ポル+アヴ・あほ アヴドゥルが今日の宿の場所を教えると、ポルナレフが露骨に嫌そうな呻き声をあげた。 この旅は危険が伴う旅だ。できれば多少値が張ってもスタッフやサービスがいい宿に泊まるに越したことはない。不動産王のジョセフが居るので金銭の心配をしなくていいのは大いに助かるのだが、だからといって全ての決定権が彼にあるわけではない。仲間の意見はもちろん聞くのだ。 「どうした。なにか不都合があるなら聞くぞ」 いや俺の勝手な都合なんだけどよ、と前置きをしてポルナレフは言う。 「この宿、繁華街にあるだろ?」 「そうだな」 「どういうわけか絡まれンだよ、男に」 そりゃあそうだろう、とアヴドゥルは思う。ぴたぴたしたレザー地の体のラインが見えるような服で、更に仲間内で比較すればスマートな方であれ(逆にジョセフや承太郎の方が異常なのだとアヴドゥルは思っている)、鍛え上げた筋肉を惜しげもなく晒す高露出ならばそりゃあモテるだろう。そのテの人たちに。 理由が分かってない様子であるところを見ると、そういった概念は持ち合わせていないらしい。思い返せば子供のときに両親を亡くしそれからスタンドの修行に明け暮れていたと言っていたから、世間の常識をあまり知らないのかもしれなかった。服装だって戦いやすいとか動きやすい等の理由で決めたのだろう。そう考えれば少し哀れであった。アヴドゥルにしてみれば3年も旅を続けているなら察しろ、と思わないでもないのだが。 「別にいつもどおり追い払えばいいんだけどよォ」 憮然とするポルナレフは、どうせなら綺麗なねえちゃんに声かけてもらいたいぜと愚痴っている。この所々子供っぽさの残るこの青年に「お前のセンスはゲイ好みすぎるんだ」とありのまま伝えるは躊躇われた。 「なら、ピアスをはずすか、さもなくば片方だけなくすなんてことは絶対にするなよ。絶対にだ」 ぽかんとするポルナレフは放置し、アヴドゥルはジョセフの元に戻った。 片ピアスなんて掘られてもしょうがない、というのもやはり気が引けたのだ。 海外ではポルの格好がゲイアピール要素満載だと聞いて。 原作での扱いといいファッションといい、お前ほんっとネタキャラだな!愛してる! |
アヴポル・微糖 ※生存パラレル/空港にて いつだって頭で考えるより、言葉にするより、体のほうが迅速で正直なのだ。殊、この男に関しては。 じゃあなと振って下ろされたその手を、思わず掴んでしまった自分自身にうろたえる。故郷が大事だというポルナレフを引き止めてどうするつもりだったのか、何を言うべきなのかなんて考えてもいない。搭乗ゲートへ向かうその背中を見た瞬間、引き止めなくてはと思ってしまった、次の瞬間今の状況が出来上がっていたのだから。 「な、なんだよアヴドゥル?もう乗らなきゃいけない時間なんだけど」 こちらを見つめ返すポルナレフの顔が赤い。敵には射殺すような視線を向け、仲間には感情豊かにころころと表情を変える青い瞳が、おろおろと居場所のないように落ち着かない。 こんな人目のある場所で、友人とはいえ男に手を繋がれているのが恥ずかしいからだろうか。そこまで考えて血の気が引くような感覚と顔が熱くなるような思いを同時に覚える。 次の瞬間、インドで、DIOの館で、無意識に自分の身を挺してまで庇おうとした理由がたった今分かった。この、心に正直にすぎる行動のせいで。 なんでこんな土壇場で、恋心なんてものを自覚しなきゃいけないんだ。 ポルナレフは困惑した顔でこちらを窺っている。 こちらは混乱した頭と硬直した体をどうにもできないでいる。 時間は刻々と迫っている。 使い慣れた舌先までも硬直し、言葉を紡ぎだそうとして―― 生存パラレルにおける「アヴポルっつったらこんな情景」というイメージ。 (11/4/28 ちょびっと加筆修正) |
アヴポル・パラレル・あほい 「俺を主人だと思ってないよな、お前」 「そういうことは尊敬すべき主になってから言え、ポルナレフ」 「格好は執事のくせに」 「そういう『仕様』だからな」 「だったら『仕様』らしく、せめて呼び方変えてみろよ」 「Sirとでも?」 「なんか軍隊みてーだな」 「My Lord?Your Highnessの方が?」 「なんかなぁ…てかなんで英語なわけ?」 「Mon Cheri」 「え」 「Mein Lieber,Tesoro Mio,Mi Amor…どれがいい」 「……お前、意味分かって言ってんの?」 「私を何だと思っている。最新型の携帯だ、主要言語の翻訳機くらいついてるぞ」 まじかよ、と呟く声はアヴドゥルに聞こえてはいない。 「ああ、それともファーストネームがよかったか、ジャン?」 「や、やっぱいい!今までどおりで!」 赤くなって叫ぶポルナレフを、執事はそうとは見えない意地悪い顔で笑みながら見下ろす。 「私のご主人様は本当に勝手で困るな」 クーデレ…? |
アヴポル・甘い ※ぼんやりと生存パラレルっぽい感じ 「あ、そろそろ雨降るな」 ポルナレフがそう呟いたのは30分ほど前だっただろうか。ほとんど予言のように振り出してアヴドゥルは少し驚いた。 「野生の勘か何かなのか、それは」 「アンタ俺を何だと思ってんだ…。天気悪いと体中がじくじく痛むんだよ。雨が近くなると余計に」 「体中が?……ああ、朝から妙な頭痛がしていたのはそういうことか」 雨が降ると古傷が痛むという。それを話には聞いてはいたものの、アヴドゥルはこの歳になるまで実感したことはなかった。銃痕が残るような傷を負う、今まで。 「アヴドゥルも?」 「思ってた以上に痛いな、これは」 正直に言えば、ポルナレフの眉根が気遣わしげにぎゅうと寄る。 「気にするんじゃあないぞ」 「気にするに決まってんだろ!――あ、じゃあおまじないしよっか。効果覿面のやつ」 「はぁ?」 言うなりポルナレフはアヴドゥルの額をくるくると指でなぞり、ちゅ、と口づけた。 「どう?少しはマシになった?」 「あー…、お前のところの『痛いの痛いの飛んでけ』か?」 「おう!泣いてたシェリーがコレで泣き止まなかったことなんか無いぜ」 何故かポルナレフは得意げで、それはそれはきょうだい仲のよろしいことで、と言いながらアヴドゥルは溜息をつく。その『おまじない』は24歳がすすんでやることだろうか。それも、30をとうに超えた男に対して。 「で、私もそれをやるべきか?お前の体中にあるという古傷に」 ポルナレフは数瞬硬直した後、紅潮した。 「俺、もしかして今結構恥ずかしいことしたか?」 「分かってくれてよかった」 「うん、もうやめる」 是非そうしてくれ、と言いかけてアヴドゥルは思いとどまる。なんとなく痛みが和らいだ気がしたからだ。 「本当に効果覿面だったらしいな」 チャットでの宿題「古傷」ネタでした。 |
アヴポル・甘め? 後ろでもぞもぞと何かをしている様子がある。あるにはあるが、読書中ということもあっていちいちつっこむのも面倒でアヴドゥルは放置していたが、あまり他人事でもなさそうな気配がしてきたためにつっこまざるをえなくなって口を挟んだ。 「一体何をやってる?」 「何って…三つ編み」 「なんでまた…」 振り向こうとすると顔の位置を矯正された。振り向かれては編みが崩れるとかそういう理由だろう。見えないところで自分に関わる何かをされてるのは心許無くて溜息をつけば、何を勘違いしたのかポルナレフが明るく言った。 「あ、大丈夫!俺慣れてるから」 思い返せば、かつて土塊の体でちらりと見たポルナレフの妹・シェリーの姿は黒い長髪の美人であった。彼女の髪を日常的に整えていたのかもしれないと思えばこの手際も納得がいくものではある。 「なーなー、この髪型変える気無え?」 言いながらポルナレフはアヴドゥルの既にくくられた髪を解こうとしている。 「何故だ」 「せっかく綺麗な髪があるんだから、もっとバリエーションがあってもいいんじゃないかと思ってさぁ。ツインは流石にアレだけど、普通におさげとか似合うんじゃねえ?」 要するに、『尻尾』程度では足りないらしい。 「髪で遊びたいなら自分のでやればいいだろう。セットするのを止めればそこそこの長さがあるんじゃないのか」 「やだよ、これは俺のポリシーだからな」 「理不尽だ……」 目くじらを立てるほどでもないが、釈然としない思いがある。あるけれども変に口答えするのもまた面倒で、着実に髪が解かれるのを感じながらぼんやりと話題をずらしてみた。 「そんなとこに、ポリシーなんてあったのか」 「まあな。シェリーにこれがかっこいいって言われてからずっとこうしてんだ」 「シスコンめ」 「悪いかよ」 「そうは言ってないが」 ここでキレておくべきか、ポルナレフのあまりに楽しそうな様子を放置しておくべきか、アヴドゥルが逡巡している間に髪が随分と乙女チックなことになっていて結局前者になったのは数分後の話。 自分が書くアヴポルは、だいたいポルがシスコンでアヴさんが忍耐の人になるのが、なんとなく納得がいかない。 |