テンドロ(10分間ドローイング)まとめ

お題:たまごアイス
お題:堀川国広
お題:江雪左文字
お題:秋
お題:同田貫正国



お題:たまごアイス



「鶴丸はこういうの好きそう」という理由で審神者から渡されたそれは、今までみた『あいす』とは一線を画する姿かたちをしていた。コーンらしいところもなければ、カップに入ってるわけでも、棒にささっているわけでもない。口元をしばったゴム袋の中に卵のような白いものが入っているそれは、見た目の通り、たまごアイスというらしい。
「なるほど、見たことがない形だがこれも『あいす』なんだな!これは驚きだ」
「形もなんだがな、これ最後爆発するんだ」
「爆発!?そんな危険物を俺に渡すのか!」
「いや、命の危険はない。最後になー、こう、爆発するんだよ」
審神者の説明は要領を得ないが、危険ではないなら、と鶴丸は大人しく受け取った。
審神者いわく、ゴム袋の尖った先端を小さく切って、手の体温で溶かしながら吸うようにして食べるらしい。言われた通りにしてみれば、ゴム袋が縮む修正を利用して途中からどんどんと溢れてくる半液状のバニラのさまは中々に楽しかった。そして、美味い。
「楽しいな!」
「気に入ってもらえてよかった。でも最後ちゃんと気を付けろよ?」
黙ったままこくこくと鶴丸は頷いた。溶けるにつれて勢いを増して溢れてくるので、アイスから口が離せないからだ。

ふと、鶴丸その勢いに嫌な気配を察知した。なんとなく先が読めたからだ。
その予感に従ってばっと口を離せば、その瞬間、吸い口から白い液体がびゅっと勢いよく飛び出した。その対応のおかげで真正面から液体をひっかぶることは避けられたが、着物にはべったりとバニラがついてしまった。
「はは、はははは!これが爆発とやらか!なかなかに良い驚きだ」
けらけらと笑っていると、そこにちょうど洗濯当番の堀川がとおりがかってじとっと鶴丸を見つめた。
「鶴丸さん、それ、そのまま洗濯に出さないでくださいね」
「えっ?あっ……!いや、しかしこれは主が…」
「主さん?どこにいるんですか」
爆弾の持ち込み主は鶴丸がアイスに夢中になっている間にすっかりと姿を消していた。
「出・さ・な・い・で、ください、ね?」
「アッハイ……」
こっちの驚きはいらなかったな、と思いながら、しょんぼりと鶴丸は自分の白い着物を見つめるのだった。



変態的なものしか思い浮かばなくて頑張って健全にした結果、鶴がすごい子供っぽい。

15.11.15





お題:堀川国広



今回のイベントで物吉貞宗が来たとき、堀川は「自分に似た脇差が来たな」と思った。
脇差とは本来本差に添えられる存在であるため他人の補助をするのが役割ともいえるし、それを端的に現した攻撃方法が二刀開眼なのだが、他の脇差はすりあげられたものが多いためか、『お手伝い』を自分の役割と強く認識している者は少なかったのだ。
だから『お手伝い』が口癖のような物吉が来たとき、自分だけじゃなくてほっとした気分になった。

この本丸では脇差が揃って出撃することが少ないため、件の新入りと一緒に行動することがなかったが、それでも物吉の強さは堀川の耳に入るほどで、練度の低いうちからもう戦力になるような強さを見せていて誉も頻繁にとっているようだった。
練度を相当高くしなければ前線で戦えない者も多いなか、その強さは素晴らしいものであるはずだ。
そのはずなのだが。


「物吉君、そんなところで何してるの?」
白い背中を小さく丸くして、物吉は畑の隅でうずくまるように座り込んでいるのに気づいて、堀川は声をかけた。
その声にばっと顔をあげた彼は、おおきな瞳に涙をたたえていた。
「え、え、どうしたの!」
「ぼく、ぜんぜん、おてつだいでぎなぐでえええええ」
大声で泣き出す物吉を慌てて宥めながら話を聞けば、戦場では活躍できても内番では失敗が多くてへこんでいたのだそうだった。今も一人で畑にいるのは、一緒に畑当番をしていた博多にうっかり水をかけてしまって、着替えてくるのを待っているからだった。
「お手伝い、したいのに、みんなに迷惑ばっかりかけて…」
それをきいて、堀川はにっこりと笑みを浮かべて励ます。
「ひとの身体をもった子は、最初はみんなそんなものだよ。少しずつ覚えていけばいいからね。内番や家事だったら僕が得意だから教えてあげる。明日はぼくのお手伝い、してくれるかな」
その言葉にぽかんとした様子の物吉が、少ししてこくこくと頷くのを見、たまにはお手伝いしてもらうのもいいものだなと堀川は思うのだった。



ものくんは幸運よりもお手伝いの方の印象が強いです。

15.11.16





お題:江雪左文字



刀剣に親がいるとするなら、父親は刀匠と言える。そして母親は炎といえるだろう。
そのためか、大概の刀剣男士は暑さに強い。燃えたことがあるものもないものも。
だが、何事にも例外というものがある。それが、名前に『雪』の字をもつ江雪左文字だった。



審神者の方針として現世に合わせた景趣にしているこの本丸は、今は夏の景趣になっている。日はさんさんと照り、緑は青々と茂り、軒先には風鈴がつるされ、江雪は部屋の中で溶けていた。
いくら僧侶の姿をしているからといっても、修行僧ではないので「心頭滅すれば火もまた涼し」とはいかないのだ。
凛としたたたずまいは見る影もなく、できるだけ涼しいところを探す猫のように日影を彷徨い、起き上がる気力もないのか寝そべっている。元来の顔色の悪さも相まって、髪をばらばらに垂らしてうつぶせているその姿は、死んでいるのかのように見える。

「はぁ……にいさま、大丈夫?」
自室に戻った小夜は長兄のその姿を見、そっとためいきをつきながら訊ねる。
「何故この世から争いがなくならないのかを考えて、少しでも暑さをまぎらわせているのですが……」
「無理矢理悲しいこと考えても、別に涼しくはならないよ。ほら、これあげる」
これ、と言われて差し出されたものを、顔だけ起こして見れば、見るからに涼しげな水色をしたなにかがあった。
「現世のもので、アイスっていう氷菓子だよ。一緒に食べよう」
本丸の古参である小夜が指示するとおりに封をあけ、アイスなる氷菓子を取り出せば、袋と同じ色をした氷菓子があらわれた。食べ物に青色を使うのはどうかと思うが、見た目に涼しいのは確かだ。
同じように小夜にいわれるとおりにそれを口にすれば、甘い。そして冷たい。うだるような暑さに涼が駆け抜けたこころもちがした。
「こっちのが手っ取り早いでしょ」
「そうですね」
自分と、そして弟と同じ色をしたその氷菓子は、弟と一緒に食べているからか幸せの味がした気がした。



今まで書いたテンドロのなかで一番キャラ崩壊甚だしい。ごめんねにいさま。
15.11.16





お題:秋



「さーけはのーめーのーめっとォ……おや先客か」
酒の肴を求めて日本号が厨に行くと、そこには派手な着物姿の後ろ姿が見えた。かんざしで結い上げているそれは見間違えようもなく次郎太刀だ。
「おや、日本号。アンタも酒のつまみを探しに来たのかい?」
「『も』ってことはお前さんもか。どこかで宴でもやんのか」
「宴ってほどのもんじゃないけどねえ。ほら、今日庭が秋模様になっただろう?あれを見ながら呑もうかと思ってね」
秋模様、というのは、景趣のことだ。近々小判を使うイベントがあるというのに、秋の景趣が出たと聞いた審神者が、金庫番の博多を拝み倒して手に入れた庭だ。男士たちにはそれがどういう仕組みで切り替わるものなのかは分からないが、小判を出せば季節が変わるというのは実に不思議で、綺麗なものだった。季節の移り代わりを愛でたがる歌仙などからは、雅でないと不評だけども。
「紅葉を見ながら酒か。いいねえ。俺も相伴にあずかっても?」
「もっちろん!1人酒も悪かないけど、ひとりよりふたり、ふたりよりたくさんだからね!」
あでやかに化粧をした顔をにかっと笑みの形にしてそう言う次郎太刀に、つられて日本号も笑う。

十分すぎる長身を二人してまげながら肴になりそうなものを漁っていると、その2人を超える長身が厨子に現れた。岩融だ。
「なんだなんだ、お前たちも肴を探しておるのか」
「『も』ってことは……」
「庭が秋になっただろう。それを見ながら一献と思ってな」
「なぁーんだ、酒飲みの考えることはみんな一緒ってことかい?だったら最初っから誘えばよかったねえ」
「そうだなあ」

だいぶん狭くなった厨子に、今度は小さな姿があらわれる。
「おおっと、図体のでかい面々があつまってむさくるしいな」
「薬研か。なにか捜し物があるなら俺たちは退くぞ」
「ちっと喉が乾いて、と思ったんだが、このメンツだと飲み会でもするのか?」
「ご名答。お前さんもなかなかの飲兵衛と聞いたが、どうだ?」
おや、と菫色の瞳をまるくしてから、薬研はにぃっと笑う。
「これだけ飲兵衛にかこまれちゃあ、乗らないわけにはいかないな。紅葉でも見ながら一杯ってのもいいもんだ」



紅葉だ紅葉だ、なんていいながら酒飲みが続々と集まる。
しかし酒飲みにとっては秋なんてどうでもよくて、とにかく飲むきっかけが欲しいだけだ、ということは皆がわかっていた。


ちょうど秋の景趣がでてちょっとした頃でした。自分が飲兵衛だから本丸の子たちも飲兵衛に書く傾向があります。
15.11.16





お題:同田貫正国



同田貫正国という刀は面白いやつだなあ、と彼と話すことの多い御手杵は思う。

まず一つにあげられるのは、強ければいいと常々口にしていながら、何故か外見に関することを口にすることが多いこと。自分が三名槍をコンプレックスをこじらせている(自覚はあるのだ)のと同じようなものなのか、と最初は思っていたが、本当に外見を気にしてはいないらしいというのが知れて、不思議だなと思った。
ふたつめに、戦闘には常に乗り気で大声を上げて敵に斬りかかるのに、本丸では意外なぐらい物静かであること。手合せ以外では常にどことなくだるそうで疲れているのかとおもいきや、出陣という段になると驚くぐらい手早く戦準備を整えて誰よりも先に門で待機している。
みっつめに、逆に戦以外では物静かなのかと思いきや、一緒に離してみれば案外よく喋るということ。量産刀の集合体であるからか、市井の知識はこの本丸の誰よりも豊富で、上手く促せばいくらでも喋ってくれる。散々喋らせたあと、ふと我に返って黙り込むのも面白い。
そして、よっつめ。

農具じゃないとぶつぶつ文句を言いながら畑を耕す姿を後ろから見る。そのさまは堂に入っていて、ほんとは農具だったんじゃないかと一瞬思った。勿論冗談の一環だし、本人には言わないけども。
本丸にある農具は長身の御手杵は少々短くて、同じように農作業をするとかなり腰がつらい。休憩がてら同田貫の姿をぼーっと見ていると、こっそりさぼっているのがばれて、まじめにやれと急かされた。
刀は戦の道具と言いながらまじめに内番をするのが意外で、面白いと思う。
そう思ってぽろっと「お前って変なやつだよな」と言ったら、「お前ほどじゃねーよ」と返された。自分がちょっと浮いている自覚はあるのでそれに反論する言葉もない。
そうかなあ、と呟きながら御手杵はこの面白い友人の隣で再び鍬をふるった。



3番目推しだから自分的たぬき観をつめこんだら、夢見すぎわろた。

15.11.17