フーゴ+アバ(+ブチャ) 「アバッキオは黒が好きなんですか」 フーゴの唐突な問いにアバッキオは数瞬間を置いてから、やっと質問を理解したように答えた。 「そうだな。何者にも染まらないってのは良い」 じりじりと照らす太陽の下にもかかわらず黒尽くめの服であるアバッキオは、傍目に見ても重苦しく暑そうだ。その色は真夏の影のようにくっきりした闇で、確かに外界からの干渉を拒絶しているかのようだった。 「…でもアバッキオのは染まった結果の黒、のように見えますね」 「どういうことだ」 「さあ、どういうことでしょうね」 言いながらフーゴは視線で指し示すように前方を見る。進行方向には艶やかな黒髪をきれいにそろえた我らがリーダー。黒い髪に白いスーツの彼と白っぽい銀髪に黒いコートの彼はきっと二人横に並べば真逆に見え、なおかつ背の高い彼らは二人で一揃えのように見えるのだろう。それを意識しての服装チョイスなのかまではフーゴには判別がつかないが。 「勝手に言ってろ」 そっけなく会話を切ったアバッキオがぷいとそっぽを向く。否定をしなかったのはそんな気力も太陽に吸い取られていたのかもしれないけれど、それにしてはアバッキオの顔は涼しげであった。 5部ゲーのキャラ紹介アバッキオの歩き方と声が好きすぎて何度もリプレイしてます。 |
リゾ+メロ+プロ 「リゾット?おいリゾット、リビングで寝てんじゃねえよ邪魔だ」 プロシュートはげしげしとリゾットが横たわるソファを蹴る。それなりの揺れがあるはずなのに起きる気配もない。その寝入り様は睡眠薬でも盛られたのかと思うほどだが、ここ数日リゾットがまともな睡眠時間をとってないことを知っていれば状況にも納得がいく。 納得はいくがあまり見られない「無防備な寝姿」、しかも口も半開きで間抜けともいえる姿を見ればプロシュートは悪戯心がむくむくと湧き上がるのを抑えられなかった。ギャングに身を落としていても子供心は失わない、と言えば聞こえはいいかもしれないが要するに人の弱みに付け込む悪魔の所業である。 「落書きをしたいと心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わって――」 宣言しながらテーブルにあったサインペンを振りかぶったプロシュートの腕は唐突に掴まれて、「行動を終わ」らせることはできなかった。 「ンだよこれからってときに邪魔するんじゃねえ」 背後で腕を掴んだ男・メローネはにやにやと楽しげな笑顔を浮かべている。 「額に肉とかやるつもり?」 「ああ。あと頬にヒゲとか瞼に目玉とか」 「どうせだったらもうちょっと面白い落書きしようよ」 「メローネ、なんでそんなん持ってんだ…」 「趣味」 「そうかよ…ま、俺は面白けりゃそれでいいけどな。こっちに準備してあるのもやんのか」 「もちろん☆」 「この時点で十分笑えるけどな…ぶっくくくく」 主にメローネの所業によってわざとらしいほどに濃い口紅とマスカラを施された――そして更にアイシャドウとチークもされる予定だった――リゾットは、覗き込んだギアッチョの「きめええええええ!!!」という絶叫で起きることになる。 それから暗殺チームアジトでは1,2ヶ月ほど、「リビングで隙を見せると金髪の悪魔2人に襲われる」という怪談染みた「事実」が蔓延し、どことなくぴりぴりした空気が漂っていたそうな。 一度は触れてみたい、リーダーのあの写真ネタ。 そんな経緯の写真がボスに渡ったんだったらリーダー哀れすぎますが。 |
ブチャアバ 白い砂浜に一対の足跡が長く伸びる。 その足跡が向かう先には、夕暮れの影のような人物が佇んでいた。探し人である彼は、びっくりするくらいにこの場所――海辺に似合わなくて、ブチャラティは笑いをこらえきれなかった。その声に人影は振り返る。 「早すぎだろ、来るのが」 「それはお前もだろう、アバッキオ」 言いながら憮然と唇を曲げる。 「向こうでもっとゆっくりしてればよかったんだ」 「それはできない相談だな。お前が待ってるんだから」 「いくらでも待てたのに」 アバッキオは一度言葉を切って、不器用に笑む。 「でも、よかった。ブチャラティが来てくれて。オレの居場所はあんたの傍だけだから」 「それは光栄なことで」 「本気で言ってるんだぞ」 「知ってる」 ブチャラティはアバッキオの胸に触れた。かつて愛した熱い鼓動はもうそこにはない。 「動かないんだな」 「ああ」 「もう、二度と…」 そう考えるとひどくさびしく、そっと目を伏せる。離そうとした手が押さえられ伏せた目を開けば、その手はアバッキオの手に包まれていた。じわりとぬくもりが広がる。 「温かいか?」 「ああ」 「ブチャラティの手も温かい。魂の温度だ。心臓は止まっても俺たちにはこの温度がある。それだけじゃ、駄目か?」 「いや、十分だ」 真摯に問いかけるアバッキオに絆されるようにして肯定すれば、ほっとしたような笑みを向けられた。それは生きていた頃には見られなかった、完全に憂いのとれた表情だった。 「いい顔をしてるな、『向こう』にいたときより」 「そうか?」 「ああ。何かあったのか」 「なら、その話をしようか。ナランチャを探しながらにでも」 「なんだ、あいつこっちに来てないのか」 「迷ってるのかもな。『こっち』は広い」 「死んだ後も人騒がせなやつだ」 二人は笑って歩き始める。 白い砂浜に二対の足跡が長く伸びた。 死後の世界で一番最初にいきつく場所が人によってそれぞれだったとしたら、ブチャはなんとなく海べりな気がする。そうでなくてもアバは絶対迎えに行くと思うけど。 |
グレフルさん一人称 ※プロシュート過去捏造注意 我が主よ、何事にも臆さず笑ってみせる我が主よ。 初めて出会ったのは貴方が今よりも幼く、少年といえる年齢だった頃。唐突に現れた、人とはかけ離れた異形の私を、怯まず臆さずじっと見据えた後、貴方は哄笑した。 「やっとオレにも力が」 力を欲するような年齢には見えない少年は、あのとき確かに誰よりも輝いていた。 主よ、私は貴方が欲した『力』たりえただろうか。 我が主よ、冬の風よりも冷徹で夏の太陽よりも苛烈な我が主よ。 私に死の名をつけ、その手でも何人も屠ってきた貴方があれほどまでに動揺し怒るのを私はそのとき初めて見たのだ。 『栄光』、その言葉が貴方の口から頻繁に出るようになったのはそのときからだった。 主よ、貴方はその手で『栄光』を掴めたのだろうか。 我が主よ、今いのちの灯火が消えかけている我が主よ。 眩しいまでに苛烈に輝いていた貴方の光が夕闇に消えかけているのを感じる。 もしかしたらもう意識は途切れているのかもしれないが、貴方の意志が成そうとするのならば私はどこまでも力を尽くそう。誰よりも大切な貴方の為に、そして貴方から数多のものを受け取った私の為に、この身が砂塵と帰すまで。 我が主よ、誰よりも愛した我が主よ。 私には数多のまなこがあるが、それをもってしても最期に貴方を見られない。 私は死の名を持つが私は死後の世界があるのかすらも知らない。 もしも死後の世界があるのならば、生まれ変わったその先というものがあるのならば、主よ、貴方が許すのならば、私はこれから先も貴方の傍に居てもいいだろうか。 上から順にスタンド発現・2年前・死に際。本体を心酔するように大好きなスタンドという主従みたいな構図にたまらなく萌えます。 |
ブチャアバ・暗い 「こんなん部屋においてるやつ初めて見た」 そう言ってブチャラティが物珍しげに掲げて見せたのは小さく分厚い書物、聖書だった。 「珍しい物でもないだろうが。学校でもやるんだし」 「ああ、そんなこともあったか?随分と昔すぎてなに習ったかも忘れたけど」 あっけらかんと言うブチャラティにアバッキオは黙したまま驚く。12でこの道に入ったと言っていたからまともに学校も通ってないのだと簡単に推測できたが、ふとしたときの常識の食い違いにアバッキオは薄ら寒い思いをする。同じように隣に立っているのに全く別の種族であるかのような、触れ合えるほどに傍に居るのに驚くほど分厚い見えない壁があるかのような。 こうやってひとつひとつブチャラティのことを知るたびに立っている場所の乖離に気づかされ、アバッキオは詰まった息を押し出すように吐き出した。 「また、暗いこと考えてるだろう」 かけられた声の位置は思いがけず近い。 「そんなこと、は…」 「ない、とは言わせないぞ。こんなに手を冷たくして」 触れられた手は火傷しそうに熱く、逆に己の手が冷え切ってることを思い知らされる。 「それとも、オレの傍に居るのが緊張するほど嫌なのか?」 「違う!ただ……上手く言葉にできないんだ。もう少し時間をくれ」 「……そうか。いつかお前の心が本当に救われるときが来るといいな」 言ってブチャラティはアバッキオの頬にひとつキスを落とした。 決して嫌なはずではないその行為にすら心臓が痛む思いをする。地に満ちよ、なんて言葉からかけ離れたこの関係を厭わないことにすらまた『場所』の違いを感じるのだ。 冷え切った指先が温まる気配は、まだない。 『常識とは、十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう』というアインシュタインの言葉をなんとなく念頭に置きながら。 |