聞仲+幼少天化 俺っちは、親父と聞太師の背中を見て育ってきた。 背の高い二人のてっぺんには、感じは違うけど似た金髪があって、それすら俺っちの憧れだったさ。 「俺っちもきれいな髪がよかったさ」 「どうした、天化」 独り言を呟いたら聞こえたみたいで、近くに居た太師から返事があったさ。 「俺っちの髪はどこにでもある黒さ。親父や太師みたいな金髪がよかったさ」 このあいだ来たとても仙人には見えないジャージの人に聞いたら、変わった髪色の人は仙人骨があることが多いって言ってたけど、俺っちは違うみたいさ。 「なんだ、そのようなことを気に病んでいたのか」 聞太師は、「そのようなこと」なんて言われてちょっとむっとした俺っちの髪を軽く梳いて、 「黒髪と聡明な顔は賈氏殿譲りだ」 「…『そうめい』って?」 「賢い、ということだ。父親を目指すのも悪くはないが、お前の母君も才色兼美と呼ぶに相応しい立派な方だ。その彼女の息子であることを誇りに思いなさい」 そして俺っちの頭をくしゃとなでて、賈氏殿によろしく伝えておいてくれ、とだけ言って帰ったさ。 誇りを持てって言われたけど、やっぱり親父や聞太師への憧れは止まなくて、でも―― 「どうしたの?私の顔に何かついてる?」 「ううん、なんでもない」 誇りとかその前に、憧れる二人がほめるひとが俺っちの母さんでよかったなーってただ単純に思ったんさ。 作中で飛虎ばかり気にしてた感じのある天化だけど、かーちゃんのことも気にしてくれる子だといいな。 |
宝貝一人称・オリキャラ 気の遠くなるほど昔、私は『最初のヒト』に創られた。 彼らは、「武器は、守るべきものを守るためにある」と言った。そのように私を造った。 だが彼らはこの惑星と同化し、私を使う者は居なくなった。 それから永い時の中で私は眠った。 やがて私は発掘された。それ以降私に手を触れる者は、皆私を『支配』しようとした。もちろん私は抵抗した。支配はやがて他者への攻撃となる。それは私を造った者の意に悖るからだ。 しばらくして、その心を持たない者が私に近付いた。太険娘娘といった彼女は、私の存在する意味に気がついていた。そして私は彼女のものになった。 しかし、彼女は私を使わなかった。守るべきものを守るために、私を避けた。私の孕む危険性を知っていた。 そして私は箱にしまわれた。再び外界に曝されたときには――彼女はこの世にいなかった。 私は別の箱に入れられ、また永い間眠った。「誰にも使えなかった」という間違った称号を与えられて―彼女は「使えなかった」のではなく「使わなかった」のだ。 そして彼が現れた。 心なしか彼女に似た面差し、守るものがある強い信念、何より人を引きつける気高さ。私は瞬時に彼が主だと理解した。 本当に、本当に永い時を経て私は日の目を見た。 この世のはじまりより現在〈いま〉まで私が認めた主はただ2人。 性格は真逆だが、よく似た面差し、同じ気高さを持った、たった2人。 気位の高い宝貝の性格捏造 |
太乙+ナタク・ギャグ いつものように修行も兼ねて大暴れしていたナタクは、打ち所が悪かったのか足がもげてしまった。 そしていつものように太乙に治してもらったら、いつの間にか頭部に今までなかった物があった。ヘッドギアに口元まで届く管のようなのがくっついた奇妙な宝貝。体と融合してはいないが結構きつく、簡単には外れなさそうだ。 「これは…何だ」 すると太乙が、 「君が強い子だっていうのは私だって充分承知しているけど、いつもいつもどこか壊して帰ってくるものだから心配で心配で…。という訳で開発したのがこの宝貝!ヘッドギアには小型カメラ内蔵でラボにある受信機にライブ映像を送るようになっていて、同じくギアにあるスピーカーと口元のマイクは私の手元にあるインカムと繋がっていて24時間いつでも会話可能!つまりこれでナタクと私は一心同体」 その言葉が終わるか終らないかのうちにナタクはその新宝貝の管部分を握り潰した。 「あ゛ーっ!私の血と汗と『愛』の結晶がー!!」 「そんな『愛』は要らん」 引きちぎるようにヘッドギアを外し乾呻圏で止めをさして、ナタクは飛び去っていった。 数時間後、 「大きすぎたのがいけなかったのかなぁ」 ナタク監視宝貝の軽量化に腐心する太乙がいたそうな。 例の宝貝は黄巾力士についてる黒電話の進化形のつもり。 |
雲+白鶴・ギャグ 終南山にて。 「雲中子さま、雲中子さまー」 「おや、白鶴。どうしたんだい」 「元始天尊さまがお呼びです。十二仙と一緒に写真撮影だそうです」 「そりゃあ珍しい。だったら少しおめかしして行こうかねぇ」 「おめかし…ですか?」 どうにも彼には似合わない言葉だと思う白鶴をよそに、雲中子は奥の棚をガラリと開けた。 「こ、これは…」 そこにあったのは、夥しい数の白衣。ただし、留め具の色は様々で、それぞれの留め具と同じ色の帽子も揃っている。 「そんなに要るんですか?」 「まあね。ちなみに儀礼用の黒もあるよ」 と見せられたのは、モノクロカラーの白衣。 「……」 白鶴は、フォーマルでも「白衣」なんですね、という言葉は飲み込んでおくことにした。 完全版13巻ポスターネタ。 |
飛虎聞・ほのぼの 「こら!きちんと埃を払え。書類を開かずにまた戻すな。それでは虫干しの意味がない」 「そうなのか?」 「お前…」 からっと晴れた秋の日、太師の部屋には珍しく様々な書物が広がっている。 年に1度文官がばたばた忙しくする王宮一斉虫干しの日、太師の部屋では武官であるはずの飛虎までが作業を手伝っていた。 「なんで俺まで…」 「暇で力が有り余っている人材が自分から飛び込んできたのだ。使わない手はないだろう? わざわざこの日に此処に来たのが運の尽きだと思うんだな」 「そうだよな…。ってか、お前他にも仕事あるんだろ?こういうのは部下にやらせればいいじゃねーか」 「いつクビになるか分からない下官にその書類のような機密事項に触らせろ、と?」 聞仲が指し示した書面に目を向けると、国費の内訳や死刑囚の数といった、民衆が見たら不安を煽る要素にしかならないような情報がずらりと記されていて、飛虎は目眩を覚えた。 「そういうことか…。じゃあさ、紙を長持ちさせたり虫がつかないようにする薬って仙界にねぇの? どうせお前しか見ないんだから、人間界〈こっち〉に干渉したとかそんな話にはならないだろ」 「まぁ、それはそう…なんだが…」 急に聞仲の声が小さくなる。 「どうかしたのか?」 「私は…薬を作るのが…その…得意で…ない…からな……」 「ははは!何か作ってるつもりなのに途中で爆発でもさせたか?」 「っ!!? 何故それを知っている!」 「冗談のつもりだったんだけど…本当にやったのか?」 「………。」 聞仲は目を逸して黙す。 その沈黙は肯定を意味していた。 「ぷっ……ははは!ははははは!」 「な、何がそんなにおかしい!」 髪と仮面で表情は隠れているが、耳は真っ赤に染まり、声はうわずっている。 「ははは…ごめん、いや、まさか聞仲にそんな弱点があるなんて思ってもみなかったからさ」 「私にだって苦手なことだってある。私を一体何だと思っていたんだ」 「齢三百余歳の完璧超人」 「期待にそってなくて残念だったな」 「いや、完璧超人じゃくて良かったよ。その方が人間らしい……っていうか、可愛い」 「…………馬鹿者。余計なこと言ってる暇があったら手を動かせ」 「はいはい」 「フン」 聞仲を完璧超人だと思っている輩なんか山程いるに違いないから、誰かに言ってやろうか―― いや、こんなに可愛い反応を他の奴に見せるなんてもったいない。 俺だけの秘密にしておこう。 過去拍手お礼再録。 薬品を爆発させたり酔っ払って建物大破させたり、うちの聞仲はなかなかの危険人物です。 |