短文


審神者+長谷部+江雪
後藤+太郎次郎
蛍+歌仙
織田組
同田貫+髭切

審神者+長谷部+江雪



審神者は日課の鍛刀をするべく資材の指定をしていた。書き記した材料は、いわゆる『太刀レシピ』。太刀レシピと称しながらも1時間半ばかり表示されるにももう慣れた。
「妖精さーん、これでおねがいね」
資材用紙を受け取った鍛刀妖精はひとつこくりと頷いて、レシピ通りにかまどに放り込んで鍛刀時間を表示した。その看板には。

『3:20:00』

「うわああああああ!」
「ど、どうされましたか!主!」
「長谷部!レア太刀が来るよ!手伝い札持って来て!」
「主命とあらば!」
審神者のテンションに巻き込まれ、自慢の機動を生かして長谷部は言われるままに札を持って来て、それを受け取った審神者はそのまま妖精に渡した。
かまどがひときわ光って、少し間ができる。
「主、レア太刀とは……?」
「今回は3時間20分だったから、一期一振・江雪左文字・鶴丸国永・鶯丸の4つのうちのどれかだね。レア4太刀とも言われる、刀装を3つ持てる子たちだよ」
「なるほど」

妖精が盆にのせて一振りの刀を差しだした。
長谷部の目にはそのうちのどの刀かは分からなかったが、審神者は審神者故の能力として名前が見えたようだ。
「江雪左文字……!宗三、小夜くん、お兄ちゃんが来たよー!」
此処にはいない左文字の弟たちの名を呼んだが、当然のことながら彼らには聞こえていない。審神者の独り言のようなものだ。
「では早速呼び出しますか?それとも左文字たちを連れてきますか」
「ちょっと待ってね。初めてのレア刀剣だから、呼び出し方で少し遊びたいな」
「あそぶ?」
いつもなら、刀剣の本体を両手で触れて審神者が念じることで、刀剣男士が呼び出されている。
「ちょっとごっこあそびしてみたい」
今まで何度も呼び出しているのに何故今更そんなことを言い出したかと言えば、偏に「テンションが上がったから」である。一時のテンションとは恐ろしいものである。
「『黄昏よりも昏きもの』……はなんか違うなー、刀だから『散れ、千本桜』とか?なんか刀解になりそうでなんかなー、和モノっぽく『我を守りし者、その名を示せ』?あれは契約解除か」
半分も理解できない言葉をぶつぶつつぶやく審神者を横目に、長谷部はちらりとかの刀を見る。人の形として顕現してはいないが「さっさとしろ」と訴えているように見えた。
「――召喚、っていったらやっぱりあれかな。よし、決めた!」
数分後、端末で何かを調べていた審神者は、ようやく江雪左文字を呼び出した。はた目にはよく分からない呪文を唱えながら。


『素に銀と鉄。礎に石と契約の大公――――』


後に審神者はこう語る。
「隣に長谷部がいたのがちょっとまずかったんだよな。『されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし』を入れなきゃいけない衝動にかられたもの」
責任の一端を押し付けられかけた長谷部はいい迷惑だ。もちろん全ての責任は審神者にある。

結論から言えば、江雪左文字は審神者の求めに応じて無事呼び出され、ことあるごとに「和睦」と「戦は嫌い」を繰り返す袈裟をまとった白磁の美青年が現れた。
他所の本丸に居るものと違うところと言えば、「戦は嫌い」というくせに出陣させても文句は言わないところだった。
練度の低いうちからそこそこの強さを見せ、刀装は並のものを付けてもなぜか特上のものを同じ働きを見せる。そして一番特筆するべきことは、戦場に立てば鬼神のごとき強さで次々と敵を屠り、時折理性を失ったようにボロボロになっても敵の本陣に突っ込もうとする。力づくで引き留める者が部隊内にいなければ、自身の血と敵の返り血で真っ赤になりながら突き進む。それは、まさに狂戦士ともいえる姿だった。

なぜそんなことになったかと言えば、おそらく件のごっこ遊びが原因だ。他の誰かが検証したわけではないから確証はないけれども。
他所の審神者が戦場に立ちたがらない江雪に頭を痛めるなか、狂戦士江雪が良い意味で特殊変異となるか所謂「バグった」ものとなるか、それは采配をふる審神者次第である。




長谷部の中の人がかりやおじさんと同じと聞いて、やるしかないと思った。
あと戦闘狂和睦さんが見たかった。
15.06.23





後藤+太郎次郎



「でっかくなりてえな」
後藤藤四郎の口癖のひとつだ。堀川の「兼さん」や鶴丸の「驚き」ほどではないにせよ、よく耳にする言葉である。
だが、この本丸の背が高い者たちはそれを不思議に思うことがままあった。

「なぜ、そんなに大きくなりたいのですか」
そう太郎太刀が問う。
「えっ?だって、大きければそれだけ強いってことだろ?」
「そうでしょうか」
「あんた、ええっと、太郎さん、だっけ。手合せしてるの見たことあるけどさ、かっこよかったぜー!」
「そう、でしたか?」
「そうそう。自分の本体と同じ大きさの木刀を、ぶぅん!って振り回すの、嵐とか竜巻みたいでかっこよかった!あんたら大太刀って敵を3体まとめて薙ぎ払えるんだろ?俺にはできないから羨ましいぜ」
きらきらした瞳でべたぼめされて、太郎太刀は能面のように無表情のまま、目元だけを少し赤くしてだまりこんだ。
「あっ……えっと、変なつもりなかったんだけど、気ぃ悪くしたか?ごめん」
「いや、そうい――」
「まーた兄貴は短刀に怖がられてるのかい?」
太郎の後ろから明るい声が割って入った。太郎の大きな体に隠れて全く見えなかったが、次郎太刀が近づいていたらしい。
「こ、こわがってなんかない!ただ、俺が変なこと言ったみたいで」
「んー?どれどれ?」
次郎が後ろから太郎の顔を伺い見る。
「おおっとぉ!兄貴、そんなに照れた顔見せるなんてひっさりぶりだねえ!」
「……」
「照れ、え…?」
「兄貴は表情わかりにくいからねえ。別に機嫌悪くなんかしちゃいないさ、そうだろう?」
「ええ……」
「で、何の話してたんだい?」
照れたままむっつりと喋らない太郎にそう聞いても答えてくれるはずもなく、後藤の方に視線をうつせば、少年はさっきまでの会話をかいつまんで話した。
「はっはっは!事情は分かったよ。アタシらのことをそう褒めてくれるのはやっぱり嬉しいねえ」
「思ったままを言っただけだぜ」
「でもねえ、でっかければいいってもんじゃないさ」
「そうなのか?」
「そうさ!兄貴なんかは自分が大きすぎることを気にしすぎてるくらいだしねえ。例えば、刀は振るわれてこそが本分だろう?でもアタシらみたいなのは、大きすぎて人につかってもらえないのさ」
短刀は常に人のそばにある刀だ。その感覚を想像したことすらなくて、首をかしげる。
「うーん、あんまりわかんないかな。あとね、大きすぎると鴨居を壊すんだよ」
衝撃的な発言に後藤は目を丸くした。
「は?鴨居を、壊す?どういうことだよ」
次郎の発言に、太郎は更に顔を赤くして弟を止めようとする。
「ちょっと、次郎!」
「ははは、いいじゃないか、でかい連中は大なり小なりやってることさ。アタシたちなんかは力が強すぎてね、鴨居に頭ぶつけるどころかそのままへし折っちまうことがあるのさ。それで何度主に泣かれたかねえ」
けらけらと次郎は笑う。
「本丸の修復費がばかにならないと言われて、ほんとうに申し訳なく思ったものです……」
笑う次郎とは真逆に太郎はしょんぼりと視線を落とす。
同じように大きく見える兄弟なのに性格は真逆なのだろうかと、後藤は不思議に思う。
「体がでかいより心がでかい方が、アタシはかっこいいと思うよ」
「心」
「そう、心」
次郎はそう言って後藤の心臓あたりを指し示す。その指がとん、と彼の身体に当って、その衝撃が思いがけず強くて後藤は思わず後ろによろけた。
「おおっと、すまないね。ははは、まあ、あんたはあんららしく、無理せず『でっかく』なればいいさ。応援してるよ」
にこっと向けられた笑顔に、後藤は複雑な気持ちになる。
そして、心も大きくなりたいけど、やっぱりすこしは身体的にもでっかくなりたいなあ、と思う。せめて大太刀が指でつついただけでよろけない程度には。



ある日のテンドロ会場で「最後に30分ドローイングやってみたい」って言う人がいたので乗っかってみた。
30分あると逆に悩み過ぎて迷走します。
15.11.24





蛍+歌仙



今日のお八つはホットケーキだった。審神者が買ってきた粉に、書かれている分量の材料を混ぜて焼くだけ。実にシンプルで、雅ではないと歌仙は思う。しかし50人弱を擁するこの本丸にいちいち雅を求めていても詮無いということも彼は知っていた。雅や風流は茶室でやる分だけで十分である。
ホットケーキと共にココアも出す。ここ数日めっきり冷え込んでいて、あたたまるものが必要だろうという配慮だった。

食べ終わった分の皿を回収しに歌仙が食堂に行くと、そこにひとり取り残されたようなちいさな人影があった。
「おや、蛍丸。珍しく随分のんびりしているね」
「これがちょっと熱くてさ。ああ、片付けたいの?ごめん、ちょっと待たせる」
蛍丸はカップを両手で持って、小さな頬を膨らませ、忙しなくふうふうと冷ましている。そこまで熱かったのかと他のカップを見回したが全て空になっていた。ということは、彼だけが猫舌なのだろう。
ぷくっと膨らんだ頬をつつきたい衝動に駆られたが、ぐっとこらえて歌仙は言う。
「別に構わないさ、ゆっくりすればいい。今日はこのあと出陣もないんだろう?」
「うん、ありがと」
照れくさげに笑ってから蛍丸はまたココアを覚ます作業に戻り、歌仙は空いた皿やカップを洗い場に運ぶ作業に戻った。


ひととおり洗い終わり、再び歌仙は食堂を見に行った。すると小さな影は依然そのままそこにあった。
そこまで時間を置かないと飲めない程猫舌なのか?と思いながら近寄ると、小さなその手の中にあるカップはすっかり空になっていて、顔を覗きこめば澄んだ緑色の瞳は瞼に閉ざされていた。腹がくちたのと体があたたまったことで睡魔に襲われて、そのまま眠ってしまったようだった。
おや、と歌仙は思う。顕現したてで人の身に慣れてない者ならまだしも、蛍丸がこんなところでうたた寝するのは珍しい。
だが、秘宝の里でずっと隊長を務め、間も置かず大阪城へ向かうことになり、池田屋最終面の仕様により不慣れない夜戦にもかりだされることになって、随分と疲れているのだろう。ほんとうに彼は多忙だったのだ。それだけ強さを頼りにされているという証左でもあるのだけど。
こんなところで座ったままうたた寝しても休めないだろう。蛍丸を起こさないようにそっと抱え上げ、居室に運ぶ。食堂の隅で膝枕してあげてもよかったのだが、筋肉質な固い膝では休まるものも休まらないと思った結果だった。

見た目以上に重い小さな身体を抱え、すれ違う者たちをあるものはジェスチャーで、あるものはひと睨みで静かにさせ、やっとついた居室にそっと横たえた。
いとけないその顔に似つかわしくなく、眉間には皴が寄っている。察した通りやはり疲労や心労がたまっているのだろう。もしかしたら夢の中でもそうなのかもしれない。
「案外君は甘え下手だね。ひとりで気負わずにもっと僕たちを頼るといい。君が皆の仲間なのと同じように、皆が君の仲間なのだからね」
起こさない程度の声量でそう言いながら、歌仙はその銀の髪をそっと撫でる。
すると、聞こえているのかいないのか、蛍丸の口角が少し上がった、気がした。




某所でSKYの誕生日を覚えててくれて真っ先に絵で祝ってくれたお方に御礼として押し付けたSSでした。
蛍推しとのことなので、かわいらしい蛍丸を目指して。
15.11.29





織田組



へし切長谷部がそこに居合わせたのは、まさに間が悪かったのだとしか言いようがない。
いつも審神者が休憩をとる時間に審神者はたまたま外出していて、たまたまその日に思い立って長谷部が休憩にと茶を持っていき、たまたまその日の近侍が宗三左文字だっただけである。
そして宗三の独り言が長谷部の耳に入ってしまったのがより一層いけなかった。
「手に入れるだけで満足して、使いもしない……いつも通りですよ」
そっと開けるつもりだった障子がすぱんと開かれる。
「主の指示に異論があると、そう言っているのか」
独り言を聞かれたと気づいた宗三は気恥ずかしく、その裏返しとしてとげとげしく返答した。
「おや、主に使われもしない刀がこんなところに何の用ですか?」
あからさまに煽る宗三の言葉に、長谷部の額に青筋が浮く。
「お前の相手などして、主がさぞお疲れだろうとねぎらいに来たのだ。お前が面倒過ぎてどこかに行ってしまわれたようだがな」
「面倒なのはあなたも同じでしょう。知っていますよ、あなたの主への愛が重すぎて負担になっていることを」
「あの方が俺を負担に思うなど、あるはずがない!ふざけたことを言うな!」
「さあ、どうでしょうね?」
ふふん、と笑った宗三の襟首を長谷部が掴み上げたのが決定的にいけなかった。
織田刀剣の一歩も引かぬ殴り合いは時間がたつにつれ加速していき、審神者が戻ってくるまで延々と続いたのだった。
(余談として、審神者が長々席を外していた理由として、頑固な便秘と戦っていたからだことをここに記しておく)



「で?手入れ部屋に行かず俺っちのとこに来た理由ってのはなんだ」
ぼろぼろになった二人の手当てをしながら問えば、
「見ての通りですよ」
「見ての通りだ」
「そう言われてもなあ」
異口同音に言う二人に薬研は苦笑する。二人とも顔は腫れ、口は切れ、身体中に痣があり、まさかこれが本丸内で起こった諍いの末であるとは思わないだろうと思う程の怪我をしていた。辛うじて重傷ではないが、軽傷に近い中傷とみていい。
理由はなんだ、と問いながらも薬研にはこの怪我の原因はわかっていた。
「あんたたちの反りが合わないことが俺っちだって一応知ってるつもりけどな、私怨で資材を消費することになるのはいけない。その資材だって本丸のみんなが苦労して集めてきてくれたものだからな。わかるだろ?」
「「……」」
むっつりと黙り込む大人二人に、薬研はまた苦笑する。この沈黙は痛いところをつかれたからだということは容易に察せられた。
「主からあんたたちに何か直接処罰の指示はあったか?」
「私闘で負った怪我の分の資材は自分で稼げと仰せだ。練度は双方足りないが、主の命ならば仕方ない」
「不本意ですが、妥当な処分ですよ。さあ薬研、さっさと手当を済ませてください。すぐにでも出陣して資材を集めないといけないので」
「ふうむ」
殴られた痕跡のような擦り傷に消毒しながら薬研は考えた。
殴り合いをしたからそのあとどうにかする、のではなく、殴り合いをするような状況にならなければいいのでは、と思ったのだ。つまり二人が仮初でも仲良くできればいいのではないかと。



あまり頼みごとをしない薬研の頼みとあらばと言って、二人を率い「享保の大飢饉」に向かった一期一振が、たった1回の遠征で赤疲労になった理由に関しては、察して余るものだったという。



突発でお題を募って「長谷部と宗三が喧嘩してニキが仲裁する話」というネタを貰いががっと書き上げたブツ。
長谷部はどうにも他人を煽る系の発言をするイメージがあります。
16.01.30





同田貫+髭切



同田貫にとって、新入りの彼の第一印象は「ぼけっとした奴だな」だった。
同じように平安刀である三日月も大概マイペースだが、それと同等かそれ以上にぽやっとしていて、本当にこんな男が戦場に立つことが出来るのかと疑問に思ったものだった。
その次の印象としては、「こいつは二重人格か何かなのか」だった。ひとたび戦場に出れば普段とは打って変わって奇声を上げて敵に突っ込んでいく様子は、どこか自身の戦い方に似通っていて親近感を覚えた。まああちらは大抵のことはどうでもいいそうだから、同田貫が一方的に思っていることなのだが。
つまるところ、彼にとって髭切という刀は「よくわからないやつ」だった。



そんなよくわからないやつと話をする機会は案外早く訪れた。新入りに内番の仕方を教える係に抜擢され、共に畑当番をすることになったからだ。
「えーっと……、うん、きみ、今日はよろしく頼むよ」
綺麗な顔をにこりとさせて髭切が言う。
「同田貫正国だ。あんたが来た日にも自己紹介したけどな」
「それはすまないね。僕はどうにも名前を覚えるのが苦手で。なにせ」
「『千年も刀やってると大抵のことはどうでもよくなる』んだろ」
「おや、これはまいった。台詞をとられてしまったよ」
「何度も聞いてるからな。言っちゃあなんだが、俺も刀は強ければそれでいい、名前も姿かたちも気にしねえ、って思ってる。お互いさまだ」
そう同田貫が言えば髭切はぱちくりと瞬いて首を傾げた。何か変なことを言っただろうかと思うが、このマイペース極まる男の言動をいちいち気にするのも馬鹿馬鹿しいと思い、さっさと仕事を始めることにした。
「まず農具の置き場所からだな」

畑仕事に要る道具やすることをひとつひとつ説明しながら、同田貫は髭切がいつも以上にぼーっとしていることに気付いた。こちらが言ったことはこなすし復唱もするが、どうにも上の空であるように見える。何か別のことを考えてるな、ということはさほど察しの良い方ではない彼でもわかった。
畝一つ分を耕すように髭切に指示して同田貫も隣の畝を耕していると、少しして「ああ!」と大きな声が隣で上がった。
「どうした、蚯蚓でも出たか」
「違う違う、ようやく思い出したよ。きみ、量産刀の子だろう」
「はぁ?」
「あれ、違ったかい?」
「いや間違っちゃあいねえけど」
「たくさんの刀の集合体であるって子がいるとは前に聞いてて、ほら、あの背がひょろっと高くて緑の子に」
「緑……御手杵か」
「そうそう、その彼にね。面白いなあって思ったのを今思い出したんだ。僕や弟はたくさんの名前をもってるけどひとつの刀、でも君はたくさんの名前があったたくさんの刀。対称的だろう?」
「そういうもんかね」
「ねえねえ、よかったら刀をやってた頃の君の話をきかせてくれないかな」
「面白い話なんてできねーぞ」
「いやいや、自分が知らないことを聞くのはなんだって楽しいと思うよ。ものの本質は名前ではなく中身だからね」
「そんなもんか?」
「それにずっと単調な作業なんかしてたら、立ったまま眠ってしまいそうだ」
「なんだそりゃ。――ああ、話してやるから手は動かせよ」
髭切にせっつかれるまま、同田貫は記憶の引き出しを探る。普段眠ったままにしている集合体の記憶をひっぱりだすのは中々面倒なことだったが、一旦掘り起こせば案外すらすらと言葉は出た。元々喋るのはそんなに嫌いではない。
畑仕事はあんまり好きではないが、今日は少しだけ機嫌よくこなせそうだと心の片隅で思った。


SKYの誕生日のときにお祝い絵を描いてくれた方にお返しとしてリクを貰って、「同田貫と髭切・刀の在り方について」というお題で40分の急ごしらえで書いたものです。
たぬきの集合体設定に夢を見ている。
16.02.02