テンドロまとめ

お題:長曽祢虎徹
お題:後藤藤四郎
お題:初太刀
お題:鳴狐
お題:小夜左文字


お題:長曽祢虎徹


なんだか最近浦島がよそよそしい、気がする。
なんとなくだが長曽祢はそう思っていた。
一緒に出陣するときにどうこうという訳でもないし、内番のときもいつも通りだ。しかし、前は暇さえあれば自分に寄ってきて遊ぼうと誘ってくれていたのに、近頃それがとんとない。
一緒に遊ぶと言われて戸惑っていたのが伝わってしまったのだろうか。いや、誘われるのが嫌な訳では決してない。ただ、隊員を率いるのは慣れていても子供の相手をするのには慣れていないだけなのだ。
慕ってくれていた弟が離れていってしまったのが寂しくて、こっそりと長曽祢は落ち込んだ。

とはいえ、自分の予測が合っているとは限らない。だから聞き込みをすることにした。
まず初めに、自分に対する嫌悪感をあらわにする方、蜂須賀に聞くことにした。端的に、浦島が最近よそよそしい気がするが理由を知らないか、と。
すると蜂須賀は、長曽祢を上から下までじろりと睨んで、フンとそっぽを向いた。
「自分を顧みてから言え」
それだけ言ってすたすたと立ち去られ、更に落ち込む。言葉より行動、と信念に行動しているつもりなのに、何か弟たちの機嫌を損ねることをしてしまったのだろうか。

次に、浦島と仲のいい脇差仲間の鯰尾と骨喰に同じことを訊いてみた。
すると骨喰はくるりと目をまるくし、鯰尾ははじけるように笑った。
「浦島はもう気付かれているのか」
「気付く……?何をだ?」
なにも気付いていないからこうやって訊ねているのだが。
「長曽祢さん、なーんも心配しなくていいですよ!ちょっと内緒にしたいことがあるだけです!」
俺たちからはこれ以上言えない、と言われてしまえば更に聞くこともできず、内番があると去る2人を黙って見送った。

結局何も知ることはできなかった。むしろ混乱するだけだった。
しかし浦島の態度の原因は数日後すぐに知れることとなった。

「長曽祢にーちゃん!これ、あげる!」
満面の笑顔で浦島は両掌にあまるくらいの大きさの包みを渡してきた。
「これは……?」
「これから冬でしょ?寒くなるから、にーちゃんにこれ着てほしくて!ぷれぜんとするときは、秘密にしたほうがいいって聞いたんだ」
「……!ありがとう、浦島」
今までの心配は全て払しょくされ浦島の頭をなでた。
胸の内からあたたかいものがあふれ出てくるような気持ちでその包みを開ける。
すると大きな腹巻があらわれて、長曽祢は笑顔のまましばらく硬直するのだった。


ソネさんはそれなりに推してるのに性格がよくわかんないひとのひとりです。
兄弟でわちゃわちゃしてるととても嬉しい。
15.12.02





お題:後藤藤四郎


この本丸はそれなりに古くからあるためか、後藤藤四郎は粟田口で一番最後に来た刀だった。
そして、後藤以外の短刀は押しなべて練度が高かった。
しかし、後藤自身は短刀の中では兄貴分の立ち位置だという認識があった。
つまり、どういうことになるかというと。


「刀装づくりか……やっぱ初めては緊張するなあ」
山と積まれた資材を前にして強張った面持ちでいると、
「刀装づくりのコツ、教えましょうか?抑えるところをきちんとやれば、失敗なんてしませんよ」
にっこりと笑って平野が見本の特上刀装をもって立っていた。
「お、おう…じゃあ頼む」
平野は分かりやすく教えてくれたが慣れないことがすぐに上手くできるはずもなく、失敗ばかりをしてなぐさめられてしまった。

「料理なんてしたことないけど、できるかな」
すこしばかり高く感じる厨子の作業台を前に困っていると、
「初めてなら簡単なものを作りましょう。カレーなんてどうです?美味しくてみんな大好きなんです」
畑でとれたばっかりの野菜を持って五虎退が立っていた。
言われたとおりにカレーとやらを作ってみはしたが、自分の得物と包丁では勿論使い勝手が違う。野菜を切っているときに指まで切ってしまって、半泣きの五虎退に手当てしてもらってしまった。

「攻め込む寸前…一番緊張すんな!」
武者震いをしながら敵を探す。しかし敵は見つからず、陣形を勘で選べば不利な陣形を選んでしまって、敵の不意打ちの重い一撃を食らってよろめいた。
「練度が低いなら前に出過ぎるな!ここは俺に任せとけ!」
厚にそう言われながらかばわれ、後藤に傷を負わせた敵は厚の一撃で沈んだ。



「なんかうまくいかねえな……」
部屋の片隅でそういって落ち込んでいると、横にそっと立つ姿があった。
「来たばかりのときはそんなものだよ、後藤」
一期一振がそこにいた。
「私は後藤を除いた粟田口で一番最後に来たんだ。君が味わった挫折はひととおりやってきたよ」
苦笑する一期につられて、後藤も苦笑する。
ダメダメだったのは自分だけではないと分かってしまえば、良くないことだとはわかっていても安心してしまって、心の重荷はずいぶんと軽くなった。



ごとくん兄貴キャラなのに他の粟田口よりレベル低いのがちぐはぐで笑えたので。
彼のあまえんぼなのにおにいちゃんなキャラすげえかわいいとおもう

15.12.02





お題:初太刀


「兄弟は、欲しいものなんかはないのか」
山姥切の唐突な質問に、山伏は緋色の瞳をまるくした。
「どうした、いきなり」
「よく審神者に『物欲を捨て、無心になれ』と言っているからな。兄弟自身は店に行っても何かがほしくなるものはないのかと思ったんだ」
「物欲を捨てるのもまた修行。欲に惑わされてはならぬ」
「そうか……」
いつもうつむきがちな山姥切がそう言ってさらに俯いたことに気付いたが、その理由を問うまもなくその場を立ち去ってしまってなんとなく聞けずじまいになってしまった。

ということを、そのままもう一人の兄弟である堀川に言ってみた。
夕餉の時間にふとそのことを思い出したのだが、ちょうど山姥切は長期遠征に行っていてしばらくは帰ってきそうにないからだった。人見知りのきらいのある山姥切が仲良くしている数少ない男士である堀川なら何か知っているかも知れないと思ったのだ。
「うーん、多分だけどね、何か贈り物とかしたかったんじゃないかな」
「贈り物?」
「そう。『俺は兄弟にいろんなことをしてもらってばかりで、何も返せてない』とよく言ってたからね」
「返せてないなんてとんでもない!拙僧も兄弟にいろいろと助けてもらっているのである」
「そのへんは気持ちの問題だからね。だから、なんでもいいから欲しいものを言ってみたらいいんじゃないかな?あ、消耗品なんかだとただのお使いになっちゃうから注意してね」
「おお、そうであるな」
堀川の注意にはっとする。戦化粧の紅がそろそろなくなってきたからそれを、と思っていた。
そこから少し思案して、ふとひとつ思い当たることがあった。それは自分が欲しい物、というよりはひとつやってみたいことだった。


数日後、内番の山伏の手首には、籠手の代わりに緋色でワンポイントのあるリストバンドが巻かれていた。
山姥切と堀川のジャージの下にも色違いの同じ物があることは、兄弟間のちょっとした秘密になった。




国広兄弟は何気にグループ推しとして三条の次に推してるグループです。
カカちゃんのまぶしさにはっとする国広兄弟かわいいとおもう。
15.12.02





お題:鳴狐


今回の出陣での怪我はいつもより深手だったために、手入れに結構な時間かかってしまった。
しっかり休んでおいでと審神者に言われ、その言葉に甘えてほんとうにゆっくり休んでいたために、部屋に入ったときには明るかった外は随分ととっぷり暮れていた。
手入れにお供の狐は関係ないのでいつも外に留守番させているのだが、今日は部屋をでても見当たらない。
ずっと待っているのに疲れたのだろうか。同じ場所でじっと待っているのも疲れるだろうに、無理をさせてしまったかもしれない。主に言って札を使わせてもらえばよかっただろうか。
そんなことを考えながら、手入れ部屋の近くをうろうろと回って探していると、かすかにあの甲高い声が聞こえた。
たたっとそっちに駆けよれば、紫の着流しを着た巨躯の後ろ姿が見えた。岩融だ。縁側に座ってなにかごそごそとしている。
彼の前にそっと回り込んで見てみれば、案の定、その膝にお供の狐が寝転がっているのが見えた。
「……」
正面からじっとみつめれば、岩融はようやく気付いてにやっと笑った。
「おお、悪いな。こいつをしばらく借りておったぞ」
「……」
「俺はこういう小動物が好きなのだがな、どうにも怖がられてしまう。しかしこいつは俺を怖がらないからしばらく遊んでおったのだ。手入れ部屋の前で暇をしていたようだしな」
「そう」
「さっき丁度寝入ったところだが、起こした方がいいか?」
鳴狐は無言で首を振ると、岩融はそうかと言って笑った。そういえばいつもより声量が小さい気がしたが、寝入ったお供の狐を起こさないためだろう。
鋭い爪の伸びた指を折り曲げて指の甲で狐の喉をくすぐれば、気持ちいいのか狐の顔が少し笑んだように見える。
「中々楽しい時間だった。またこいつが暇をしてるときは借りてもよいか?」
鳴狐はまた無言で、今度は首肯する。
狐にはずっと暇をさせて悪いと思ってたのだ。それを喜んで相手してくれるひとができるなはそれはお互い喜ばしいことだ。
よかったね、と言葉にはせず思って、面頬の中で鳴狐はそっと笑んだ。



お題で鳴狐って言われて台詞漁ったら思いの外お供の台詞多くて笑った記憶

15.12.06





お題:小夜左文字


刀剣の間で兄弟という間柄は、人の物とはすこし違う。
親の顔を覚えている刀剣は少ないため、己に刻まれた銘や言われなどが各々のつながりを示す最たるものだ。
その点でいうと、人に親しく人好きのする粟田口などは元の主に縁がなくともすぐに仲良くなって一緒に行動することが多かった。
逆になかなか兄弟としてのつながりを持てないでいたのは左文字だった。


江雪がこの本丸に来てから少ししたころ、時々視線を感じることがあった。しかし振り向いてみても影はない。よもや幽霊やあやかしの類ではないだろうかとすこし思ったが、霊刀や御神刀がいる本丸にあらわれる剛毅な者はいないだろう。
しばらくほうっておいたのだが、偶然その視線の主とばったりでくわすことがあった。縁側ですこし休憩してからまた畑仕事に戻るか、と思ったときだった。
きゅっとつりあがった猫のような瞳が驚いたようにこちらを見ている。江雪の弟と言われている小夜だった。言われている、という表現なのはお互いにその自覚がないからだ。
「…これ、あなたにもっていけって、主が」
ちいさな手で盆をささえていて、その上にはお茶と柿がのっていた。
「…ありがとうございます」
それを受け取ってお茶を飲んでいると、それを小夜はじっとみつめていた。なんとなく居心地が悪くなる。
「私を、前から見ていたのは、あなたですか」
「……!気付いてたんだね。ごめんなさい」
「いえ、何か私に用でもあるのですか」
「用、というか」
「……?」
すこし思い悩んだような沈黙のあとに、小夜はぽつぽつと話しはじめた。
「兄弟、というのは家族でしょう?僕の云われは家族の敵討ちに使われた刀だから、家族というものに興味があるのだけど。でも、あなたは人を殺めるのが好きではないみたいだから、僕みたいな復讐にとらわれるような刀に話しかけられても困るのではないかとおもって」
言いながら小夜は俯く。このちいさな弟がそんなことを思っていたなんで、考えたことがなかった。自分と同じようにあまり興味がないのかと思っていたのだが、逆だったのか。
「あなたが私を兄と認めてくれるのなら、いつでも来てください。お互いを理解し受け入れるのが、私の唱える『和睦』なのですから」
慣れない手つきでその青い髪をなでると、ぷっくりとした頬が赤く染まるのが見えて、そうかこれが家族愛なのかと江雪が思うのだった。



宗三さんも入れたかったけど技量的にも時間的にも無理でした。無念。
15.12.08