 ほぐすだけなら一人でできると何度だって言っているのに、プロイセンはそれを許さないのだ。曰く、俺の見てないところでそんなエロいことしてるとかヤに決まってんだろ、と。それに道具なんかより俺の指入れた方がお前もキモチイイだろ、とまで言われてしまえば否定もできなかった。 ドイツ自身男であることを嫌だと思ったことはないけども、こういうときばかり「もし俺が女だったら」なんて考えてしまう。そしたらこんな時間がかかるばかりの面倒事なんてないのに。そんな女々しい思考は育ててくれた兄たちに失礼だ、と自己嫌悪に陥る。 だからこの時間は苦手なんだ、そう思った瞬間プロイセンの指がまたいいところを掠めて甘い声が喉から漏れた。 「ヴェスト」 熱っぽくかすれた声が、彼だけの呼び名で弟を呼ぶ。逸らしていた顔を正面に戻せばぎらぎらとした赤い瞳で真っすぐ視線で射抜かれ、ドイツは不随意にナカを締め付けた。その動作がまた快楽を拾う。 「ん、ッ……く、ぁ……」 「またヘンなこと考えてるだろ」 叱るような責めるような視線に、嘘はつけない。けども本当のことも言う気になれなかった。 手持無沙汰にシーツをつかんでいた手を放し、だっこをねだるように前方に差し出す。 「だから、はやく……なにも考えられないように、してくれ」 ギリ、と噛み締めたプロイセンの奥歯が鳴る。 「ンなこと言うとやさしくしてやれねえぞ」 「それでいいから……にいさん」 はやく、と続けたかった言葉はひといきに貫かれた衝撃でかき消える。待ち望んだものがやっともらえた喜びに、ドイツの眦から一粒涙が転がり落ちた。 前戯されてるどいちゅさんが書きたかっただけだったと思う。 |