携帯獣BW オノノクス×ノボリ
※ライモン組幼馴染み設定
※ノボリとオノノクスの身長を捏造してます





「キスをしやすい身長差は12〜15cmと言いますが、本当でしょうか?道行くカップルに聞いてみました」
テレビでインタビュアーが元気に喋っているのが耳に入ってきてノボリはそちらに目を向けた。
「身長……ですか」
その単語が苦い思い出を呼び覚ます。
ノボリとクダリの旧知であるカミツレに身長のことであれこれ言われたのが今年の夏のことだった。
カミツレはモデルをやっているだけあって平均以上の身長がある。なのに、一番高いヒールの靴を履いてなお、双子を見上げる形になるのがそのとき無性に腹立たしかったらしい。曰く、「私は昔から努力してこのシャイニングビューティーを作り上げてきたのに、スクールのときから引きこもってバトルばっかりしてたあんたたちがなんでそんなにスタイルいいのよ!しょっちゅう待ち合わせにされるトーテムポール共め!」だそうだ。
それをどこから耳に入れたのか、PWTへの対抗策として部下の鉄道員たちが『おいでませギアステーション』なる企画を立ち上げた。企画と言っても予算は皆無に近く、やたらと目を引く容姿の二人が期間中ギアステーションの入り口に立って客引きをするだけというものだったのだが。
ともあれ、身長のせいで炎天下の中熱中症寸前まで立ち尽くすことになったのは、ノボリにとっては実に遺憾な一件であった。

「別に伸ばしたいと思って高身長になったわけじゃないですのに、ねえ?オノノクス」
話を振られたオノノクスは不思議そうに首を傾げた。このオノノクスは、ノボリが子供の頃から一緒に育ってきた手持ちの一匹だ。スクール入りたての頃に厳選し、子供の腕で丁度抱えるほどのサイズだったキバゴが、20年ほど経ちレベルがカンストした今ではノボリすらやや見上げる大きさにまで育った。図鑑によるとオノノクスの平均身長は1.8mだそうだから、2m近くある彼もまた同類の中では高身長の類だ。
そこまで考えて、ノボリはふと思いついた。
「オノノクス、ちょっと立ってみてください」
オノノクスは素直に立ち、ノボリはその正面に立った。
「わたくしが185弱だったはずなので、ちょうど15cm差くらいでしょうか。ちょっと失礼しますね」
言うなり、ノボリはオノノクスの口先に軽くキスを落とした。唐突だったそれにオノノクスは驚き、びくりと固まったまま動かない。
「ああ、ちょっと背伸びして届くというのがこの『差』なんですね。あら、貴方どうしちゃったんですか」
どうしたもこうしたもない、とオノノクスは思いながら目だけをきょときょとと泳がせた。迂闊に動くと鋭利な顎斧が傍にいるノボリの端正な顔を傷つけそうだというのもあった。回復装置で怪我が治るポケモンとは違って、人間の治癒には時間がかかる。
そんな彼の心境を知ってか知らずか、ノボリは口角を僅かに上げオノノクスの首に抱きついた。
「そのまま動かないでくださいまし」
言い終わるか終わらないかのうちに、ノボリの唇は再びオノノクスの口先に吸い寄せられた。
驚いて半開きになった口にするりと舌を差し入れ、啜り上げ、誘い込む。吐息まで食らいつくすように口づければ、ドラゴン系にありがちな厚く尖った舌と、ヒトの薄く柔らかな舌が絡まり混ざり合う。鉄を切るという牙の在り処を勘で避け、上顎を舐め上げ、口内を散々に蹂躙する。零れてきた唾液が飲み込みきれなくなったあたりでオノノクスの表情を窺い見れば、さきほどまで所在なさ気にしていた瞳はすっかり潤みとろけるように細められていた。
それに随分と気をよくしたしたノボリは、はふ、と少し大きく息継ぎをし口づけをすると、されるがままだったオノノクスの方からも舌が差し入れられた。同時にノボリの細い腰を強く惹き寄せられた。ぐっと近づいた体温がいつもより熱くて、ノボリは陶然とした笑みを浮かべる。
脚を絡ませながら更に喰らい付くようにキスをしようとし――

「それ以上は部屋に戻ってやってよね」
思いがけない声に遮られた。
「クダリ、いつから居たんですか」
「動かないでくださいまし、のあたりから」
ほぼ最初からじゃないか、とオノノクスは思う。体裁だけでも取り繕いたいのに、ノボリにしがみつかれたままで身じろぎすらできない。
「いちゃいちゃするのは別にいいけど、子供に悪影響」
「子供なんてどこにいるんですか」
「ここ、と、ここ」
言いながらクダリは抱えていたアーケンと帽子を視線で指し示す。アーケンは視界を塞がれたままじたばたともがいており、クダリの帽子の中からはばちゅばちゅと小さく複数の鳴き声が聞こえる。
「おや、この間のたまご孵化したんですね。おめでとうございます」
「ありがとう!この子たちもぜったい強い子。今日からすっごい英才教育はじめる!……じゃなくて。今朝生まれたばっかの子たちにそんな胸やけしそうなの見せちゃ、だめ。あと、オノノクスも」
話を振られたオノノクスはびくりと背筋を伸ばし、その拍子に振り落とされそうになったノボリを慌てて抱えた。そのまま抱っこするような恰好になったのは決してわざとではない。
「ノボリのゆうわくに乗っちゃだめ。皆のお手本にならなきゃ。お兄ちゃんでしょ」
マスターの片割れに叱られてオノノクスはしゅんとしょげ返り、その頭をノボリは甘やかすように撫でた。その様子にクダリはひとつ溜め息をついた。とりあえず現状は大丈夫かと確認してアーケンを床に下ろし、リビングにストックしてあった空のモンスターボールをいくつか取ってバチュルたちを収めた。
「ぼくもう出かけるけど、ちゃんと他の子たちボールに戻しておいてね。じゃ、いってきまーす」
「はい、いってらっしゃいまし。お気をつけて」
ばたん、とドアの閉まる音が聞こえるとリビングにはつけっぱなしにしていたテレビの音声だけが残った。数瞬の間の後、クダリを見送っていたノボリとオノノクスは同時に向き合う。オノノクスが抱っこしたままになっているので、今はノボリの方が少しだけ視線が高い。
「続き、しますか?」
オノノクスの鼻先にちゅっとバードキスを落とせば、一気に照れが湧き上がってきたのか自らボールに戻っていった。
「おや、いじっぱりで型破りないつもの貴方はどこに行っちゃったんですかね」
そう言ってオノノクスのボールをそっと撫でれば、いやいやをするようにカタカタとボールが揺れた。

お気に召しませんでしたか?わたくしはずっとでもしていたかったんですけど。
なんて言えばきっと彼を困らせてしまうだろうと思い、ノボリは言葉を飲み込むように口元を手でそっと塞いだ。手のひらの下の唇は緩く笑みの形に弧を描いたまま、しばらく直りそうになかった。






ちゅっちゅしてるオノノボ萌ゆる!と思って書いたけど、キバゴ系の図鑑説明調べたら牙とか顎斧だとかでオノノクスの口周り危険すぎワロエナイ
でもオノノクスのブラック図鑑の説明がまじジェントルすぎて好きです。