携帯獣BW エメクダ
※ いわゆる「ぼくのかんがえたさいきょうのサブボス」状態
※ エメットが元プレイボーイという設定





ボクは色んなオンナノコと付き合ってきたし、それなりに出会いも別れも経験してきた。それは世渡りのためだったり、趣味だったり。こちらから手を出すことはあんまりなくて、どういうわけかほとんど同じ顔をしている片割れよりは異性にモテたものだから、来るものを拒む理由もないし適度にお付き合いをしてきたわけで。
そして言い寄って来たオンナノコ達はみんなこう言う。
「仕事とあたし、どっちが大切なのよ!」
仕事も彼女も『めんどくさいけど楽しい』ことにかけてはほとんど同じくらいだからボクはいつも言いよどむ。迷ってると大体頬をはたかれて振られる。振られたことに特別な感慨もなく、強いて言えば「『ポケモンとあたし』だったら前者で即答できるのになぁ」なんて思いながら、次に声をかけてきたオンナノコとお付き合いをした。
そんな話をインゴにしたら、「馬鹿かお前は、『君は仕事してるボクと仕事のないボクのどっちが好き?』って訊き返せばいいだろうが」と言われたので、彼の機転の良さを存分に褒め称えてからその台詞を使わせてもらうことにした。



「ねえ、クダリは仕事とボクのどっちが大事なの」
「手持ちと君の二択だったら、断然前者なんだけどね」
彼女たちと同じ問いかけを投げ、ボクと同じ考えを口に出して答えるボクの恋人。
分かるよ、実に分かるよ。だってボクも一緒だもの。スクールの頃から厳選育成してきた相棒たちと、出会って数か月の他人だったらそりゃあ手持ちの子たちの方が大切だよね。
背後からぎゅっと抱き着いてもノーリアクションなクダリは、手持ちの子たちの体調を真剣に見分して、ここ最近のバトルの傾向を考慮しながら技構成の見直しをしている。山のように積んだ書類を片付けたと思ったらこれだから、ふてくされたくもなる。
「ボクのことも構ってよ」
素直に言えば、
「ポケモンを大事にする僕とおろそかにする僕、エメットはどっちが好きなの?」
「断然、前者デス…」
こんなのってないよ、あんまりだよ!とか思いながら、どこかで聞いたような言い回しであることにボクは頭を抱える。聞いたようなっていうかボクが言ってきた言葉だけどね!やるせない思いをぶつけるようにクダリの背中に頭をぐりぐりと押し付けると、デンチュラを撫でるような手つきで髪を撫でられた。
「ああ…もう…ボク、君の手持ちになりたかったなぁ」
ぽろっと出た本心に自分で驚きながらクダリの様子を窺えば、クダリがすっごい目でこっち見てる。呆れと侮蔑を込めた冷ややかな……ボク知ってるよ!これ『養豚場の豚を見るような目』ってやつだろ!
「きみってやつは変な知識ばかりつけるね」
「あれ、口に出てた?」
「エメットが何考えてたか知らないけど、『ボク知ってるよ』のあたりから聞こえてたよ」
クダリは苦笑しながらさらりと言う。
「僕は手持ちの子たちとセックスする趣味はないけどね」
あまりに唐突で直裁な物言いに驚いて腕に力がこめると、クダリが色気のない声でぐえっと鳴いたから、慌てて力を抜いた。
「ちょっと、何すんだよ」
「ごめん」
「まあ……こっちこそごめんね、待たせて」
僕を撫でる手はそのままに、もう片方の手は赤い光を瞬かせてシビルドンをボールに戻していた。銀灰の瞳がようやく真っ当にこちらを見てくれて、やたらとボクの心臓が高鳴る。
「僕は兄さんみたいに要領よく手を抜くとかできないからさ、全部きっちり終わらせないと次に移れないんだ。こんな不器用な奴を選んだことを運の尽きだと思いなよ」
身体ごと向き合って両の腕でボクに抱き着く。その手つきが何故か戸惑うようで、それがたまらなく可愛い。クダリを好きだと思える瞬間のひとつがこういうときだ。距離感を図りながら、こらえ性がなくて結局思ったままに行動してしまうところがたまらなく愛しい。
「何言ってるの。キミを恋人に出来たことこそがボクの人生で一番の幸運なのに」
そう言うとクダリはぴしりと固まったあと、ボクの肩に顎を載せ、溜め息をひとつ。
「ほんと、趣味悪いね」
「そうかな」
「そうだよ」
瞬間、ボクの耳に温かい何かがふわりと触れて、そのまま間近にリップ音がひとつ。何か、って選択肢は一つしかないんだけども。でも堅物な彼からそうされるなんて夢にも思わなくてボクの身体が強張る。
「あれ?間違った?」
色事に不慣れで初心な彼はおどおどと視線を彷徨わせてるのがまた可愛い。
「間違ってないけど、ちょっと処理が追いつかない」
すると、ほっとしたような息が聞こえた。
この恋人は女の子から見ても随分と高スペックな割に恋愛経験は極端に少ないらしい。だから耳へのキスは誘惑のキス、なんてこと知ってるはずないんだ。無意識にやってるのが性質悪いなぁ、もう。
「僕の中でエメットがどれだけ大事に位置にいるか、君は分かってると思ってたんだけどな」
「えっ」
「生まれてこの方ずーっと『兄さんとポケモンが居れば生きていける』のが僕という人間だったのに、『兄さんとポケモンとエメットが居なきゃ生きていけない』に変えたのが君なんだから。ひとひとりの生き方変えた責任、とってよね?」
何このデレの出血大サービス、と驚いていた矢先に、そっと、
「僕だって寂しかったんだから」
耳に直接流し込むような声で囁かれてしまったら、そこから順にどろどろに溶かされた気分になって、たまらなく愛しくなって、クダリを渾身の力で抱きしめた。またクダリがぐえっと鳴いたけど、力を弱めるつもりは毛頭無かった。
「もう!ほんと!なんなの!」
「えっ?!」
「どこでそんなテク覚えてきたの!このタラシ!」
「……エメットには言われたくないなぁ」
「大好き!愛してる!結婚してください!」
「その言葉は、僕の脚に当たってるそれをどうにかしてから改めて聞くよ」
「うん!」
「ベッドはあっちね。連れてってくれる?」
「Yes,Sir!」
ボクの衝動的なプロポーズは物凄くあっさり流された気がするけど、本気だからね!だから今日はいーっぱい愛して、明日は買い物に行こう。とりあえずリングは給料三か月分でいいかな?






四月馬鹿のが暗かったのであほなほもでリベンジ。
常識人のように見えてトんでる子が好きなので、うちのエメクダのクダリちゃんはアニマス仕様です。