お題:現代アート風 きっかけは、粟田口の短刀たちが審神者の部屋から絵画道具一式を見つけ出したことだった。 なんでも審神者の趣味が絵画だったとかで、本丸に来たときにいろいろと持ち込んできたのだという。しかし審神者業が忙しくて趣味をする時間がなく、埃をかぶっていたのを、かくれんぼをしていた秋田と五虎退が見つけたのだった。 短刀一同と脇差、監督責任者として一期が揃った中、目の前には複数の画用紙と、色鉛筆、クレヨン、木炭とキャンバス、水彩絵の具に油絵具、他にも小道具がいろいろとならんでいる。 初めて見る道具も審神者から使い方を聞いて皆器用に思い思いに絵を描きはじめた。こどもらしい筆致の絵、写実的な絵、水墨画を真似たような絵、色々な絵がどんどんできていく。 「ん、何をやっているのだ」 そこに通りがかったのは三日月だった。 「主殿から絵の道具を借り受けたので、みんなで絵を描いているのです」 「ほう、面白そうだな」 「興味がおありですか」 「うむ。俺もやって良いか?」 「ええ、紙も道具も十分ありますから。どうぞ。」 一期が余っていた画用紙とクレヨンを差し出せば、ほけほけとした笑顔で三日月は受け取った。そして、暫し悩んだような顔をしてからクレヨンを紙面に滑らせる。 数十分後。 「こりゃあ驚きだぜ……」 次に通りすがった鶴丸が、三日月の手元を見てそう言った。 そこには何が描かれているのか常人にはさっぱりわからない、色の暴力があった。何を描いたのかと問えば、絵を描いてる皆の姿を描いたのだという。あのほほえましい光景がこの天下五剣にはこう見えているのか、と途方に暮れた気持ちになった。 しかし後日それを見た審神者は三日月の絵を絶賛した。 芸術とは、見る人が見なければ理解できないものである。 現代アートってなんかよくわからんという偏見のもと、一番美しいひとに犠牲になっていただいた。 |
お題:岩融 今剣が岩融とばったり出くわしたのは、丁度審神者の部屋の前でだった。 「岩融、えんせいがえりですか?おかえりなさい」 「ああ、只今帰ったぞ。今剣は主に何か用か」 「ていれべやにさいごまでいたのがぼくだったので、へやがあきましたよーってあるじさまにほうこくです」 「出陣帰りだったか。大事ないか――いや、手入れしたのだから無事ではないのだな」 「ちょーっとてきのやりにさされたくらいで、だれもおおけがしてないですよ!いまはみんなていれがおわって、げんきにしてます」 「そうか、それは良かった」 岩融はにかっと笑って今剣の頭をわしわしと撫で、今剣はへへへっと笑った。 最近の出陣は夜戦ばかりで、今剣は毎日のように出陣している。逆に1軍だった岩融は活躍する機会もなく、ずっと遠征にいっていて、二人がゆっくりと話す機会は近頃あまりなかった。 「岩融」 「なんだ、今剣よ」 「ふまんではないのですか」 「不満?」 「岩融はいくさがだいすきでしょう?でもずっとえんせいばっかりで、つまらなくはないですか?」 すると驚いたような一瞬の間があって、岩融はがははと豪快に笑った。 「お前たちが手入れをするにも刀装を持つにも資材は必要だろう。ならば遠征での後方支援も戦の内よ!物資のない戦なぞ負けが決まっているようなものだからな!」 そう言う岩融の顔に曇りはなくて、今剣はほっとする。誰よりも近しい彼が、今でも楽しくやっているのならそれが何よりだ。 ふたりで審神者の部屋に入る。今剣は手入れ部屋の件で、岩融は遠征の報告で。 報告を受け取った審神者は、ついでだから、と二人に告げる。 なんでもまた大阪城にとらわれている男士が見つかったという。岩融にはそこで存分に戦ってほしい、という話だった。 今剣はそっと隣を窺う。するといつもの笑顔で、しかし夕陽色の瞳がぎらりと光った相棒の姿があった。 さきほどの言葉には勿論嘘はないだろう。だけど前線にいるときの彼は、やはり一番楽しそうだ。 「よかったですね!」 「おう」 楽しそうにいくさばを駆けるこの薙刀の姿が見られるのが今から楽しみで、今剣はとびはねたくなるような気持ちでいっぱいになった。 三条お題のターンその1 安価とったの自分ではないんだけど、いろんな岩さん見れて至福の時でした。 |
お題:小狐丸 お題:小狐丸 紅葉の庭とゆっくりと歩く姿がひとつ。 山吹色の服に身を包んだその影は、つい先日この本丸に来た男士、小狐丸だ。 何をするでもなく、ぼうっと空を見上げている。 それに近づく影がひとつ。 紺の服に身を包んだその影は、小狐丸捜索隊に随分と長いこといた三日月だ。 「人の身というものも、よいものだろう」 「ええ」 「桜が散り、緑が茂り、紅葉が散り、雪が降る。それを間近で見て、直に触れ、その温度を感じる。俺も人の身を得て初めて知ったことだ。ずっとお前に見せたかったのだがな」 「私自身がどうにかなるものではないとはいえ、随分と苦労をかけたそうですね」 「ああ、それはもう!お前を墨俣で見つけたと主に報告したとき、驚いて奇声を上げて主ときたら卒倒したのだぞ」 「それは私のせいですか?」 「さあな」 ぽつぽつと喋る二つの影が、はらはらと散る紅葉を見上げる。 「小狐丸、髪に紅葉がついておるぞ」 「おや……どこですか」 「いや、そのままでいい。髪飾りのようで、なかなか良いものだ。おぬしは秋が良く似合うな」 「そうでしょうか。ならこの季節にここに来たのもさだめというものかもしれませぬな。三日月は、きっと桜や梅が似合う、そんな気がします」 「そうか?」 「春の景色に立つあなたを見るのが楽しみですよ」 四季がゆっくりと過ぎていく 青い空と、赤い紅葉と、山吹色と紺の影。それは遠目に見ても一幅の絵のようであった。 三条お題のターンその2。 なんか調子悪くて雰囲気文章になってもた。 |
お題:三日月宗近 「おしゃれは苦手でな」と言う三日月は、それでも何故か、装飾品は似合っている上に品の良いものを的確に選ぶという特技がある。 それは自身のもそうだが、他人に対してもそうだと知れたのは案外最近のことだった。 万屋への買い出し当番で三日月と秋田が当たったとき、帰って来た秋田の髪には瞳と同じ色の小さな髪留めがあったのがきっかけだったのだ。華美過ぎず、質素過ぎず、かつ映える色を見つけ、その人個人に似合うものを的確に選ぶ。案外難しいことである。 それ以来、身なりを気にする男士の買い物に三日月はひっぱりだこにされていた。 「おしゃれは苦手だと言っておるのに」 今日も加州にひっぱられて買い物に付き合った三日月は、自室に戻りやれやれと腰を下ろす。本丸に来た順に2人部屋に入れられるこの本丸では、奇しくも三条太刀が一部屋に揃うことになった。 「おしゃれとセンスは似て非なる物ですよ、三日月」 「俺には違いが分からん」 嘆息する三日月に、小狐丸はくすくすと笑う。その近くには櫛が置いてあり、その隣にかんざしがいくつか入った箱が置いてある。小狐丸はそこから1本を選び、豊かな白い髪をそれでくるりとまとめた。 「器用なものだな」 「慣れですよ」 「俺は慣れん」 「でしょうねえ。あの見立て上手の三日月が、いつもの髪飾りひとつ自分でつけられないなんて誰が思うでしょう」 「絡まるんだ。しょうがないだろう」 ぶすっとむくれる三日月の表情は、自分でじじいという割りには余程子供っぽい。 兄弟刀のそんなところがおかしくて、小狐丸は更にくすくすと笑った。 三条お題のターンその3。 じじいのあの格好はおしゃれが苦手なするひとの服装ではないといつも思う。 |
お題:薬研藤四郎 この本丸の京都攻略隊隊長は薬研だった。そしてその薬研は最近多忙であった。 刀剣男士が立て続けに2人本丸に参入し、そのどちらもが夜戦に向いているということで京都でのレベリングに付き添い、ある程度強くなったら三条大橋に出陣するように審神者から名が下ったからだ。 墨俣にも厚樫山にも行くことが無くなった分、夜戦に出陣する回数は格段に増えた。その上新人2人が重大すぎる怪我をしないように気を張りながら、進軍するか撤退するか見極め、いつも以上に敵の動きに気を配っていた。更に、夜戦と言うことは昼夜逆転生活になる。疲れるのは当然だった。 軽い怪我だけ負った自分は後回しにし、中傷以上の隊員を手入れ部屋に送り込んで、薬研は手入れ部屋のすぐ外で息をつく。 扉にもたれかかれば、そのまま立っていられなくなって、ずるずると廊下に座り込んだ。 戦に出ることはもちろん喜ばしい。でも疲れはどうしようもない。体調管理ができてないなんてまだまだ未熟だな、と溜息をつけばそのままとろとろを瞼が落ちてくるのが分かった。 「だめだ、大将に、報告、しねえと……」 足を踏ん張るが力が入らない。瞼を頑張って見開こうとしてみても思うようにいかず、薬研の意識はそのまま暗転した。 気が付くと当たりはうっすらと暗い。そして体があたたかい。 見回せばそこが手入れ部屋の中だと気づく。体には覚えのない毛布がかかっていた。 「起きたか、薬研」 近くから後藤の声がした。 「あれ、俺っちなんでここに…」 「俺が手入れ部屋から出たら扉の隣でお前が倒れてて驚いたぜ。怪我はたいしたことなくても、相当疲れをためてたらしいじゃねえか」 「あ、ああ……」 「俺たちが未熟なせいだってのは分かってるけどな、何もお前ひとりで抱え込むことはないんだぜ?ここはみんなが仲間なんだ、そうだろ?」 「そう、だな」 「大変だと思うなら、大将やいちにいに話しせばいい。なんだったら俺のことも兄貴分として慕ってくれていいんだぜ?」 にかっとわらう後藤につられて笑って、その額にでこぴんする。 「ははは!だったら早く、俺に心配かけないくらい強くなって頼らせてくれよ、兄貴」 丁度ものくんごとくんが来た頃でした。 明石掘りの重要な戦力が来て嬉しかった(ラス1明石の難民) |