鶴丸+物吉 ついにこの本丸にも幸運を運ぶ脇差が来た。 鶴丸にどことなく似ている、というのは彼を迎え入れた隊員の言であるが鶴丸自身は物吉にまだ会ったことがない。だから、初めて会う彼には登場と共に驚きをもたらそうなどと思いながら鶴丸は手品の種を模索していた。手品というのは誰かが悲しむことなく、驚きと喜びをもたらすことのできる最高のエンターテインメントだと考えているからである。 かの脇差は鶴丸と同じくまっしろだと聞いている。ならば同じように白いものを出せばウケそうだ、ならば今万屋で買ったこれも役にたつかな?などと思いながら本丸を歩いていると、丁度白い矮躯が視界に入った。鶴丸の知る限りあんな真っ白い洋装の男士はいない。ならば彼が噂の物吉貞宗だろう。仕掛けるならば、今だ。 こそっと近づいてとんとんとその細い肩をつつく。 うん?と油断しまくった顔で振り向く彼に、鶴丸は「わっ」と声と共に手元から隠していたものを出した。 後ろ手に隠していた左手からは百合の花束を、右の袖からは真っ白い鳩を。 「う、わわわっ」 物吉は羽ばたく鳩が飛んだ拍子に後ろにたたらを踏んで、とてん、と尻もちをついた。 「ははは、いい反応だ」 「え、ええ、なんなんですか?」 「いやなに、ちょっと驚かそうとおもってな。俺は太刀の鶴丸国永。座右の銘は『人生には驚きが必要』だ。これからよろしくな」 鶴丸が伸ばした手をとって物吉は立ち上がる。 「こちらこそよろしくお願いしますね!――今のって、もしかして幸福の白い鳩、ですか?」 「なんだいそれは?」 「西洋では鳩が幸福の象徴とされているんです」 「へえ!俺はただ主が修行帰還鳩を買うようにおつかいを頼まれて、丁度君や俺と同じく真っ白だったから驚きのために使ってみただけなんだがな」 「そうなんですか、面白い偶然ですね!楽しかったです!――ねえ鶴丸さん、いまの手品って何回もできるものなんですか?」 「ああ、さっき放した鳩なら遠征帰還鳩と同じ飼育部屋にいるはずだぜ?それがどうかしたか」 「僕、やってみたいことがあるんです」 その日以降、物吉とまだ挨拶をしていなかった男士はもれなく鳩の手品と共に彼の挨拶を受けた。 それ以降物吉は鶴丸と共に「驚き=幸せ」を信条に本丸に笑顔をもたらすようになった。 安価で男士2名指定してもらって書いた話。 izumi組といえばとにかく白! |
鳴狐+数珠丸 畑当番を終えて部屋に戻ろうとしたとき、数珠丸は小さくしゃがむ影を見つけた。 銀色の髪が体に動きに合わせて、ひょこひょこ、と動く。 そぉーっとその陰に近寄れば、ちっちゃい三毛猫と、それを猫じゃらしでからかっている鳴狐が見えた。お供の狐はどこかと見回せば、野良猫が警戒するからか少し遠いところではらはらとそれを見守っている。 鳴狐ではなくお供のほうに近づいて、数珠丸はその頭を撫でた。 「これはこれは数珠丸殿、ごきげんうるわしゅう、でございます」 「ええ、ごきげんよう。そちらはいかがですか?」 「鳴狐はとてもご機嫌でございますよう」 狐はにこにこをそう述べるが、数珠丸は、おや、というように少し驚いた表情をした。 「私は、『あなたが』どうかと訊いているのですが」 「わたくし、でございますか」 「ええ、鳴狐どのではなく、あなたのご機嫌はどうなのでしょう?」 「ふむ……鳴狐が楽しそうで、わたくしも楽しくおもいます。しかしながら、少々寂しくも思いますなあ」 「寂しい」 「ええ。やはりわたくしは鳴狐あってのお供の狐ですので。そのお役をご免されてる間は暇でもあり、さびしくもあり、といった気持ちです」 「ふむ」 数珠丸は瞳を閉じたままお供の狐を、頭を撫で背中を撫で尻尾をすくように撫で、首元を撫でた。 「ちょ、数珠丸どの、なにをなさって、ふ、ふわああ、んん、そこ気持ちいです、もっと……うん!?あれわたくしは何を!?」 数珠丸が喉をなでるのに任せて瞳がとろとろとしていお供の狐も、それが続けば目も覚めるようだった。 それを察知したのか、猫を構っていたはずの鳴狐もそれを放り出してお供の狐をひょいと拾い上げた。数珠丸を見つめる瞳は警戒心に溢れている。 「もしかして悪いことをしてしまったでしょうか。仏の教えでは生き物は人であろうと動物であろうとひとしくいつくしむべきである、とのことなので…」 「そうですよう、鳴狐、少しばかり暇をしていたわたくしの相手をしてくださっていただけなのです」 「……お供を、取ったり、しない?」 「ええ、勿論。あなたには必要な子なのですよね」 数珠丸に問われて鳴狐はこくりとひとつ頷いた。 「ではこのまま構い倒してしまいますね」 暇をさせている負い目もあるので、鳴狐はもうひとつこくりと頷いた。 「――お供さん、私と共に仏の道を説く道を歩んでみませんか。あなたの口の上手さなら私よりも上手く伝道師を務められそうな気がするのです」 数珠丸がそういうのを聞き逃さず鳴狐はお供の狐をひょいと取り上げた。 それを見た数珠丸がくつくつと笑うものだから、鳴狐は眉根をハの字にして深く困ったような表情になるのだった。 安価で男士2名指定して(ry なっきーを困らせ隊。 |
次郎+小夜 今日、小夜が厨番である燭台切に言われて向かった先は大太刀棟であった。 塩ゆでした枝豆をこんもりと盛って、その上に伏せた空き皿が乗っかっている。空き皿は枝豆のさやを入れるためのものだろう。 てくてくとやや遠い大太刀棟に着けば、案の定次郎太刀がゆっくりと酒を飲んでいた。 「厨番に言われて持ってきました。どうぞ」 「はいはーい、ご苦労さん。これを待ってたんだよねえ」」 言いながら次郎は太い指でぷちぷちと枝豆の鞘をつぶした。大きな手は豆二つ分を一気に押し出せるようだが、自分の手では無理だろう。 ざるや皿が使い終わってから回収するためにそばに待機していたのだが、次郎はこちらをちらちら見ながら自分の分の枝豆を剥いていた。 「何か、ご用ですか」 「うーん、あんたも小間使いじゃないんだしさぁ。そこにぼーっと立ってるのもなんだし、一緒に飲まないかい?」 「え……」 ぽかんと驚いた顔をする小夜に、次郎の方も面食らう。 「何かおかしいこと言ったかい?」 「一緒に飲もう、なんて、兄様たちにも言われたことがなかったので」 「はっはっはっは!あんたの兄さんたちは言わないだろうねえ!でも子供のなりをしていても、酒が飲めない訳じゃあないだろう?」 その言葉に小夜はこくりとひとつ頷く。 「なら、つきあっておくれよ。燭台切じゃないけど、アタシもあんたがにかっと笑う姿を見てみたいのさ」 「……歯を見せて笑うのは、風流じゃないそうです」 「そんなこたあどうだっていいのさ!ほらほら、一献どーぞっ!」 次郎は予備の盃に酒を注いでぐいっと小夜の方に突き出した。 「では、いただきます」 ぺこ、と頭を下げて小夜は盃に口をつけた。 ちびちびと舐めるように飲む小夜を見て、次郎は問う。 「どうだい?」 「……」 「こんな場所でも酒の席さ、遠慮なんていらないよ」 「舌が、ぴりぴりします」 「口にあわないかい」 その問いに、少し迷った後、小夜はひとつこくりと頷いた。 「はっはっは!酒の味を知るには、ちょーっと早かったかな?」 「すいません、文句付けたみたいで」 「いいよいいよ、こっちこそ無理いってすまなかったよ。ずっと仏頂面してるあんたにも、一緒に笑って何かを楽しめる相手ができるといいねえ」 好きで飲んでいるものにけちをつけられたはずの次郎はけらけらと笑いながらそう言った。 ふと小夜は、腹の奥がぽかぽかと温かくなった気持ちになる。それは酒精のせいかもしれないし、そうではない理由からかもしれなかった。 安価で男士(ry 小夜ちゃんは小間使いみたいなことするのに抵抗はないけど、それを見ている側がなんか気にしそうだなーって思って。 |
髭切+秋田 たしか馬当番をするのはこの場所だと聞いたはずなのだけど、と思いながら髭切は馬小屋の前でぼうっと立つ。見慣れない顔だからか馬たちが怪訝にこちらを見てくるような気がする。それを気にするようなたちではないが、早く相方になる子が来ないかなあ、初めての馬当番だから何から始めたらいいのかわからないのだけど、くらいは思っている。 からっと晴れた空を見上げていると、とたたたっと軽い足音がして小さい影がこちらにやってくる。 「おや」 「すいませーん!ちょっと寝坊してしまいました……今日はよろしくおねがいしますね!」 「うん、よろしくたのむよ。えーっと……」 「秋田藤四郎です。遅刻しちゃった僕がいうのもなんですけど、お馬さんのことなら、任せてくださいね」 「うん、よろしくたのむよ」 任せてくださいといっていたのは伊達ではなく、秋田は本当に馬の相手に慣れていた。不機嫌そうな馬が何を不満に思っているかをすぐに察して対応するし、大人しいなと思った馬が少し疲れているのだと察して報告書につけていた。 聞けば秋田はこの本丸の最古参組であるという。ならばと思いいろいろと聞いてみることにした。馬のことも本丸のことも秋田自身のことも。 千年生きてるとはいえ、なんでも知っている訳ではない。むしろ知らないことの方が圧倒的に多い。馬の機嫌ひとつとってもそうだ。 そのひとつひとつに秋田はとても嬉しそうに答えてくれた。それを次まで覚えているかは分からないけど髭切はひとつひとつ耳をすませて聞き、うんうんと心に書き留めた。 色々と教えてくれる秋田の瞳がまぶしくて、ふと思いついたことが言葉に出る。 「きみの瞳は青空みたいな綺麗な水色だねえ。たっぷりお空をみたからなのかな?」 するとその綺麗な空色の瞳がすこし曇る。 「僕の前の主は、お空の下に出られないひとだったんです。だから僕があの人の分までいろいろ見ておきたいなって思うんです。だから、今のこの本丸の暮らし、とっても楽しいんですよ」 一抹の寂しさを隠しながら空色の瞳は笑みを作る。悪いことをきいてしまったかなと思い髭切はすこしばかりの気まずさを感じた。 「そういえば、髭切さんはとっても長い間を偉い人の元ですごしてきたんですよね!」 「うん?そうだねえ」 「僕ずっと狭い場所にいたから、いろんな刀の刃生聞くのとっても好きなんです。よかったら髭切さんのお話も聞きたいなって。えっと、嫌だったら無理にとは言わないんですけど…」 しょぼんと伏せられた瞳が物悲しくて、慌てて髭切は声をかける。 「そんなことないよ。うーんどこから話そうかなあ、お昼の休憩までに考えておくよ。食べながら話そうか」 「ほんとですか!ありがとうございます!」 ぱあっと笑った少年の笑顔があまりにもかわいらしくて思わずその桃色の髪を撫でる。そのふわふわした感触を手のひらに受けながら、刀として過ごした千年よりも、肉の身体を得て過ごした短い間の方がよほど面白いのではないかなあと少しだけ思った。 安価で(ry 外に出られなかった秋田くんが空色の瞳っていうあたりに夢を感じる。 |
膝丸+鯰尾 白金の地をてくてくてくと歩みを進める。 膝丸がちらりと横に視線を向けるとご機嫌に足をすすめる黒髪の細身が視界に入る。その影――鯰尾と言えば、少なくともこの本丸では髭切の世話役としての第一人者で ある。弟である自分より赤の他人(?)である鯰尾の方を近くに置いていることに常々疑問に思っていた。 「おい、えーっと」 「俺ですか?なんでしょう」 「ああそうお前だ、鯰尾、少し訊きたいことがある」 そういうと、美少女のようにもみえる面差しをくるりと驚きの表情にしてから、にこっと笑った。 「はい、なんでしょう」 「お前は兄者、あー、髭切の周りで何かと世話をしているだろう」 「まあ、そうですねえ」 「ということは、兄者に存在を認められているということだな」 「うーん……それはどうでしょうねえ。少なくとも嫌がられてはいないとは思うんですけど」 「む、そうなのか。俺は兄者が気に入ってお前を傍に置いているのだと思っていたのだが」 「そこは当人に訊いてみないとわかんないですね。で、それがどうかしたんですか?」 あどけなくこてんと首を傾げられていささか毒気を抜かれる。もしかして勝手に思い違いをしていたのだろうか。 「お前があまりにも兄者の懐に入り込んでいるから、俺も同じように兄者の印象に残るようにコツを聞きたいと思ったのだ。実の弟が聞くことではないとおもうのだがな」 すこし恥じ入りながら顔を赤くして俯く膝丸を、鯰尾はくすくすと笑って見る。 「面白いことをいいますね!」 「そうか?」 「俺は、誰かの世話を焼くのが好きで、久しぶりに世話の焼きがいがある人が来たから積極的にかまっていただけですよ。多分髭切さんは僕の名前だって覚えちゃあいませんって」 「なんと」 「そんな僕に対してあの人が話すことってなんだと思います?」 「さあ……まったく予想もつかないな」 「あのですね、ふふ、あなたのことなんですよ」 「は!?」 「やっぱり名前は覚えていないんですけど、ずーっと弟自慢してるんです。いつもきにかけてくれているだとか、まっさきに敵をみつけて斬りつけていくのが素晴らしいだとか」 「……そうか」 白い頬が少し赤くなっているのを見止め、さら鯰尾は続ける。 「名前を覚えてもらえないからといって、気にかけてもらえないって訳じゃないですよ?もっと自信をもって、俺の事なんかきにせずお兄さんに構ってあげて下さい。きっと喜びますから」 にこっと笑いながら鯰尾がそう言った次の瞬間、隊長が敵の襲来を伝えた。 さっと前に出た鯰尾が刀装を削り、膝丸が本体を指し貫く。 振り返った鯰尾のにやりとした笑顔に応えるように片頬を釣り上げれば、その目くばせだけで2巡目の戦略まで見通せた。 そのとき、初めて髭切が彼を傍に置いているのかを理解した気がした。 安(ry 馬糞の印象が強いずおだけど、世話好きっていう脇差らしい性格可愛いと思う。 |